2018 Fiscal Year Annual Research Report
オーファンG蛋白質共役受容体を標的とした生体リズム中枢調節薬の創成
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17H01524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土居 雅夫 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20432578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体内時計 / G蛋白質共役受容体 / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従って、体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役型受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発に向けた調査スクリーニングを行った。その結果、体内時計の周期長を調節するオーファンG蛋白質共役受容体Gpr176(Doi et al., Nature Commun 7:10583, 2016; Goto & Doi et al., Endocr J 64(6):571-579, 2017)を標的分子とした化合物探索研究においてGpr176の恒常的基礎活性を再現性良く制御する化合物を同定することに成功した。またさらに、昼寝の時刻の体温変動を制御するG蛋白質共役型受容体CALCR*(Goda & Doi et al., Genes Dev 32(2):140-155, 2018)についての詳細な発現マッピング解析を実施し、CALCRが体内時計の最高位中枢器官として機能する視床下部前野の視交叉上核に強く発現するとともに、それ以外の脳内領域にも発現することを明らかにした。これらの成果に加え、本年度は視交叉上核ニューロンに発現する新たなG蛋白質共役型受容体にも着目し、本受容体を特異的に欠損する遺伝子改変マウスを作出したうえで、当該マウスの恒常暗条件下の自発活動リズムおよびその光刺激に対する位相応答性についての表現型を確定することができた。このように、当初の計画どおりの探索研究を実施することができており、中枢時計を標的とした生体リズム調整薬の開発において今後の研究展開の基礎となる重要な所見を得ることができた。*, Calcitonin receptor(カルシトニン受容体).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役型受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発に向けた調査スクリーニングを行った結果、研究が順調に進み、予想を上まわる良好な研究成果をあげることができた。すなわち、体内時計の最高位中枢器官である脳内の視交叉上核を標的とした探索研究において、体温の日内変動パターンを規定する新たなG蛋白質共役受容体CALCRを同定することに成功した(Goda & Doi et al., Genes Dev 32(2):140-155, 2018)。これに加え、さらに重要な研究成果として、体内時計の周期長を制御するオーファンG蛋白質共役受容体Gpr176(Doi et al., Nature Commun 7:10583, 2016)を対象とした化合物スクリーニング研究においてGpr176の恒常的基礎活性を再現性良く制御する化合物を同定することに成功した。G蛋白質共役型受容体は薬理学上最も重要かつ効率の良い創薬標的である。オーファンG蛋白質共役型受容体の基礎活性を制御することのできる化合物の同定は、生体リズム調整薬の開発に向けて今後の研究展開の土台となる重要な成果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、当初の研究計画に従って体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役型受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発に向けた調査スクリーニングを行う。特に、前年度までの研究調査によって良好な結果が得られつつある下記の課題に重点をおいて研究を進める。具体的には、体内時計の最高位中枢器官である視交叉上核を標的とした探索研究において、体温の日内変動パターンを規定する新たなG蛋白質共役受容体CALCRを同定することに成功した(Goda & Doi et al, Genes Dev 32(2):140-155, 2018)。CALCRは視交叉上核以外の脳領域においても発現することが前年度までに行った我々の研究の結果から分かってきたので、今後はこの詳細な所見を土台に、体温の概日性制御の神経回路を明らかにする。また、我々は前年度までに大規模な化合物スクリーニングを行い、Gpr176の活性を再現性良く制御する化合物を同定することに成功した。今後、本化合物の分子作用メカニズムを明らかにする計画である。当初の予定通り、Gpr176下流のGzシグナルおよびRGS16を介したcAMPシグナルの時間的変動に着目し、中枢時計のG蛋白質共役型受容体シグナルの時間変動機構に迫る研究を強化してゆく計画である。この他、我々は視交叉上核に発現する新たなオーファンG蛋白質共役受容体に着目し、本受容体欠損が生体リズム機能に及ぼす影響を同定することができたため、今後、その背後の分子機構に迫る計画である。
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