2019 Fiscal Year Annual Research Report
オーファンG蛋白質共役受容体を標的とした生体リズム中枢調節薬の創成
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17H01524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土居 雅夫 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20432578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体内時計 / G蛋白質共役受容体 / N型糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画に従い生体リズム調整薬の開発に向けた基礎研究を進めた結果、当年度、私共は、体内時計遺伝子の発現制御を担うゲノム上のノンコーディング領域のDNA配列が生物個体の安定的な自発活動のサーカディアンリズム形成に不可欠であるという新たな研究成果を報告することができた(Doi et al., Nature Commun 10, 2563, 2019)。これに加え、さらに、私共は、体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発において、体内時計の周期長を調節するオーファンG蛋白質共役受容体Gpr176に着目した研究を進めた結果(Doi et al., Nature Commun 7:10583, 2016)、当該受容体蛋白質が体内時計の最高位中枢器官である視交叉上核においてN結合型糖鎖修飾を受けること、さらにはこの修飾によってGpr176の細胞内における基礎活性が制御されることをマウス及びヒトのGPR176を用いて証明することができた(Wang & Nakagawa et al., Scientific Reports, 10, 4429, 2020)。これらの研究成果は、リガンド未定のオーファンG蛋白質共役受容体の恒常的基礎活性が翻訳後修飾によって巧妙に制御されることを示す重要な知見をもたらすとともに、N型糖鎖修飾と体内時計の機能的な分子接点の存在を明らかにするものである。このように、当初の計画どおりの研究を推進することができており、体内時計の中枢を標的とした生体リズム調整薬の開発において今後の研究展開の基礎となる重要な所見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役型受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発に向けた調査スクリーニングを行った結果、研究が順調に進み、現在までに予想を上まわる良好な研究成果をあげることができた。すなわち、体内時計の最高位中枢器官である脳内の視交叉上核を標的とした探索研究において、体温の日内変動パターンを規定する新たなG蛋白質共役受容体CALCRを同定することに成功した(Goda & Doi et al., Genes Dev 32, 140-155, 2018)。これに加え、体内時計の振動形成の中核機能を担うと考えられるPeriod2遺伝子の5’上流プロモーター領域に存在するシスエレメントE’-boxに点変異を導入したマウスをPiggyBacトランスポゾン法を用いて作製し、当該エレメントがマウス成体において正常な行動と基礎体温の概日リズムの維持に不可欠であることを明らかにすることができた(Doi et al., Nature Commun, 2019)。さらには10万人規模のゲノムワイド相関解析の中でN型糖鎖修飾酵素ALG10Bの一塩基多型がヒトの朝型/夜型クロノタイプと有意な相関があることが報告され, N型糖鎖修飾の役割が注目される中,私共は体内時計の中枢において行動リズムの周期長を調節するオーファン受容体Gpr176がN型糖鎖修飾を受けることを示し、この翻訳後修飾がこの受容体蛋白質の恒常的基礎活性の発現に必要であることを見出した(Wang & Nakagawa et al., Sci Rep, 2020)。G蛋白質共役型受容体は薬理学上最も重要かつ効率の良い創薬標的である。生体リズム調節薬の開発標的となりうるオーファン受容体Gpr176の基礎活性変化に関わる翻訳後修飾の同定は今後の研究展開の重要な土台となる研究成果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、当初の研究計画に従って体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役型受容体シグナル研究に基づく中枢リズム調整薬の開発に取り組む。特に、現在までの調査スクリーニングによって良好な結果が得られつつある下記の課題に重点を置き研究を進める。一昨年、私共はカルシトニン受容体CALCRが体内時計の最高位中枢器官である視交叉上核に発現し、体温の日内変動パターンを規定することを示した(Goda & Doi et al, Genes Dev 2018)。CALCRは視交叉上核以外の脳領域においても発現することがその後の調査から分かってきたので、当該受容体が具体的にどのような神経回路を介して体温さらには代謝レベルの日内変動パターンを規定するかを今後さらに検証する。また私共は昨年度、ヒトの朝型・夜型に関連するN型糖鎖修飾酵素の標的として、視交叉上核に発現するオーファン受容体Gpr176のN型糖鎖修飾の発見とその役割の解明を行うことができた(Wang & Nakagawa et al, Sci Rep 2020)。そこでこの成果をうまく活用し、私共が見出したこのGpr176の翻訳後修飾レベルの変化に着目した活性調節機構の追求ならびに新たな作用点を有する活性制御物質の同定を目指す。これらに加えて、昨年度に引き続き、Gpr176下流のG蛋白質シグナルおよびRGS16を介したcAMPシグナルの時間的変動を可視化するためのアッセイ系の構築に取り組む。またこの課題に取り組むための視交叉上核内の神経回路の可視化にも挑む。これらのアッセイ系を活用して、中枢時計の光位相応答の仕組みやG蛋白質シグナルを介した活動・体温・代謝の概日性制御の分子機構に迫る計画である。
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Research Products
(17 results)