2020 Fiscal Year Annual Research Report
オーファンG蛋白質共役受容体を標的とした生体リズム中枢調節薬の創成
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17H01524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土居 雅夫 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20432578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体内時計 / G蛋白質共役受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画に従い生体リズム調整薬の開発に向けた基礎研究を進めた結果、当年度、私共は、体内時計の最高位中枢器官である視交叉上核において当該ニューロン群の神経活動リズムを支配する電位依存性カルシウムチャネル制御ユニットα2δ3を同定することができた(Matsuo et al., Neuroscience 461:1-10, 2021)。これに加え、さらに、私共は、体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発において、体内時計の周期長を調節するオーファンG蛋白質共役受容体Gpr176に着目した研究を進め(Doi et al., Nature Commun 7:10583, 2016)、当該受容体下流の三量体G蛋白質Gzを中心としたG蛋白質シグナルの時間依存的活性ゲート機構の新たな評価系を構築することに成功した(Nakagawa et al., Int J Mol Sci 21:5055, 2020)。また当年度は、上述のこれまで研究成果をまとめた日本語総説を発表することもできた(嶋谷寛之, 土居雅夫: 体内時計の中枢を調節するG蛋白質共役型受容体, 膜タンパク質工学ハンドブック, エヌ・ティー・エス出版 pp344-348, 2020)。このように、当初の計画どおりの研究を推進することができており、体内時計の中枢を標的とした生体リズム調整薬の開発において今後の研究展開に必要となる重要な基礎データを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役型受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発に向けた調査スクリーニングを行った結果、研究が順調に進み、現在までに予想を上まわる良好な研究成果をあげることができた。すなわち、体内時計の最高位中枢器官である脳内の視交叉上核を標的とした探索研究において、体温の日内変動パターンを規定する新たなG蛋白質共役受容体CALCRを同定することに成功した(Goda et al., Genes Dev, 2018)。これに加え、体内時計の振動形成の中核機能を担うと考えられるPeriod2遺伝子の5’上流プロモーター領域に存在するシスエレメントE’-boxに点変異を導入したマウスをPiggyBacトランスポゾン法を用いて作製し、当該エレメントがマウス成体において正常な行動と基礎体温の概日リズムの維持に不可欠であることを示した(Doi et al., Nature Commun, 2019)。さらには10万人規模のゲノムワイド相関解析の中でN型糖鎖修飾酵素ALG10Bの一塩基多型がヒトの朝型/夜型クロノタイプと有意な相関があることが報告され注目される中,体内時計の中枢において行動リズムの周期長を調節するオーファン受容体Gpr176がN型糖鎖修飾を受けることを示し、これが受容体蛋白質の恒常的基礎活性の発現に必要であることを明らかにした(Wang et al., Sci Rep, 2020)。G蛋白質共役型受容体と電位依存性カルシウムチャネルのクロストークの解明に向け制御ユニットα2δ3の同定にも成功した(Matsuo et al., Neuroscience, 2021)。このように, 本研究課題の研究目標の達成に向け重要な研究成果を得ることができているといえる(Nakagawa et al., Int J Mol Sci, 2020)。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、当初の研究計画に従って体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役型受容体シグナル研究に基づく中枢リズム調整薬の開発に取り組む。特に、現在までの調査スクリーニングによって良好な結果が得られつつある下記の課題に重点を置き研究を進める。まず本研究成果の第一として、私共はカルシトニン受容体CALCRが体内時計の最高位中枢器官である視交叉上核に発現し、体温の日内変動パターンを規定することを示した(Goda & Doi et al, Genes Dev 2018)。CALCRは視交叉上核以外の脳領域においても発現することがその後の調査から分かってきたので、当該受容体が具体的にどのような神経回路や神経信号の調節を介して基礎体温や代謝の日内変動パターンを規定しているのかを詳細に検証する。また私共はヒトの朝型・夜型に関連するN型糖鎖修飾酵素の標的として、視交叉上核に発現するオーファン受容体Gpr176のN型糖鎖修飾の発見とその役割の解明を行うことができた(Wang & Nakagawa et al, Sci Rep 2020)。そこでこの成果をうまく活用し、私共が見出したこのGpr176の翻訳後修飾レベルの変化に着目した活性調節機構の追求ならびに新たな作用点を有する活性制御物質の同定を目指す。これらに加え、昨年度からの継続課題として、視交叉上核のG蛋白質シグナルの時間依存的活性ゲート機構の解明に向けて、Gpr176下流のG蛋白質シグナル制御因子RGS16を介したcAMPシグナルの時間変動の可視化に取り組む。これらの解析を通じて中枢時計の時間依存的な光位相応答の仕組みやG蛋白質シグナルを介した活動・体温・代謝の概日性制御の分子機構を明らかにする。
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Research Products
(19 results)