2017 Fiscal Year Annual Research Report
ターゲト-ムによるマラリア原虫ライフサイクルの統一的理解
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17H01542
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
油田 正夫 三重大学, 医学系研究科, 教授 (90293779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マラリア原虫 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度はまだ発現ステージを特定できていない転写因子すべてについてGFP融合蛋白発現原虫を用いて発現ステージを決定した。またノックアウト原虫を用いてライフサイクルが停止した(または影響を受けた)ステージとそのステージでのGFPの発現の両者を確認した。 また並行してすでに発現ステージが決定された転写因子のChIP-seq解析を実施した。初年度は解析が最も進んでいる有性生殖ステージ(生殖母体形成からオオキネートまで)のターゲトームの解析を実施した。ChIP-seq解析はすべてGFP融合遺伝子を発現する原虫を用い、抗GFP抗体で実施した。得られたDNAからNGS用ライブラリーを作製した。すべて独立して二度実施し再現性を確認した。INPUT(IP前のコントロールサンプル)を合わせて1転写因子あたり4ライブラリーを作製した。我々はすでに生殖母体の転写因子であるAP2-G2のターゲトームについて報告している。また雌雄生殖母体の分化に関わる性特異的転写因AP2-FGではすでにターゲトーム解析を終えており、オオキネート形成、減数分裂初期など後続するステージで機能する遺伝子を含む600以上の遺伝子を直接制御していることがわかっている。また有性生殖期に機能する転写因子がこれら以外4種類存在していることを確認している。初年度はAP2-Gに加えガメトサイト期およびザイゴート期の3つの転写因子、合計4種類の転写因子のターゲトーム解析を実施した。これらの解析の結果各遺伝子に関し数百のターゲットを同定した。また各転写因子の結合配列を同定することができた。 以上の様に今年度予定したすべての解析が終了したため他のステージ(スポロゾイトなど)の転写因子の解析を前倒しで実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
29年度はまだ発現ステージを特定できていない転写因子すべてについてGFP融合蛋白発現原虫を用いて発現ステージを決定した。またノックアウト原虫を用いてライフサイクルが停止した(または影響を受けた)ステージとそのステージでのGFPの発現の両者を確認した。また並行して解析が最も進んでいる有性生殖ステージ(生殖母体形成からオオキネートまで)のターゲトームの解析を実施した。これらの解析は予定通り終えることができた。また以上の今年度予定した解析に加え、次年度以降に予定していた他のステージ(スポロゾイトなど)の転写因子の解析を前倒しで実施することができた。以上の点から本課題は予定以上に進捗したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ベクター内ステージ(オオシストからスポロゾイトまで)のターゲトーム オオシスト初期からスポロゾイト生成までは約2週間を要する過程である。この過程ではオオシスト形成の最初期に必要な転写因子(AP2-OC)とスポロゾイトのマスター転写因子AP2-Spをすでに同定している。本ステージに関してはこれらに加え初年度に他の転写因子を複数同定した。これらのすべてにおいて今後ChIP-seqを実施しターゲットを同定する。ChIP-seqは以下の方法で実施する。オオシストは精製が不可能なことからChIP-seqは蚊の感染中腸を直接材料にして実施する。まず感染蚊を解剖し中腸を取り出し直ちにパラホルムアルデヒドで固定する。GFPはパラホルムアルデヒド固定に対し安定であり抗原性を失わない。従って中腸は解剖がすべて終了するまで固定液中に静置する。解剖終了後洗浄しリシスバッファーで溶解する。ChIP後のサンプルには大量のホスト由来DNAが混入しているため、マッピングの過程でこれらを完全に除く。 肝臓ステージのターゲトーム 肝臓ステージのマスター転写因子として申請者らはAP2-Lを報告している。AP2-LはAP2-Spの標的遺伝子であり、すでにスポロゾイト期にmRNAが存在するが、それらは翻訳抑制を受けている。肝臓ステージはAP2-L mRNAの翻訳に始まり赤血球侵入ステージメロゾイトの産生で完了する(全60-70時間)。最終ステップであるメロゾイト形成期には血液ステージと同じメロゾイトマスター転写因子AP2-Mが発現している。肝臓ステージではAP2-LとAP2-Mの間に複数の転写因子が機能している可能性がある。本ステージに関しても初年度に転写因子を新たに同定している。これらにおいてもChIP-seqを実施しターゲットを同定する。
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Research Products
(4 results)