2018 Fiscal Year Annual Research Report
Bioaerosols transported for long range distance over East Asia
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17H01616
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
牧 輝弥 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70345601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 雅人 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30211957)
黒崎 泰典 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (40420202)
市瀬 孝道 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (50124334)
甲斐 憲次 茨城大学, 教育学部, 特任教授 (50214242)
大西 一成 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任准教授 (50596278)
小林 史尚 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60293370)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオエアロゾル / 黄砂 / 感染症 / PM2.5 / 大気浮遊微生物 / アレルギー / 健康影響 / エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:黄砂や煙霧とともに微生物群(バイオエアロゾル)がアジア大陸から日本へ風送され,その環境影響に学術的関心が集まっている。しかし,黄砂の主要発生源であるゴビ沙漠での調査は手薄であるとともに,沙漠由来の風送微生物と汚染大気との混合状態についても不明な点が多い。本申請では,日中韓蒙で,ゴビ砂漠を含めた東アジアを網羅する集中観測を行い,大気微生物の発生源と越境輸送ルートを理解する伴に,生理学実験・疫学的調査によって,その生態・健康影響の解明に取り組んでいる。 実施内容:2018年に続き,黄砂発生地から飛来ルートを網羅する日中韓蒙の観測サイト(11箇所:特にモンゴル,能登半島)において,気球,ヘリコプターおよび山岳積雪を使った集中大気観測を実施し,黄砂煙霧の発生に同調させながら,環境データ収集と大気粒子の採取を行った。培養を経ない遺伝子分析法によって,大気粒子に含まれる微生物叢の群集構造を系統分類学的に解析を進め,環境データと照合して,大陸内部(砂漠)と大陸沿岸部(都市部),列島部(日本)に特異な大気浮遊微生物群を見出し,これらが混合拡散する過程を検証中である。さらに,エアロゾルによって長距離拡散する真菌種の株を継続して入手できており,動物・培養実験によって,気管支炎やアレルギー症状を誘発する真菌が相次いで確認されている。 成果:本研究成果は,異分野研究(医・農・薬・社)分野にまたがり,種々の学会,招待講演や市民向けシンポジウムで発表され,国内外の専門学術誌に学術論文として報告された。特に,アメリカ地球物理学連合の学会誌(JGR)に掲載された学術論文は,連合会でのトピックスとして取りあげられ,海外誌フォーブスなどで記事として報道された。また,エアロゾルを介した微生物拡散にかかわる研究として,一般的関心も高く,テレビ報道でも取り上げられ,公衆衛生情報の周知にも貢献している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
黄砂発生地から飛来ルートを網羅する日中韓蒙の観測サイトを使って,気球,ヘリコプターおよび山岳積雪を併用した大気観測を施行し,黄砂と煙霧(越境汚染)の発生に同調させながら,環境データ収集と大気粒子の採取を,予定通り実行できた。培養を経ない遺伝子分析法(超並列シーケンサー解析)によって,採取した大気粒子試料に含まれる微生物叢の群集構造を,遺伝子レベルで解析し,環境データを交えた詳細な解析によって,大気微生物の発生源と越境輸送ルートの特定を進めつつある。その成果の根幹となるデータは,地球化学系の学術誌(J. Geophysical Res.)に論文発表され,アメリカ地球物理学連合(AGU)でトピックスとして取りあげられ,海外報道機関(フォーブスなど)で記事として報道された。更に,長距離輸送される可能性のある真菌株を分離培養することに成功し,分離株のアレルギー誘発と増悪を,動物・培養実験によって実証でき,その実証例も増えている。しかしながら,モンゴル現地での気球観測を順調に実施できず,黄砂発生源の上空のデータが,充分ではない。この不足分を補うため,2020年の春季から夏季に黄砂を捕集する追加の観測を実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に引き続き,日中韓蒙での大気観測を続行し,黄砂飛来ルート上の大気試料を同時に捕える(6月まで実施)。大気粒子試料を増やすとともに,試料に含まれる大気微生物群のゲノム情報を増やし,中国他陸から日本へと風送される間の微生物群集構造(種組成)の変化を,一般化できるレベルまでにデータを増やし,解析を進める。また,試料に含まれる全ゲノムの解読を進め,遺伝子レベルで,真菌と細菌の潜在的な機能(病原性や氷核活性,ストレス耐性など)に加えウィルス感染性も検証する。黄砂と煙霧とともに越境輸送されると見なせる微生物種(長距離輸送種)については,本種を環境試料中から蛍光顕微鏡下で識別できる検出系(FISH法),および一細胞をも検出できる遺伝子定量法(定量PCR法)を使って,日中韓蒙で採取した実大気試料を使用して,越境輸送微生物の自然界での動態と分布を明らかにする。大気試料から分離される微生物株を増やし,生理学実験や動物実験を使って,微生物株の環境・生体への影響を評価する。さらに,疫学的調査のデータと微生物の動態を比較することで,越境輸送微生物がヒト健康に及ぼす影響(気管支喘息,アレルギー,下痢・嘔吐等)を明らかにする。特に,疫学的調査との比較を重点化し,感染症の拡散について重点的に調べて行く必要がある。
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[Book] 大気環境の事典2019
Author(s)
大気環境学会、牧輝弥「コラム バイオエアロゾル」
Total Pages
464
Publisher
朝倉書店
ISBN
978-4-254-18054-1
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