2017 Fiscal Year Annual Research Report
Production, Processing, and Business Strategies for Sustainable Development of Seaweed Industry in Indonesia
Project/Area Number |
17H01625
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中嶋 光敏 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30150486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 創作 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00292516)
野口 良造 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60261773)
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30401714)
Neves Marcos 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10597785)
宮村 新一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00192766)
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海藻生産 / インドネシア / 海藻加工 / 海藻多糖類 / 海藻色素 / 海藻ビジネス / 持続的発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
筑波大学における藻類の生産・加工研究を基礎に、インドネシア南スラウェシ州・ハサヌディン大学水産海洋科学部の協力を得て、世界第二位の海藻大量生産国のインドネシアの南スラウェシ州における海藻を対象として研究を進めている。現地調査を行い、スラウェシ地域の海藻産業における市場、輸出等の解析、海藻養殖と生態系保全の調査、現場における海藻加工の実態解析現況の把握、問題点の抽出を行っている。加工利用に関しては、海藻の加工成分であるカラギーナン、寒天、アルギン酸の基礎特性評価を行った。 特に、インドネシアで大量生産されている紅藻類のCottoniiから抽出されるカラギーナンの高度利用に関わる安定なO/Wエマルションを目指して、乳化・安定化能の高いカラギーナンの探索を進め、界面活性が存在しないと考えられていたカラギーナンに界面活性が存在することを見出し、κおよびι-カラギーナンが高い乳化容量を有すること、λ-カラギーナンは酸性条件で乳化可能であることを示した。しかし、乳化系が十分な安定性でなかったため、さらに、海藻多糖類であるアルギン酸(ALG)とカラギーナン(CRG)に対してドデセニルコハク酸(DSA)を用いて修飾し、水中油滴型エマルションの調製との安定性を評価した。液滴サイズ、界面張力、ζ電位測定、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)解析を行い、いずれの修飾多糖類も、安定なエマルションの調製が可能であり、長期保存も可能であった。修飾反応はFTIR分析によって確認された。比較実験として澱粉についても同様の修飾を行い、同等であることを確認している。DSAによる改質海藻多糖類が食品、医薬品および他の工業分野における応用のための将来の乳化剤として使用できることを示した。 また、9月にインドネシアから研究者の招聘を行い、日本の研究者の講演も含めて、海藻シンポジウムを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシアで大量に生産されている紅藻類のCottoniiから抽出されるカラギーナンの高度利用に関わる安定なO/Wエマルションを目指して、乳化・安定化能の高いカラギーナンの探索を進め、界面活性が存在しないと考えられていたカラギーナンに界面活性が存在することを見出し、κおよびι-カラギーナンが高い乳化容量を有すること、λ-カラギーナンは酸性条件で乳化可能であることをまず明らかにした。しかし、乳化系が十分な安定性でなかったため、海藻多糖類であるアルギン酸とカラギーナンに対してドデセニルコハク酸を用いて修飾することにより、安定な水中油滴型エマルションの調製できることを示した。 消費者の自然で健康的な製品への関心が高まっており、健康機能効果をもたらす新規製品の開発が望まれている。クロロフィルやフィコビリタンパク質などの海藻色素は、機能性成分として食品産業で大きな可能性が期待される。たとえば、インドネシアは紅藻の最大の生産国であり、2015年の総生産量は1,100万トンに及んでいる。現在、インドネシア産紅藻由来の海藻色素の可能性を調査することを目的として、Euchema CottoniiおよびGracilaria sp.のサンプルを現地より入手した。採取場所は南スラウェシのジェネポントである。インドネシア側の研究者と共同で採取した。採取した海藻に対して、水、エタノールやヘキサンなどの溶媒を用いて抽出実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、持続的発展のシナリオ策定をめざし、海藻大量消費国である我が国の高度な先端加工技術を利活用した新規な生産・製造技術の開発シナリオを構築し、炭水化物、タンパク質や健康機能成分を高度利活用した新産業創出につなげ、日本・インドネシアの連携・協働による海藻産業ナンバーワンの獲得と当該地域の高度な持続的発展につながる研究を推進していく。これまで、改質海藻多糖類が食品、医薬品および他の工業分野における応用のための将来の乳化剤として使用できることを示した。さらに、未改質のカラギーナンでは乳化・安定化能がまだ十分でないことを考慮して、カラギーナンをマイクロゲルに加工することで乳化・安定化能の向上をめざし、天然物の高度利用化を図る。具体的には冷却と撹拌操作のみでカラギーナンのマイクロゲルを作製し、作製条件を検討し、カラギーナンとカラギーナンマイクロゲルの乳化・安定化能の比較、マイクロゲル加工の有用性を検討していく。 健康機能効果を有する海藻色素は、機能性成分として食品産業で大きな可能性が期待される。インドネシアは紅藻の最大の生産国であり、1,000万トンを超える。CottoniiおよびGracilaria sp.サンプルをさらに入手して、抽出特性の解明を図る。あわせて、多糖類と色素の効率的抽出の最適化を図る。色素についてはその構造解析をあわせて進める。 さらに、紅藻類Eucheuma Cottoniiは機能性材料としてのナノセルロース資源として注目される。Eucheuma Cottoniiからナノセルロースを分画し、精製することで新たな価値が創出できる。現在、その予備実験を進めており、Cottoniiから多糖を抽出した後の残渣は、部分的に飼料として利用されている程度で現状での価値は低い。こうした残渣から機能性材料であるナノセルロース生産プロセスへの期待は高い。
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Research Products
(7 results)