2018 Fiscal Year Annual Research Report
Production, Processing, and Business Strategies for Sustainable Development of Seaweed Industry in Indonesia
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17H01625
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中嶋 光敏 筑波大学, 生命環境系(特命教授), 特命教授 (30150486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 創作 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00292516)
野口 良造 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60261773)
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30401714)
Neves Marcos 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10597785)
宮村 新一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00192766)
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海藻生産 / インドネシア / 海藻加工 / 海藻多糖類 / 海藻色素 / 海藻ビジネス / 持続的発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアの海藻生産量は年間482,400トンと推定される。商業的に利用されている赤褐色の海藻類は、Eucheuma cottonii、Gracilariaなどが主であり、カラギーナンや寒天の原料として利用されている。海藻類は、多糖類、色素、タンパク質、ミネラル、フェノール類、生理活性ペプチドなどの様々な生理活性物質から構成され、人口増加、急速な産業発展と天然物志向の高まりで、需要が増大傾向にある。インドネシアの海藻輸出は主に食用と非食用の生乾燥品であり、輸出価値は低い。海藻製品の付加価値を高めることを目指して、海藻多糖類を中心に検討を進め、紅藻類のCottoniiから抽出されるカラギーナンの高度利用に関わる安定なO/Wエマルションの特性を明らかにした。今年度は海藻の色素成分に着目した。フィコビリタンパク質などの海藻色素は、機能性成分として期待されているもののほとんど検討されていない。紅藻Euchema CottoniiおよびGracilaria sp.を南スラウェシ州ジェネポントより採取し、フィコビリプロテイン、カロテノイドなどの色素を、種々の有機溶媒を用いて温度を変えて抽出し、特性を調べた。海藻色素の分析は紫外-可視分光光度法で行い、化学特性はフーリエ変換赤外分光法で構造同定した。その結果、フィコビリプロテインはクロロフィルに比べて抽出温度が高い(50℃)ほど抽出されやすいことがわかった。フィコビリプロテインは室温では安定性が高く、50℃では濃度がわずかに低下した。また、温度を上げるとタンパク質の変性が起こり、αヘリックス量が減少して色素の安定性が低下した。フィコエリスリンの安定性は、低温および室温で長期保存しても比較的維持されていた。海藻由来の天然色素は、食品、化粧品、医薬品の調製において、合成色素に代替できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシア海藻産業において、海藻からカラギーナンや寒天といった多糖類を抽出した後の残渣は、飼料として低価格で輸出されるなど、必ずしも有効に利用されているとはいえない。木質バイオマス資源からセルロース繊維を抽出し、物理化学的処理を施すことで得られるセルロースナノファイバーが、自然素材由来の高機能性材料として着目されている。多糖抽出後の海藻残渣は、多くのセルロース繊維を含んでおり、海藻残渣から付加価値の高いセルロースナノファイバーを生産できれば海藻産業にとって有益と考えられる。 繰越期間に、スラウェシ島の南スラウェシ州Kospermindoにて採取した紅藻類 Cottonii sp.を原料として、多糖類抽出後の海藻残渣からセルロースナノファイバーの作製し、その特性解析を進めた。実験では、Cottonii sp.を洗浄し、塩や不純物を除去した後、細断・乾燥、次に熱水アルカリ処理を行い、κ-カラギーナンを抽出した。抽出後の残渣を過酸化水素水で、脱色処理、硫酸水溶液で酸加水分解、氷冷後に、純水で洗浄しながら遠心分離を行い、得られた沈殿物をセルロースナノファイバーとして回収した。作製したセルロースナノファイバーを透過型電子顕微鏡で観察した。長さ数百nm、太さ数nm程度の繊維状の構造体が観察され、紅藻類Cottonii sp.からセルロースナノファイバーを作製できることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、海藻産業の市場調査、試料収集、加工の実態解析を進める。スラウェシ地域における主な海藻である、CottoniおよびGracillaria に対して、成分分析、多糖類および色素の抽出、分離分画について検討し、抽出プロセス特性解析、プロセスの最適化のための基礎諸元を明らかにする。特に、最も多量に生産されるCottoniに含まれるタンパク系色素と既存の生産物であるカラギーナンの生産が可能な新規なプロセス開発を進める。海藻成分のセルロース研究についても、引き続き、検討を進め、新規素材としてのセルロースナノファイバーの調製と陸上セルロースとの違いを調べる。インドネシアの共同研究者を招聘して、セミナー開催や打合せを行い、また、現地出張を行い、海藻サンプル収集、現地市場調査、経済解析を進める。
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Research Products
(9 results)