2019 Fiscal Year Annual Research Report
Modern dynamic analysis in Afro Eurasia's Dry inland Civiliaations -Conflict with "modern world system"-
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17H01639
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
嶋田 義仁 中部大学, 中部高等学術研究所, 客員教授 (20170954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 隆 石巻専修大学, 理工学部, 教授 (00215633)
中山 紀子 中部大学, 国際関係学部, 教授 (00288698)
ボルジギン ブレンサイン 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (00433235)
中川原 育子 名古屋大学, 人文学研究科, 助教 (10262825)
石山 俊 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, プロジェクト研究員 (10508865)
和崎 聖日 中部大学, 人文学部, 講師 (10648794)
兒玉 香菜子 (児玉香菜子) 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20465933)
平田 昌弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (30396337)
縄田 浩志 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (30397848)
大野 旭 (楊海英) 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40278651)
中村 亮 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40508868)
Sacko Oussouby 京都精華大学, 人文学部, 教授 (70340510)
古澤 礼太 中部大学, 中部高等学術研究所, 准教授 (70454379)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 西洋海洋文明 / 近代システム / 牧畜文化 / アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明 / 多様な宗教・芸術文明 / オアシス文化 / イスラーム文明 / アフリカ国民国家再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフロ・ユ―ラシア内陸乾燥地文明が人類文明史の中心にあった。しかし近代、西洋植民地主義の海洋進出がはじまった。その結果、大陸内世界システム破壊され、近代世界システム(ウォーラーステイン)が世界の中心システム化してゆく過程が、近代人類史となった。この動乱を、3地域にわけて分析した。① 近代世界システム支配がすすんだアフリカ文明、②支配が部分的短期的であった中東イスラーム文明、③支配を拒否し社会主義国家化をすすめた旧ソ連と中国。 アフリカでは今、イスラーム過激派の勢力増大が著しい。その二大中心が、①マリ・ブルキナファソ・ニジェール国境地域と、②ナイジェリア・カメルーン・ニジェール・チャド国境地域、にある。新国家としてのイスラーム国家建設を目指すイスラーム運動が猛威をふるうのは、既存の国民国家体制が脆弱な国境地域なのである。他方、2002年には、「アフリカ合衆国」建国を目標にかかげたアフリカ連合(AU)が結成された。「アフリカ合衆国」は未完であるが、複数国家による複数の地域連合が連邦国家化しつつある。とりわけ「西アフリカ諸国経済共同体」(ECOWAS)の連邦化は著しい。ガーナのアクラ漁民、インド洋岸キルワ島漁民など、地域住民の近代的経済活動をつうじての主体的運動も分析された。 中東では、紅海沿岸漁民とサウジアラビア・オアシス文化の近代動態が分析された。 旧ソ連領中央アジアのタジキスタンでは、抑圧下にあったイスラーム文明の再興が、シャマニズム、ゾロアスター教、水源信仰などとの融合を伴いつつ進められていた。仏教文化、キリスト教も分布する中央アジアが、多様な宗教・芸術文化の交錯する世界であることが確認された。この地域の画一的な社会主義支配は失敗したが、西域に対する中国支配はいまなお厳しい。一帯一路政策は中央アジアに及ぶが、中国の社会主義支配がどのような運命をたどるのか、注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明が、西洋中心に形成された近代世界システムによって破壊され再編される過程を、3地域にわけて分析してきた。①この支配が進んだアフリカ文明、②支配が部分的短期的であった中東イスラーム文明、③支配が拒否された社会主義文明(旧ソ連・中国)。その結果、3地域それぞれに、特有なしかし矛盾にみちた近代動態があることが明らかになった。 アフリカ文明は、矛盾した二方法によって、既存の国民国家体制の再検討にはいった。①イスラーム国家建設をめざすイスラーム主義の武闘闘争拡大、②全アフリカ国家を統合する国際機関アフリカ連合(AU)の形成、である。①は激烈な武力闘争、②は民主的な合議による。 中東での植民地支配からの独立も矛盾しあう多様な形で繰り返された。アラブ主義、イスラーム主義、世俗主義的近代化(トルコ)、などである。現在では、石油・天然ガス資源の国有化とオイル・マネーによって、中東諸国家の政治経済力の増長が著しい。それにはイスラーム主義の拡大もともなう。 社会主義圏近代動態にも矛盾した二大要因があった。①西欧・米国・日本による植民地主義的帝国支配との闘争と、②近隣、とりわけ中央アジア乾燥地域への帝国主義的拡大、であった。ソ連邦はこれに失敗して崩壊し、中央アジアは複数の独立国家となった。だが中国の西域支配は少数民族(ウイグルやチベット)弾圧政策により強化された。そのうえに、中国は一帯一路政策によって中央アジアの経済支配を試みつつある。しかし中央アジアは、民族文化的にも宗教文化的にも多様な複合世界だ。旧ソ連の社会主義支配の失敗もある。中国の中央アジア進出は稀だった。それ故、中国の社会主義拡大が成功するのは容易でない。ただし一帯一路構想はシルクロード再興政策として魅力がある。これをどのように評価するかで、中央アジアばかりか、ユーラシア全体の歴史動態が大きく変化する。
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Strategy for Future Research Activity |
近代人類文明史は、アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明が、西洋が形成した近代世界システム(ウォーラーステイン)によって破壊・再編されるプロセスだった。これを、①この支配が最も進んだアフリカ文明、②支配が部分的短期的であった中東イスラーム文明、③支配が拒否された社会主義文明(旧ソ連・中国)にわけ、それぞれの近代動態分析をすすめた。その結果、各地域の近代動態をつきうごかす固有要因がなんであるかが、整理して指摘できる状態になった。 これにもとづき、『現代アフリカ動乱の文明学』『現代中東動乱の文明学』『現代中央アジア動乱の文明学』『現代東アジア動乱の文明学』が企画できるが、共通課題は『21世紀アフロ・ユーラシア内陸動乱の文明学』構築である。 あえて「動乱の文明学」とするのは、各地域の近代動態は、決して秩序づけられた動態ではなかったからである。今後も、各地域にはたらく共通要因は同じであっても、どう対応するかの選択は極端から極端へと動く可能性が大きい。例えば、本研究の再考課題ハンチントンの『文明の衝突』(1966)論によれば、近代文明は、イスラーム文明、中国文明などを最終的には消滅させる。中東諸国はこれに対して「世俗主義的近代化」と「イスラーム原理主義的闘争」という両極端の抵抗戦略をとっているが、「世俗主義近代化」国が突如イスラーム原理主義化する場合も、逆の場合もある。矛盾した選択は、アフリカ文明、中央アジアや中国文明にもある。 「動乱の文明学」たらざるを得ないのは、ハンチントンが主張した近代文明論が世界標準として現にあり、同時にアフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明国や地域から、その再検討要求が、政治的にも文明論的にも厳しく、突きつけられているからである。かかる近代文明構造変革は動乱とならざるを得ない。しかしこのの問題を、かなり整理して統一的に論じうる可能性がいま見えている。
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Research Products
(128 results)
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[Book] サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年―「みられる私」より「みる私」2019
Author(s)
縄田浩志(編)、石山俊、 坂田隆、渡邊三津子, アナス・ムハンマド・メレー, 河田尚子, 藤本悠子, 遠藤仁, 石山俊, 西本真一, 郡司みさお, 片倉邦雄, 坂田隆, 竹田多麻子, 古澤文, 西尾哲夫
Total Pages
181頁
Publisher
河出書房新社
ISBN
ISBN: 9784309921778
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[Book] 蒙古民俗文化研究2019
Author(s)
薩仁格日勒・朝格吐(編)、児玉香菜子
Total Pages
617
Publisher
民族出版社
ISBN
9787204056620
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