2018 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeological Research of the Plaza of the Columns Complex at Teotihuacan
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17H01650
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
杉山 三郎 愛知県立大学, 外国語学部, 名誉教授 (40315867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 信太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20143357)
佐藤 悦夫 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (40235320)
水野 文月 東邦大学, 医学部, 助教 (50735496)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テオティワカン / 古代都市 / メソアメリカ / モニュメント建築 / 認知考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、継続プロジェクトとしてテオティワカン「石柱の広場」複合体の発掘調査を実施した。計画都市の機能と、儀礼活動の内容、またどのような政治体制だったかを探求するため、前年度の成果を鑑み成果が期待できる「石柱の広場」の北地域と「太陽のピラミッド北の広場」東境界地区の発掘調査を進めた。夏2ヵ月のトレンチとトンネル発掘調査を行い、その後の遺物分析を進め、具体的な年代を示す資料と共に広大な建築複合体の機能を示す資料を得た。特にモニュメント閉鎖儀礼の奉納品セットが出土、また祝宴の痕跡、さらに生贄儀礼が行われた跡、犠牲となった生贄人骨などが大量に出土した。ラボラトリーでは出土品の洗浄、注記、整理とデータ入力を1年を通して行い、同時に前年度からの発掘データを分析している。テオティワカンのトップ集団について、その儀礼や政治組織、さらに前年度のマヤ壁画発見により示された他国家との交易にあり方について考察が可能となっている。 本プロジェクトの詳細な発掘報告書(572ページ)を、2019年4月にメキシコ政府の考古学審議会に提出した。本プロジェクト研究の主たる成果は、2018年4月アメリカ考古学総会にて「石柱の広場」プロジェクトのシンポジウムを主催し、途中成果について共同研究者らと10本の研究論文を発表した。また、英語、スペイン語、日本語による「石柱の広場」プロジェクトのウェブサイトを前年度から開設し、逐次新しい研究成果も同サイトで普及に努めている。 Symposium “Project Plaza of the Columns Complex: New Investigation of a Civic-Administrative Complex at the Heart of Teotihuacan, Mexico,” in 83rd Annual Meetings of the Society for American Archaeology, Washington, DC.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り2018年7月より現地メキシコ、テオティワカンにて継続発掘調査を開始した。「石柱の広場」の3大ピラミッドのうち、北ピラミッドの北区から掘り始めたトンネル調査では、早期のプラットホーム跡をそのピラミッド中心付近で発見し、その中心軸上からモニュメント閉鎖儀礼の奉納品セットが生贄動物体とともに出土した。さらに早期プラットフォーム内部へトンネルを掘り進めたが、ピラミッド中心部を南に3メートル以上過ぎてもさらに古い建造物の跡は発見されなかったためトンネル発掘を終了し、記録を完了後、保存のためトンネル内部を現在のピラミッド北壁まで完全に埋め戻した。ピラミッド北部から発見された祝宴の痕跡はさらに西に続くため、その取り上げ作業をトンネル入り口付近で継続した。また同地区で発見されたマヤ様式壁画の破片調査も昨年度発見地点から東に向けて継続したが、壁画破片の散在は確認されなかった。さらに生贄体を大量に放置した痕跡を北区のより東部、「死者の大通り」近くに発見し、前年度の発掘領域をさらに東に延長し調査を続けた。大量の生贄骨と共に、同時代の放棄された土器片の堆積層が出土し、その調査を終了した。 「石柱の広場」の北マウンド頂上部にも広域なトレンチ発掘を行い、ピラミッド上部にあったと考えられる神殿建築データの収集を目指した。大きな盗掘坑によりすでに攪乱されていたが、ピラミッドのオリジナル埋立て層から最後のピラミッド建設期の遺物を得ることができた。 「死者の大通り」を挟んで「石柱の広場」の東に位置する「太陽のピラミッド北の広場」複合体では、東西の中心軸上にトレンチ発掘を行い、その複合体の東の境界となる壁を見つけ、広場の時空間の広がりを確認した。「太陽のピラミッド」にかかわる集団の住居、また国家儀礼や業務に関わる機能を果たしていたと考えられる。遺物の洗浄、注記、整理と分析も同時に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
「石柱の広場」では、調査が完了しなかった祝宴の痕跡がさらに西に続くため、ピラミッド北部の残ったトンネル内部をさらに西に向かい調査を継続する必要がある。今までの調査で「石柱の広場」北側に位置する東西に長い「北の広場」は、中央大広場で行われたであろう様々な儀式の準備や、特に儀式に使われた食材・用具を祝宴の後に廃物処理した場であることが分かってきた。さらに生贄儀礼による犠牲者の解体処理、もしくは人骨の加工を行った場所であったことが判明した。次年度以降もこの広場において、さらに儀礼の内容を示す物的データの追跡が可能である。また「石柱の広場」の北の端が掴めず、さらに北の住居複合体と一体となっている可能性があり、今後の研究課題とである。テオティワカンの早期から特に最盛期の5メートルに及ぶ文化層は、本プロジェクトの目的に適う豊富で貴重なデータを提供すると考えられる。その領域が広大であるため、まずその中心部のまだ全く見調査のさらに北の地区にトレンチ発掘を行う計画である。 2018年8月に盗難事件があり、計画変更を行い、一部予算の次年度への繰り越しを行った。前述の奉納品のうち耳飾り3点が盗難に合い、今後の安全のため夏の発掘調査を予定より早めて終了した。遺跡公園管理局と現地警察の調査を完了し、遺物を保存するアリゾナ州立大学テオティワカン研究センターの施設管理者、また遺跡公園所長らと遺物の安全管理体制を確認し、より補強するシステムを構築した。 発掘調査と並行し、3次元測量LiDARによる古代都市を含む130平方キロメートルの現地踏査の一部を、カリフォルニア大学の研究メンバーと共に小規模であるが実施した。各土地所有者の許可交渉や煩雑な手続きが必要で時間がかかり、引き続き調査が必要である。土器分析は佐藤が、他の遺物はメキシコ、アメリカ人研究者と共に進めている。
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Research Products
(14 results)