2019 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeological Research of the Plaza of the Columns Complex at Teotihuacan
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17H01650
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
杉山 三郎 愛知県立大学, 外国語学部, 名誉教授 (40315867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 信太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20143357)
佐藤 悦夫 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (40235320)
水野 文月 東邦大学, 医学部, 助教 (50735496)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テオティワカン / 古代都市 / メソアメリカ / モニュメント建築 / 認知考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年夏の調査は、ハーバード大学とボストン大学が事情により発掘調査に直接加わらないことになり、愛知県立大学と現地メキシコ国立人類学歴史学研究所の考古学研究者と現地学生、さらにカルフォルニア大学研究者・院生による大型国際プロジェクトとして行った。前年度までの研究成果を鑑み、特定の課題を掘り下げるため発掘区域を限定し調査を継続した。まず「石柱の広場」北区のトンネル入り口付近の調査を継続発展させ、祝宴の痕跡調査をさらに西に拡大して調査した。しかし遺物の出土範囲が想定をはるかに越えており、終了できなかったため、来年度に継続する必要がある。生贄体の放置された跡を、東に継続して調査を行い、全ての遺物とさらに南に同伴した土器堆積層も調査を完了した。「太陽のピラミッド北の広場」複合体では、その南東の角近辺を調査し「太陽のピラミッド」との関連性、そして複合体の機能、その時空間の広がりについてトレンチ発掘を行った。 2019年度は遅れがちであった大量な遺物の整理、データ入力、様々な分析作業をほぼ一年間を通して行った。大量の壁画の破片や奉納品の完形品、半完形品などが多く、緻密な修復・保存作業を進めた。土器分類、黒曜石、動物骨の同定と使用痕分析、また生贄儀礼の犠牲者の大量な人骨片の分析も進んでいる。また前年度まで出土した土器分布の空間分析、カンデレロ(土器儀礼品)の研究もほぼ完了している。 本プロジェクトの詳細な発掘報告書(500ページ)を、2019年4月にメキシコ政府の考古学審議会に提出した。本プロジェクト研究の主たる成果は、アメリカ考古学総会での発表、またメキシコ国内でも広く講演活動、そして英語、スペイン語、日本語による「石柱の広場」プロジェクトのウェブサイトなどで普及に努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは、テオティワカンで最大級の儀礼場・宮殿タイプの複合体(約500m x 300m)をトレンチ・ピット発掘調査しているが、予想以上の成果を挙げている。正確で詳細な古代都市のAutoCAD建築図やLiDARマップ作成、さらに遺構の時空間的広がりを示すデータ収集に加えて、①祝宴の痕跡、②生贄儀礼のデータ、そして③マヤとの交流を示すマヤ壁画の破片発見が特筆事項である。 ①「石柱の広場」北ピラミッド下のトンネル内部で発見された祝宴の痕跡は、安全のため前年度のトンネルを埋め戻し補強作業をしたうえで、さらに新トンネルを掘らねばならず、2019年度は5メートルにわたり出土した7926個の遺物の記録と取り上げ作業を精力的に行ったが、使われた大量の土器破片や道具類・食材の残骸の出土範囲がさらに西の堆積土の下層に続いており、2019年度内に終了できなかった。古代の貴重な儀礼・祝宴の資料であり、来年度に完了を目指したい。 ② テオティワカンでは、儀礼として生贄にされた埋葬体はモニュメント内部で発見されているが、大量の生贄儀礼が行われた後に体を処理し、その残片が大量に投げ込まれたように山積みされた埋葬例は初めてである。食肉儀礼が行われた可能性もあり、同伴して出土した道具類や動物体の破片と共に現在分析中である。 ③テオティワカンの心臓部から突然マヤ壁画の破片が出土し、さらに①の儀礼・祝宴跡からもマヤ式土器が発見されており、テオティワカン国家のリーダー集団が直接マヤ王朝と関係があったことを物証する貴重な資料である。発掘データと共に壁画の図像解釈や他のマヤ遺物の分析中であり、今後古代都市の政治体制を解明する手がかりとなる。 「石柱の広場」プロジェクトの一連の発見はメキシコや国際メディアでも報道され、学術出版や学術講演会でも発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
国立考古学審議会から本年度の調査計画は認可されたが、今後LiDARマップと地上踏査は、発掘調査と別のプロジェクトとして申請するように通達があり、来年度以降は2つのプロジェクトとして再構築する計画である。本年度は発掘とマッピングを予定通り行う予定だが、来年度以降は測量図作りのための都市周辺地区の踏査は他のプロジェクトにより実施するよう、今後拡張した研究案を申請する予定で、本研究は中枢部の発掘調査に集中した研究とする。 「太陽のピラミッド北の広場」複合体の南地区は、「太陽のピラミッド」を囲むプラットフォームの存在が未発掘ながら確認でき、その大儀礼場と同複合体との関連性についてさらに調査する計画である。昨年度のトレンチ発掘では、ピラミッド儀礼場の北プラットフォームの境界壁が早期ではさらに西へ続き、繁栄期になると増築により「北の広場」もその一部に融合され、機能も変化していった可能性が示された。一方で壁画の破片も出土し、本「北の広場」の使用者集団を同定する資料となる。2020年度は、さらに南西部にある絢爛な壁画が出土した「太陽の宮殿」、さらに「太陽のピラミッド」との関連性を探るため、トレンチ発掘を行う予定である。 2020年度夏の現地調査中に、テオティワカンにて現在まで発見された3000点のマヤ壁画の破片についてのワークショップを、マヤ図像学、マヤ文字専門家をテオティワカンに集めて行う予定であったが、メキシコで新型コロナビールス問題の深刻な状態が続くため延期する可能性が高い。同時に、発掘調査自体も本年度内の調査は難しいと考えており、今後の状況を見ながらいつ再開するか決定したい。 この間も数人ながら遺物の保存・分析作業は継続する計画であり、成果公表も国際学会等で行っていく予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Book] 熱帯高地の世界2019
Author(s)
山本 紀夫(編集者)、杉山三郎(著者)
Total Pages
448
Publisher
ナカニシヤ出版
ISBN
978-4-7795-1374-9
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