2017 Fiscal Year Annual Research Report
大陸縫合帯イランの鉱床成因解析-新しい同位体地化学探査技術の実用化-
Project/Area Number |
17H01671
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
淺原 良浩 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10281065)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
壷井 基裕 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60411774)
南 雅代 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90324392)
山本 鋼志 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70183689)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | イラン / 鉱床 / 同位体 / 地球化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本調査研究の目的は、87Rb-87Sr系、147Sm-143Nd系などの放射壊変系の同位体分析を、熱水鉱床、堆積鉱床などの多様な鉱床に適用し、得られた同位体初生値と年代値に基づいて鉱床成因解析を行うことである。具体的には、大陸縫合帯であるイラン国内における火成活動と鉱床生成の関連性を明らかにするため、ザグロス山脈北西部およびアルボルズ山脈西部を対象に現地調査を行い、鉱石、鉱床母岩、貫入火成岩などの化学分析・同位体分析を実施し、新しい同位体地化学探査の実用化を目指している。 初年度の現地調査は、平成29年6月(11日間)に行った。調査地域は、アルボルス山脈西部域Zanjan市周辺の磁鉄鉱-燐灰石(IOA)鉱床とその周辺の火成岩体である。調査は、代表者、分担者1名、協力者4名(日本側の大学院生1名、イラン側の研究者2名と大学院生1名)の計6名で実施した。採取した約20試料の火成岩と鉱石について、名古屋大学で化学分析とRb-Sr、Sm-Nd系の同位体分析を行った。一部の鉱石試料については鉄の安定同位体分析も行った。鉄の安定同位体分析については、試料の前処理は名古屋大学で、測定は平成29年8~9月(6日間)に韓国地質資源研究院で実施した。Sr-Nd同位体、Fe同位体および微量元素組成の解析から、Zanjan地域のIOA鉱床がマグマ熱水性鉱床であることが確認された。また、Sr同位体初生値解析の結果、鉱床周辺に分布する複数のタイプの火成岩体の中から、IOAの形成に密接に関連している火成岩岩体を特定することに成功した点は重要な成果の1つである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度当初の交付申請書に記載した研究実施計画は順調に進展している。自己点検評価としては、予定していた実施内容は全体としては概ね達成しているものの、遅れている点と当初の計画以上に進展している点の両方を含んでいる。その具体的な内容は次のとおりである。 (やや遅れている点) 平成29年度の研究実施計画で当初予定していた実施内容のうち、微小領域の化学分析と同位体分析のための手法確立が完了していない。その理由は、アルボルス山脈西部においてZanjan地域に加えて他地域の火成活動の時期の概要を知るため、Talesh地域の火成岩の化学分析、Sr-Nd同位体分析、ジルコン鉱物U-Pb年代測定の実施を優先したためである。 (当初の計画以上に進んでいる点) 年度当初には予定していなかったアルボルス山脈西部Talesh地域の火成岩の化学分析・同位体分析、U-Pb年代測定を実施した。その結果、従来1つの岩体と認識されていたTalesh地域の火成岩岩体から中新世と白亜紀後期の2つのU-Pb年代が得られ、少なくとも2つの火成活動があったことが明らかとなった。さらに、これらの化学組成・同位体組成からは、2つの火成活動のマグマ源が全く異なっていることも明らかとなった。Zanjan地域とTalesh地域の結果から、アルボルス山脈西部では白亜紀後期以降、断続的に様々なタイプの火成活動が起こっていたことが確認された。これらの結果は、従来のアルボルス山脈西部の火成活動モデルを大幅に改変するものであり、今後鉱床成因解析を進める上でも重要な成果である。これらの成果は、現在論文としてまとめており、平成30年度中に投稿予定である。 平成29年度の研究実施計画は、以上のとおりおおむね順調に進展しており、平成30年度以降の3年間で、当初の研究目的を十分に達成できる見通しがある。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初3年目以降に予定していたイラン北西部の広範な地域での現地調査を、2年目から実施する予定である。平成30年度の現地調査は4~5月と10月の2回実施する予定であり、すでに準備が進んでいる。ザグロス山脈北西部に点在する新生代花崗岩に焦点をあて、1回目の4~5月には西アゼルバイジャン州のウルミエ湖西岸からクルジスタン州西部の広範な地域で試料採取を実施する。採取した試料について9月までに予備分析を行い、2回目(10月)の詳細な調査計画を検討する際の基礎データとする。このように、現地調査計画の当初予定の繰り上げや、4年間の研究期間内に当初予定より多くの地域の調査、またはより詳細な調査を進めることを検討している。 平成29年度の研究実施計画で当初予定していた実施内容のうち、LA-ICP-MSによる微小領域の化学分析・同位体分析の手法確立が未達成であるが、平成30年度前半に確立できる見込みである。また、新たにSHRIMP、LA-MC-ICP-MSによるジルコン鉱物の微小領域の酸素同位体・Hf同位体分析も加えて、当初計画を上回るペースで研究を実施していく。このため、2年目より研究分担者を1名追加する。火成岩の主成分・微量成分元素の定量分析、Rb-Sr、Sm-Nd系の同位体分析、ジルコンU-Pb年代測定の分析技術についてはほぼ確立しており、年間50~100試料の分析に対応できる体制が整っている。平成30年度に採取した試料については、年度内に分析をほぼ完了する予定である。 成果公表については、公表済みの4編に加え、平成30年度も論文の執筆に取り組み、国際誌に2編ないし3編の論文を投稿する予定である。
|
Research Products
(13 results)