2018 Fiscal Year Annual Research Report
生体信号情報に基づく潜在的危険要因の検出と回避技術に関する研究
Project/Area Number |
17H01741
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
田頭 茂明 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70332806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻野 正樹 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00397639)
松田 浩朗 飛島建設株式会社技術研究所, -, 主任研究員 (80443646)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情報システム / 生体信号情報 / 潜在的危険要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
建設工事における労働災害は、不安全状態と不安全行動によるものが多く、両者を排除できれば、そのほとんどを防ぐことができる。これまで不安全行動に関して研究が進んでいたものの、不安全状態に関しては、その危険性の評価を人間の判断に頼るしかなく、研究が進んでいなかった。本研究課題では、すべての労働者から計測された生体信号情報を用いて、認知科学的アプローチに基づき潜在的な危険要因を不安全状態として漏れなく検出し、その回避を支援する技術を確立する。 平成30年度の研究実績として、昨年度から引き続き人的危険要因と環境的危険要因の二つに分類した潜在的危険要因を詳細に分析した。また、複雑で多様な潜在的危険要因をシンプルに取り扱うために、それぞれの要因を異なるアプローチで検出する手法を提案した。具体的な研究実績は次の通りである。(1)生体信号情報から検出できる要因として定義した人的危険要因に関して、低コストかつ持続的に生体信号情報を計測可能なスポット型ゲートウェイモデルに基づく生体信号モニタリングシステムを構築した。構築したモニタリングシステムを実際のトンネル工事現場(愛知県田原市および沖縄県名護市)で評価した。実環境での提案システムの課題を洗い出すことができ、明確な改善点を得ることができた。(2)周囲に存在する環境情報から検出できる要因として定義した環境的危険要因に関しては、昨年度開発した環境情報として労働者や重機を含む車両の軌跡を圧力センサシートや複数のマイクロフォンを用いて獲得する技術の信頼性の向上に努めた。圧力センサシートによる労働者の軌跡の獲得では、手法を改善し、獲得精度を高めることに成功した。また、マイクロフォンによる車両検知では、風や土木作業による雑音による影響を緩和する手法を提案し、手法の頑健性を高めることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては、次の理由により「おおむね順調に進展している」といえる。(1)昨年度の実績である、潜在的危険要因を詳細に分析し、人的危険要因と環境的危険要因の二つに分類できた点は、複雑で多様な潜在的危険要因をシンプルに取り扱うことが可能となり、本研究計画の進捗を推し進めることができた。(2)昨年度の実績である建設工事において労働者の作業を阻害しない小型の生体信号測定機器のプロトタイプシステムにくわえて、今年度の実績である低コストかつ持続的に生体信号情報を計測可能なスポット型ゲートウェイモデルに基づく生体信号モニタリングシステムを確立できた点は、研究を遂行するために必要なデータが計測可能となり、要素技術の開発を推し進めることができた。(3)本研究課題を遂行する上での懸念事項の一つであった、実証可能な工場現場の決定、研究協力や現場実験の協力体制の確立、をスムーズに決定できたことにより、今年度実際の工事現場(愛知県田原市および沖縄県名護市)でのテスト実験を実施し、提案技術を評価できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、人的危険要因を生体信号情報から検出する手法の信頼性や頑健性を高めることにくわえて、今後実施する予定である潜在的危険要因の回避技術を確立するために必要な要素技術を検討していくことになる。具体的には以下の3点を軸に研究を進めていくことにする。(1)開発したスポット型ゲートウェイモデルに基づく生体信号情報のためのモニタリングシステムの信頼性を評価しつつ、現場実験を通して潜在的危険要因検出時の生体信号の関係を明らかにし、生体信号情報から危険要因を判別する手法を提案していく。このため昨年度に実施したトンネル工事現場(愛知県田原市および沖縄県名護市)での事前実験をもとにして、脈拍・血圧を生体信号情報として計測し、現場での作業を通して、人的危険認知時における生体信号情報の特徴を把握する継続的で本格的な実験を実施していく予定である。(2)また、危険要因検出時にその危険要因の場所・状況を特定し、それを通知するための労働者および車両の測位通知システムの開発を継続する。スポット型ゲートウェイの識別子から得られる測定者位置と、通信内容であるセンサ情報を計測し、位置情報をベースにして危険要因情報を通知するシステムを設計する。危険要因と認識された場所などの位置に依存したメッセージを特定の位置に存在するユーザだけ通知するメッセージングシステムを実現し、関係のあるユーザだけに効果的に通知する仕組みを導入する。(3)これらの様々な情報を蓄積できるように設計し、潜在的危険要因に至った原因・軌跡を追跡できるようにソフトウェアを開発する。これは今後実施する予定である潜在的危険要因の回避技術を確立するために必要な要素技術となる。
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