2018 Fiscal Year Annual Research Report
Highly massive parallel evolutionary computation for designing artificial genetic circuits and microbe networks
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17H01796
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 雅幸 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (00220442)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウェットGA / 微生物生態系 / 細菌群衆 / 環境メタゲノム / 資源消費者モデル / 群衆形成モデル / 偶発性分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命にアイデアを得た進化計算の応用を通じて培われた探索戦略を、分子上に実装したウェットGA を提案し、タンパク質工学に応用してきた。生物学実装を理想化して高度並列進化計算を提案し、その基本的性質を解析した。本研究はこれらの成果を踏まえ、スパイラルの次の段階として計算モデルの応用を考え、合成生物学における人工遺伝子回路、および多種の微生物からなる生態系ネットワークの設計を試みた。 人工遺伝子回路設計では、オシレータ回路にレポータ回路が接続するシステム全体を素材として、複数の遺伝子回路がカスケードする状況における、資源の奪い合いについて数理解析および実験解析を行った。その結果、ちょうど電子的な増幅回路をカスケード接続する場合、入力インピーダンスを高く、出力インピーダンスを低くすると、接続の悪影響が及びにくいような状況が、複数の遺伝子回路のカスケード接続においても生じることを数理と実験の両面から明らかにした。 微生物生態系のネットワーク設計では、具体的なフィールドとして多摩川の河川水から採取した環境メタゲノムを取り上げた。多摩川では、下流で排水処理水が全水量の5割にも達する。微生物生態系モデルを構築することで、下水処理水や季節変動の微生物生態系への影響を解析・予測することとした。複数の採取地点と時系列のデータから多摩川の上流から下流までを統合した微生物生態系モデルを構築する上で、細菌の群集は細菌構成を予測がつかない形で偶発的に形成することが問題となる。多摩川の上流と下流どちらの細菌群集がより偶発的に形成されているのかを、細菌群集の類似度を計算することで推測した。何が偶発性を起こす原因となるのかを、in silico実験とex situ実験で確かめ、それが排水処理水の混入や季節変動でどの細菌が増減したのかを評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
提案したウェットGA型高度並列進化計算を、河川の微生物ネットワーク設計に応用し、人工遺伝子回路評価を行う予定だったが、フィールドである多摩川流域は想定外の台風などの異常気象により状態が安定しない状況が生じた。 遺伝子回路評価のためには、遺伝子回路を組み込んだ微生物が動作する環境自体の数理モデルが必要である。環境には、多数の微生物が含まれて一種の生態系を作っている。微生物生態系は、主に春夏秋冬の四季に応じて、ゆっくりと種の組成が変化する。種の組成が変化すると物質の代謝の状況も変化する。数理モデルでは、このようなゆっくりとした変化を非線形微分方程式を使って記述するが、どのような物質代謝がどれほどのスピードで進むのかについての多くの未知パラメータが含まれている。時系列的なメタゲノム解析によって、サンプルから種の組成のゆっくりとした変化を推定することができ、未知パラメータ推定の重要な手掛かりとなる。これらの未知パラメータが決定できて、ようやく遺伝子回路評価が可能となる見込みであった。 残念なことに、当初計画の河川は天候の変化の影響を受けやすく、急な天候の変化あるいは災害前後には、サンプルの状態が安定せず、計測結果が大幅に変動して一貫した分析結果が得られなかった。このため、サンプルの採取地をより安定した環境に変更して時系列データを取り直す必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行上、より安定した環境が不可欠であることから、帯広畜産大学の共同研究先と協議し、通年で継続的なサンプル採取、メタゲノム分析を追加で実施の上、回路評価を令和3年1月に延期して実施することとした。 河川は天候の変化の影響を受けやすく、急な天候の変化あるいは災害前後には、サンプルの状態が安定せず、計測結果が大幅に変動するのに対して、農地土壌はよく耕起されて均質である上に、洪水でもない限り天候の変化の影響を受けにくいことが期待できる。ただし、農地土壌は河川水よりもさらにゆっくりとした変化を示すであろうことが予想されるため、四季を通じての通年資料採取が必須となる。帯広畜産大の共同研究者から、学生演習用圃場の使用許可が得られたため、計画を変更して通年サンプルを採取することとした。なお、冬季の分の試験サンプル採取は2月に実施済みである。
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Research Products
(4 results)