2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H01806
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小島 治幸 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40334742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 康弘 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30260392)
吉澤 達也 神奈川大学, 人間科学部, 教授 (90267724)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大脳半球機能 / 側性化 / 半視野呈示 / 美的判断 / バランス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はまず,大脳側性化機能の行動的評価を行うための視覚刺激の作成を行い,つづいて実験的検討を行った。実験的研究においては,これまで側性化に関して「大域的処理は右半球優位であり,局所的処理は左半球優位」であるとする報告(Van Kleeck, 1989, Neuropsychol.; Evans et al, 2000, Neuropsychol.)や,芸術的機能は右半球機能が優勢であるとする通説(e.g. Sperry, 1975; Schwartz, Davidson, Maer, 1975)があることなどから,大域処理による芸術的機能の検討として,図形の美的判断に半球処理差があるか否かを実験的に調べた。実験では,まず,建築物,カバン,車のシルエットを刺激図形として,その縦横比を黄金比や白銀比など1:1から1:2の縦横比に伸縮した形態を刺激として用意した。そして,それらを半視野呈示法によって観察者に短時間(100ms)呈示して美しさの評価,そして次に図形のバランス評価を行ってもらい,その評価値に呈示視野による違いが見られるかを検討した。その結果,形態刺激の美しさ評価の平均値は,右視野呈示した場合の方が左視野呈示した場合より優位に高かった(p<.05)。また,同じ図形を使ってバランス評価も行ったが,その評価値もやはり右視野呈示した場合の方が左視野呈示した場合よりも優位に高かった(p<.01)。この結果は,左半球処理の場合の評価の方が右半球処理の場合より評価値が高いという,いわば当初の仮説とは逆の結果である。これは,課題が1から7の七段階の言語評価を求めたことによる可能性や,反応する手を右手とし,カウンターバランスを取らなかったためである可能性などが考えられる。これらの問題は,今後の研究において注意すべき点であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,視覚情報処理における側性化の機序を明らかにすることを目的としている。このため,様々な視覚処理レベルを刺激する視覚刺激を用いて,その左右大脳半球処理差の始まる処理レベルの解明を目指している。そのような処理レベルを発見するためには二つの研究の方向性,すなわち,高次な視覚処理レベルから低次レベル処理へと調べてゆく研究の方向性と,低次視覚処理機能から高次レベル処理の機能へと調べてゆく方向性がある。視覚情報処理には点の抽出から線,面の抽出などといった階層性が存在する反面,処理の性質によっては,それらの処理レベルが明確でなかったり,あるいは処理モジュールの関係性が明確でなかったりする処理も含まれる。特に,皮質下の抹消レベルでは処理の階層性は明確だが,有線皮質以降の視覚野にあたる中程度レベルや高次レベルの視覚処理機能においては,想定される処理モジュールがParvo/Magno系情報のどちらからの情報を含むのかを推定し,そこでの処理がどのような情報を利用しているかを推定しながら検証を進める必要がある。 研究初年度においては,刺激処理レベルとしては中程度レベルの複雑さをもつ刺激を用いて課題処理の側性化を検討した。中程度から高次レベル処理機能はその階層性が明確でないため,検討においてはこのような仮定的な方法を取らざるを得ない。このようにして行った初年度の研究は,作業仮説とは異なる結果となったものの,本研究を進める上で,方法における有用な確認を行うことができた。しかし,研究計画書に記載したような低次視覚処理レベルからの機能検証は,実施しようとしたものの技術的問題のために見送らざるを得なかった。研究2年目においては,昨年の問題を早急に解決して,当初計画した実験を実施すべく研究を進めてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後まず実施したい研究としては,Parvo系処理といえる色情報処理における大脳半球左右差の有無を検討することである。またMagno系処理を代表する運動検出処理と空間検出処理における大脳半球左右差の有無を調べたい。これらの検討のためには刺激要素を厳密に統制した視覚刺激を作成する必要があり,初年度はそれを技術的に完成させることができなかった。しかし,次年度にはこの研究のために博士研究員を雇用してこの研究に従事してもらうことから,問題を解決して,実験の早期実施を目指したい。 また,視覚情報の高次レベル処理に関連して,我々は,比較的単純な要素からなる絵画刺激を用いて,美的判断処理の研究を行った。それは,建築物の絵画およびその絵画の空間周波数成分をもつテクスチャー刺激を作成して美的判断課題を行ったものであった(Vannucci, Gori, Kojima,2014, Cog.Neuroci.)。本研究では,研究協力者の Vannucci博士等と共同でこの研究を展開し,低次レベルの刺激成分を含む視覚刺激の美的判断/感性評価において,行動計測ならびに脳イメージの両面から処理の側性化の有無を探索したい。さらに,先行研究で用いられた刺激画像とは異なる種類の画像を作成・使用して感性評価課題を行い,視覚情報処理における高次機能の側性化特性を検証していきたいと考えている。
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