2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17H01806
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小島 治幸 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40334742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 康弘 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30260392)
吉澤 達也 神奈川大学, 人間科学部, 教授 (90267724)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 側性化 / 大脳機能 / 視覚情報処理 / Magno(大細胞)系 / Parvo(小細胞)系 / 腹側系 / 背側系 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度はまず,皮質レベルにおける視覚機能側性化を行動的に評価するために,方位刺激に対する感度の大脳半球差の有無を検討した。そのために年度当初は輝度コントラストならびに色度コントラストによる格子縞刺激の作成を行なった。そして,視覚Magno系の処理機能を評価するためには輝度コントラストを,Parvo系処理機能を評価するためには色度コントラストを用いて刺激検出閾の測定を行なった。その結果,輝度コントラスト感度に左右視野差は見られなかった。色度コントラストによる格子縞の作成にはminimun-flicker法およびminimum-motion法を用いて輝度コントラストを最小にする等輝度条件を求め,その左右視野差を検討した。その結果, flickerでは左右視野差は見られなかったが,motionでの等輝度感度は,左視野での方が運動を感じなくなるために高輝度を要する結果を得た。しかし,この等輝度条件の結果はParvo系反応の感度を表していると考えられる一方で,矩形波刺激を用いたこの古典的方法による等輝度条件計測では,Magno系による過渡的(transient)反応が混在している可能性が考えられた。 先の計測の問題を解消するために,年度後半は矩形波刺激ではなくガボール刺激を用いて等輝度条件を求め,その感度の左右視野差を更に詳しく調べた。先ずガボール関数状の刺激を複数の観察者に対して呈示し,各自の等輝度の色度コントラスト刺激条件を求めた。そして次にそれぞれの等輝度条件における色度コントラスト刺激を作成し,そのフリッカー検出閾と運動検出閾を左右視野において計測し比較検討した。計測の結果,刺激に対する感度の傾向/特性は観察者によって大きく異なるものの,一貫して色度コントラスト感度は左右視野によって大きく異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は,大脳機能側性化の視覚における神経基盤の検討を行うために視覚対象の検出感度を計測する刺激作成を行い,その検出閾や知覚同定判断などに関わる処理機能の左右半球差を半視野呈示法によって検討することを計画した。特に,本研究ではMagno系情報処理と,Parvo系情報処理の流れから大脳左右半球機能差を検討するために,感度レベルの計測検討を行うことが必要であり,このため本年度は,単純な空間周波数コントラスト刺激の検出/弁別,続いて重畳空間周波数弁別,線画などの単純図形や対象の弁別の課題から開始し,1次・2次運動弁別などの処理課題をテストして,それらの処理に半球機能差があるか否かの検証を行う計画を立てた。 視覚情報処理経路では,背側系は主にMagno系から情報を受けて輝度情報および低空間周波数に感度が良く,腹側系は主に色情報を扱うParvo系情報処理を担い,帯域型感度を持つことが知られている。また,背側系機能は空間情報処理機能に長けているとともに右半球優位であるのに対し,一方腹側系は対象認識処理を行ない,言語化情報処理は左半球優位であることが知られている。このため,本研究では,Magno系情報とParvo系情報の処理を別々にテストする形で半球処理差の検討を進めている。しかし,平成30年度の研究では,Parvo系/色情報刺激作成のための等輝度条件計測に多くの時間を要した。また, Parvo系の感度の左右視野差の程度が観察者によって大きく異なり,非常に不安定であることが明らかになり,そのような刺激を用いてさらに高次レベルの視覚処理(図形や対象の弁別処理課題)の検討まで進むことができなかった。今後,等輝度条件の計測の進行により研究全体の進捗が影響を受けると考えられるが,計測を効率化するなどして研究計画に沿った進行に少しでも近づけたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究結果から,Parvo系刺激処理には視覚処理の初期段階において何らかの左右視野差が存在すると考えられるが,昨年度の計測ではその違いのエビデンスを十分に示すことができなかった。計測における判断基準の難しさや個人差などがあり,この問題の解決には何らかの技術的ブレイクスルーが必要である。しかし今年度も,この等輝度刺激処理に関わる左右視野での違いの有無を明確に示す方法について検討を継続したいと考えている。また一方で,今年度は前年度に行うことのできなかった問題の検証を行いたい。その一つは,対象刺激を空間周波数フィルターで刺激成分を変調することによってParvo/Magno系(腹側系/背側系)をそれぞれ刺激する画像を作成し,それによって対象弁別/認知機能の大脳半球機能差を検討することである。そして,それらの処理課題実施中において脳活動計測を行い,腹側系/背側系処理の成績に対応する脳神経基盤を比較検討する。 特に, Vannucci, Gori, Kojima (2014, Cog.Neuroci.)は,建築物の絵画およびその絵画の空間周波数成分をもつテクスチャー刺激を作成して美的判断課題を行った。その結果,我々が対象情報を持たないテクスチャーに対しても何らかの空間的判断を行なっていることが明らかにされた。本研究においても,研究協力者の Vannucci博士らと共同でこの研究を展開し,低次レベルの刺激成分を含む視覚刺激の美的判断/感性評価において,行動計測ならびに脳イメージングの両面から処理の側性化の有無を調べる。このために,先行研究で用いられた刺激画像に加えて新たな視覚情報成分を含む刺激画像を作成して感性評価を行い,その際の脳活動計測を行うことで,視覚処理と脳機能の側性化との関係を研究してゆく方策を考えている。
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