2017 Fiscal Year Annual Research Report
感性・意欲・情動系神経ネットワークを駆動する運動プライミングの神経基盤の解明
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17H01810
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高島 一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (90357351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 利一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60356772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運動学習 / リハビリテーション / ドーパミン / アセチルコリン / ニューロモジュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、運動学習時に感性・意欲・情動系神経ネットワークを駆動する脳への操作が、運動学習や運動機能回復に有効に作用することを証明し、ドーパミン系やコリン系の賦活化が、運動学習中の運動野皮質の活動性をどのようにモジュレートするのかを明らかにすることを目的とする。本年度はまず、水平ラダー歩行学習課題遂行中のラット腹側被蓋野に電気刺激を行い、動物がステップを踏み外す回数等の運動パフォーマンスをビデオ解析した。その結果、運動学習中に電気刺激を与えた群において、歩行運動パフォーマンスのスコア向上が確認された。次に、麻酔下動物においてマイネルト基底核をターゲットとする電気刺激を行い、運動野皮質に惹起される神経興奮を膜電位イメージング法により解析した。この結果、マイネルト基底核の後方部への刺激が、より効率的に運動野皮質の興奮性を高めるという機能的投射の存在が明らかになった。本年度は、脳深部の直接電気刺激に加え、前頭葉皮質の経頭蓋電気刺激による脳深部核のリモートアクティベーションの可能性を調べる実験も開始した。現在までに、経頭蓋電極の直下においては、数十分間かけて徐々に神経活動が高まる長期増強現象が見られることが明らかになっている。また、嗅覚刺激を用いる実験系では、嗅覚皮質の賦活化が一過性の乳酸産生を促進する現象に着目した。本年度は、酵素センサを組み込んだマイクロ流路デバイスを試作し、辺縁系皮質を含む脳スライス標本が産生する乳酸シグナルをリアルタイムで計測できる実験系が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ドーパミン系(腹側被蓋野賦活化)とアセチルコリン系(マイネルト基底核賦活化)の脳深部刺激、ならびに、経頭蓋電気刺激と、現状有効と想定される脳操作を幅広く試み、それぞれの実験で新しい発見や知見が得られた。次年度以降は、実験条件を精査し、体系的にデータを蓄積・解析して成果発信につなげる。行動実験系の進捗、特にラダー歩行課題の解析系の補強という課題はあるが、その他、初年度の網羅的アプローチは概ね成果が得られ、研究計画は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られた知見を利用して、運動学習中の腹側被蓋野ならびにマイネルト基底核への電気刺激条件と学習効果の検証を進める。本年度に開発した、紫外線による局所的な脳損傷作成手法(特許出願済み)を利用し、運動野損傷モデル動物を実験に導入してゆく。また、さまざまな脳操作を併用した場合の相乗効果についても検証を進める計画である。嗅覚系の賦活化実験については、単離脳標本を用いた機能的神経投射の解析に加え、ヒトでの嗅覚運動プライミングを検証するための実験系構築を開始する。
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