2018 Fiscal Year Annual Research Report
Influences of the deposition of volcanic tephra on the phosphorus cycling of forest ecosystems
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17H01858
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, 農学研究科, 教授 (20324684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80456748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生態学 / 環境変動 / 土壌学 / 環境分析 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿沼土をポットに加え、これにイスノキの山引き苗を植栽し、無施肥の状態で生育した。植栽後200日目に一部の苗を回収し、葉、茎、根に分け、乾重を測定後に濃硫酸による湿式灰化を行い、植物に含まれるリン及びその他元素濃度の定量を行った。また、植栽後の鹿沼土も湿式灰化し、それに含まれるリン及びその他元素濃度の定量を行った。苗と鹿沼土に含まれるリンを植栽実験前と後で比較し、鹿沼土から植物に移行したリンの総量を決定した。 アロフェンに吸着したリン酸を溶解する物質として、樹木の細根から滲出する有機酸が考えられる。火山灰土壌の特性を持つ屋久島低地林において、Phillips et al. (2008)の方法を用い、優占樹種実生から細根滲出物を採集した。実生の細根の一部を切断しないように注意深く掘り出し、洗浄し、炭素を含まない栄養液を注入したシリンジを装着し、暗条件で48時間放置した。その後、滲出物を含む栄養液を回収し、高速液体クロマトグラフィーにより、有機酸の定性と定量を行った。また、滲出物中の総炭素量・窒素量を、TOC測定装置により決定した。さらに、別の実生から根圏土壌を採集し、選択溶解法によりアロフェンなど非晶質鉱物を可溶化し、非晶質鉱物に含まれているAlとFeの濃度およびそれに吸着しているリンの濃度を決定した。森林内のバルク土壌サンプルについても同様の分析を行い、バルクと根圏土壌のAl、Fe及びPの濃度差から、根によって可溶化した非晶質鉱物およびPの量を評価した。最後に、滲出物に含まれる有機酸の濃度と非晶質鉱物の可溶化との関係を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに進展していると判断できる。植栽実験も失敗せずに進展し、実験材料を採取し、化学分析に供することができた。また、屋久島においても予定通りに野外調査を実施し、土壌と細根滲出物を採集し、化学分析に供することができた。成果については、日本生態学会と日本森林学会で発表を行った。これらは、全て計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、非晶質鉱物に吸着したリン酸の樹木根による可溶化を、イメージング技術を使い検証する予定である。まず、昨年度にポットに植栽したイスノキの山引き苗を抜き取り、細根を鹿沼土ごと採集する。適当な大きさの鹿沼土の粒(直径5-10 mm程度)に陥入した細根を丁寧に選び、鹿沼土の粒ごと樹脂で包埋する。専門業者に発注することで包埋樹脂の薄膜切片を作成し、これをマイクロPIXE分析に供する。約1μmの解像度のビームにより切片をスキャンし、元素(特にリン、鉄、アルミニウム)の分布地図を得る。同じ切片の画像を光学顕微鏡を用いて撮影し、細根の分布を記録する。光学顕微鏡の画像とマイクロPIXE分析によるリン、鉄、アルミニウの分布画像を重ね、元素の濃度が根圏で有意に低下しているかを統計的に検定する。 さらに、日本の森林生態系における火山灰土壌の網羅的な化学分析も実施する。火山灰土壌および非火山灰土壌を持つサイトを日本各地からそれぞれ数サイトずつ選び、定法に従って、A層とB層から土壌コアを採集する。土壌試料は冷蔵して京大に持ち帰り、連続抽出法により土壌リンの画分を明らかにする。同じ土壌を選択溶解法により抽出し、アロフェンなど非晶質鉱物に含まれているAlとFeを可溶化し、それらの濃度を決定する。さらに、選択溶解法により可溶化してくるリンの濃度を決定する。分析が全て終わった時点で、非晶質鉱物中のAl・Fe濃度と全リン(あるいは異なるリン画分)濃度との関係を検定する。採集した土壌のサブ・サンプルを農業環境変動研究センターに送付する。研究分担者はこれらの土壌をアルカリ抽出し、アルカリ抽出画分のP-NMR解析を実施し、土壌有機態リンの形態を明らかにする。
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