2019 Fiscal Year Annual Research Report
Influences of the deposition of volcanic tephra on the phosphorus cycling of forest ecosystems
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17H01858
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, 農学研究科, 教授 (20324684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80456748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生態学 / 土壌学 / 環境変動 / 環境分析 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、広域テフラ・データが充実しており、テフラの加入頻度や加入後経過時間が異なる森林生態系が広く成立している日本を対象として、テフラが森林生態系のリン循環に及ぼす影響を生物地球化学的に解明するものである。 当年度は、H30年度からの植栽実験を継続した。この植栽実験は、火山灰土壌に含まれる非晶質鉱物に吸着したリン酸が樹木根により可溶化されるのかを検証することが目的である。当年度は、非晶質鉱物に吸着したリン酸の樹木根による可溶化を、イメージング技術を使い検証することを試みた。まず、前年度にポットに植栽したイスノキの山引き苗を抜き取り、細根を鹿沼土ごと採集した。適当な大きさの鹿沼土の粒(直径5-10 mm程度)に陥入した細根を丁寧に選び、鹿沼土の粒ごと樹脂で包埋し、包埋樹脂の薄膜切片を作成した。粒子励起X線放出分析システムを用い、薄膜切片をスキャンし、元素(特にリン、鉄、アルミニウム)の分布地図作成を試みた。 さらに、日本の森林生態系における火山灰土壌の網羅的な化学分析も実施した。環境省のモニタリング1000サイトに登録してある森林サイトの幾つかから土壌を定量的に採集した。各サイトにおいて、等高線と並行に斜面上部から下部にトランセクトを4本置き、各トランセクトに沿って一定間隔で複数のコアーを抜き、A層とB層を分離して層位毎に混合した。これにより、各サイトからA層4試料、B層4試料を得た。土壌試料は冷蔵して京大に持ち帰り、土壌リンの濃度(全リン)を分析した。同じ土壌を選択溶解法により抽出し、アロフェンなど非晶質鉱物に含まれているAlとFeを可溶化し、それらの濃度を決定した。さらに、ルーチン分析により、pH、無機態N濃度、交換体陽イオン濃度などを決定した。採集した土壌のサブ・サンプルについては、アルカリ抽出画分のP-NMR解析を実施し、土壌有機態リンの形態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の自然林から採集した土壌の分析については、おおむね順調に進行した。ルーチン化学分析においては特に大きな障害はなかった。しかし、研究をさらに発展させるために土壌の微生物生化学マーカーを抽出する予定であったが、共同研究者である中国人研究者の来日が感染症拡大のために実現せず、生化学マーカー抽出は出来なかった。 採集した土壌の化学分析が全て終わった時点で、非晶質鉱物中のAl・Fe濃度と全リン(あるいは異なるリン画分)濃度との関係を検定する予定であった。しかし、網羅的な土壌採集が完了しておらず、データ解析は次年度に持ち越すことにした。 非晶質鉱物に吸着したリン酸の樹木根による可溶化をイメージング技術により可視化することを試みたが、樹脂による根の包埋と薄膜切片の作成において、少し問題があったようで高い解像度を得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、火山灰(テフラ)影響下にある新たな森林サイトを追加し、土壌を採集する。また、対照として非火山灰土壌を持つ森林サイトも複数追加する。土壌採集を予定する森林サイトは、長野県志賀高原地域、高知県佐田山・市ノ又地域、中国地方などである。各サイトにおいて、前年度と同様に土壌を採集する。森林内の憂占樹種からも陽葉を採集し、持ち帰る。土壌試料は冷蔵して京大に持ち帰り、連続抽出法により土壌リンの画分を明らかにする。同じ土壌を選択溶解法により抽出し、非晶質鉱物に含まれているAlとFeを可溶化し、それらの濃度を決定し火山灰影響の指標とする。採集した陽葉は乾燥させ、粉砕後に湿式灰化し、含まれている栄養元素濃度をICPにより決定する。 本年度は最終年度なので、これまでに蓄積したデータの解析を行う。解析には多変量解析CCAを用い、外的要因として火山灰加入量の指標(非晶質鉱物AlとFe濃度)、気候要因、森林タイプを、内的要因としてこれまでに分析した土壌理化学性(特に土壌リン画分と全リン)を用い、火山灰加入がどのように土壌理化学性に影響を及ぼすのかを解明する。また、憂占樹種の栄養元素濃度がどの要因によって決定されているのかについても解析する。以上より、火山灰(テフラ)の加入量(頻度や加入後経過時間)が森林生態系のリン循環に及ぼす影響を生物地球化学的に解明する。
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Research Products
(6 results)