2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of integrated terrestrial biogeochemical model simulating reactive nitrogen dynamics
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17H01867
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
伊藤 昭彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 室長 (70344273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 栄 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30313357)
仁科 一哉 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (60637776)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素動態 / 一酸化二窒素 / 安定同位体 / 生物地球化学モデル / 窒素管理 / 施肥 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主要な成果として、反応性窒素動態を扱う陸域生態系モデル(VISIT)を用いた東アジア地域の一酸化二窒素(N2O)放出マッピングが挙げられる。過去の気象、土地利用、施肥・沈着データを用いて、空間分解能0.5度で東アジア地域におけるシミュレーションを実施し窒素動態をフルに再現して、その中で温室効果ガスとして注目されるN2Oに関する解析を行った。その際に入力データや設定条件を変えた感度実験を行い、過去のN2O放出量変動に対する影響要因の切り分けを行った。その結果、東アジア地域のN2O放出量は平均して2.03 Tg N2O/yrであり、20世紀初頭と比べて3倍に増加していることが分かった。その主な理由は耕作地への窒素肥料投入量の増加であり、この地域の人口増加と食料生産が結果的に温暖化の原因物質放出を増加させていることが示された。これらの結果を論文として発表した。また、モデルの基礎的な高度化として、硝化に伴うN2O放出量の割合に関するメタ分析とパラメタリゼーション開発、そしてVISITモデル導入を進めた。硝化時のN2O放出は、温度と水分だけでなく土壌pHへの依存性も強いことがわかり、それを考慮できる経験式を作成した。現地データを用いたモデル検証のための作業を進め、マレーシアのオイルパーム農園および近傍河川において採取した水試料を分析し、熱帯農業土壌で生成するN2Oの同位体比を明らかにして、生成過程を解析した。また、窒素安定同位体比をモデルに導入するための分別係数などに関する情報収集を進めた。これらをもとに、VISITなど反応性窒素動態を扱うモデルのスキーム改良に向けた研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東アジア地域についてN2O放出分布をシミュレートし、その結果を論文化できたことは大きな進捗であった。平行して全球スケールのシミュレーションも進めており、その出力データはGlobal Carbon ProjectによるN2O統合解析に提供し、国際的なモデル相互比較に協力している。その成果も国際共著論文として発表することが出来た。このような広域シミュレーションが着実に実施される一方、基礎的なモデル高度化・検証は徐々に進められており、硝化N2O放出に関する論文執筆などが進められた。安定同位体の導入は、世界的にも初めての試みであり、当初予想より時間を要している部分もありいまのところ最終的な成果には至っていないが、着実に進行しており翌年度以降の成果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
広域シミュレーションの解析範囲を東アジアから全モンスーンアジアまで展開することで、東南アジアや南アジアのN2O放出量とその分布・変化を詳細に再現することを目指す。可能であれば2019年度内に論文化を試みる。全球スケールのN2O統合解析への協力も進めて国際的な研究成果のアピールにも力を入れる。硝化N2O放出に関する論文は2018年度中に投稿されたものの受理を目指し、できれば脱窒についても同様なメタ分析とパラメタリゼーション開発を進める。窒素安定同位体比の導入は、本課題で目処を付けたいテーマの一つであり、土壌中の無機窒素については同位体比をある程度まで予報することを目指す。また、観測データを用いたモデル検証も同時に進めて論文化を進める。これらの結果を取りまとめて最終的な成果とする。
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