2018 Fiscal Year Annual Research Report
高感度メタン同位体分子温度指標分析による微生物起源メタンの生成・集積過程の解析
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17H01871
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
井尻 暁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70374212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ジルベルト アレキシー 東京工業大学, 理学院, 助教 (20726955)
坂井 三郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 技術研究員 (90359175)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタン / クランプトアイソトープ / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海底下の微生物によるメタン生成の生成過程、生成速度、集積過程を定量的に把握し、資源探査や二酸化炭素の海底下貯留・再資源化の研究促進に貢献することを最終的な目標とする。このために、メタンの生成温度の指標となる特殊な同位体分子(クランプトアイソトープ:一つのメタン分子中に重い同位体13CとD両方を含むメタン分子(13CH3D))の高感度分析システムを確立する。微生物起源メタンの13CH3Dはメタン生成速度が速い場合には、非平衡になりその生成温度を反映しないという現象を利用して、培養実験によりメタン生成速度がどの程度遅くなれば13CH3Dが温度平衡に達するかを調べ、メタンの生成速度に制約を与える指標を新たに確立し、海底下の微生物によるメタン生成に時間軸という新しい指標を得ることを目標とする。 平成30年度は、熊野海盆内の海底泥火山の掘削により得られたメタン試料の分析結果をまとめ論文として発表した。特にクランプトアイソトープのデータはメタンが16℃~30℃付近の地層で生成したことを示し、メタンの炭素・水素同位体比と併せた解析により、メタンの90%以上は微生物によって泥火山の噴出泥の起源となる地層中で生成されたことが明らかになった。この結果は海底泥火山における微生物起源メタンの寄与がこれまでに考えられていたよりもはるかに大きいことを示唆する。 また、国際深海科学掘削計画(IODP)第358次航海に参加し、メタンのクランプトアイソトープ分析のための試料を採取した。この掘削航海では世界最深の海底下3200mから試料を得ることが出来た。さらに、熊野海盆深部のガス試料も採取することができたため、クランプトアイソトープ分析によって海底泥火山のガスとの比較により微生物起源ガスの生成過程を調べるために最適な試料となると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタンのクランプトアイソトープ分析のための、レーザー分光装置が故障しているため、平成31年1月まで装置を使うことができなかった。このため分析システムの高感度化のための基礎実験が全く行えなかった。しかし、基礎実験ができない間に装置のガス導入部の自動化に着手し制御プログラムにより、全自動で分析が行えるシステムを作った。また、これまでに得られていたデータをまとめ論文として発表することができたため、研究そのものは進めることができた。このため、おおむに順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分析の高感度化を進めると同時に、これまでに採取しているクランプトアイソトープ分析用の天然試料の分析を行う。 分析に供する試料として1)微生物によるメタン生成が活発な襟裳岬沖掘削で得られたガス試料、2)熊野海盆深部および付加体深部の掘削で得られたガス試料を予定している。 また、メタン菌を高圧下で培養し、生成されたメタンのクランプトアイソトープの分析を行い、メタン生成速度がどの程度遅くなればクランプトアイソトープが温度平衡に達するかを調べる。
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