2019 Fiscal Year Annual Research Report
グループSUMO化によるゲノムとプロテオームの損傷応答
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17H01878
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
斉藤 寿仁 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (50211925)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロテオスタシス / DNA損傷応答 / 核 / 微小核 / 脂肪適 / グアニン4重鎖 / 液層分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の品質管理(プロテオスタシス)とDNA損傷応答は一見すると質的に異なる生体応答に見えるが、それぞれの制御にSUMO-ubiquitin-proteasome(SUP)経路が共通して関わることが知られている。このことは、SUPによる翻訳後修飾系が2つの応答を細胞内でどの程度活性化あるいは抑制化するのか、そのバランス制御を司る可能性を示唆している。本研究では、当初、1)ヒトの培養細胞に薬剤ストレスをかけることでタンパク質とゲノムDNAの品質管理のバランス制御を破綻させ、その結果生じる未成熟ポリペプチド鎖の集積やアミロイド染色剤にポジティブなタンパク質の集積を解析することを主目的に行ってきた。令和元年度は、これまでの研究の流れを継続しつつ、2)微小核の形成にともなう細胞応答、3)グアニン4重鎖によるDNA液滴形成、4)有糸分裂時における脂肪適の形成と染色体分配の制御、などの研究も開始した。これにより、核構造とゲノム再編に関わる反応制御におけるにプロテオスタシスとDNA損傷応答を多角的に理解した。 1)アミロイド化したタンパク質の核小体とPMLボディでの集積とその制御 2)微小核における核膜構造のバリエーションとゲノム不安定性の制御 3)グアニン4重鎖オリゴDNAの細胞導入による核とクロマチン構造変化 4)脂肪酸による脂肪滴(Lipid Droplets: LDs)の誘導と核・染色体の空間制御
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)アミロイド化したタンパク質の核小体とPMLボディでの集積とその制御 :転写と翻訳活性の阻害による細胞内プロテオスタシスの変換が、タンパク質のアミロイド化にどのような影響を与えるのかをヒト子宮頸がん細胞HeLaおよびAtg5ノックアウトマウス細胞を用いて解析した。タンパク質のアミロイド化は、4種類のアミロイド染色試薬Thoflavin S/T、Congo Red、Amylo-Gloで検出した。 2)微小核における核膜構造のバリエーションとゲノム不安定性の制御:3つの微小核の誘導系を確立して、微小核における核膜と核輸送の制御破綻によるcGAS-STINGやchromothripsisの応答に関する研究を開始した。i) 核膜タンパク質をコアcore(lamin A/C、emerin)と非コアnon-core(lamin B、RanBP2)タンパク質群に分けた核膜の構造解析と、ii) カルボシアニン色素DiIと界面活性剤digitoninによる核膜脂質の可視化をおこなった。 3)グアニン4重鎖オリゴDNAの細胞導入による核とクロマチン構造変化:ヒトのテロメア配列にTをつなげたテロメアオリゴG3T2AT16とMycプロモーター配列にTをつなげたPu27T20オリゴをヒト子宮頸がん細胞に取り込ませることで、人為的に非B型DNA構造の細胞内比率を高くて、核とクロマチン構造の変化、DNA損傷、SUMO/ユビキチン/プロテアソーム/オートファジー、そしてcGAS-STINGの分子応答を解析した。 4)脂肪酸による脂肪滴(Lipid Droplets: LDs)の誘導と核・染色体の空間制御:ヒト培養細胞を用い、分裂期の細胞に脂肪酸を添加してLDsの形成を誘引したとことろ、微小管の集合は見かけ上問題ないものの、分裂期染色体の分配制御が乱されていた。特に、染色体が3極に分布する分裂期細胞が高い頻度で観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)核内におけるタンパク質のアミロイド化とユビキチンーSUMOープロテアソームーオートファジー系の関わりを、PMLボディー、核小体、シャペロン経路も踏まえて解析する。 2)微小核における核膜タンパク質の集積が多様な様式をとっていること、また、核膜の脂質分布が正常と思われるが、核膜タンパク質がほとんど存在しない領域が観察された。この結果は、微小核には核膜タンパク質密度が極めて低い新奇な膜構造領域が存在することを示唆している。今後は、他研究グループの研究成果も勘案しながら、微小核における核膜の異常集積と核輸送の破綻、およびcGAS‐STING応答やchromothripsis制御の関連性について解析する。 3)Pu27オリゴDNAによるG4構造の細胞内導入で最も顕著な細胞応答として核小体と細胞質の膜構造の変化が観察されたことから、DNA損傷、SUMO/ユビキチン/プロテアソーム/オートファジー応答、そしてcGAS-STING応答についての詳細な解析を進めることが大切と考えている。 4)脂肪酸を用いた間期クロマチンの空間制御が可能であることが示唆されたことから、LDsの形成に伴う膜合成系と核膜、あるいは疎水性タンパク質や相分離した高分子複合体とLDsの相互作用の変化が示唆される。LDsの脂肪酸によるLDsの誘導が核サイズやクロマチン空間配置の制御テクノロジーとして有用であることをさらに検証する。
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