2018 Fiscal Year Annual Research Report
Can changes in intestinal microbiota following exposure to environmental chemicals in indoor dust disrupt the higher-order biological functions?
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17H01888
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
柳澤 利枝 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (70391167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 真以子 明治大学, 農学部, 専任講師 (30409388)
嶋田 努 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90409384)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境化学物質 / アレルギー・喘息 / 不安・学習障害 / 室内ダスト / 腸内細菌 / 生体高次機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 室内ダスト中の化学物質曝露がアレルギー性喘息に及ぼす影響 昨年度までに、室内ダスト中に多く含まれる化学物質の一つであるリン酸トリス(2-ブトキシエチル)(TBEP)の混餌経口曝露が、ovalbumin (OVA)感作によるアレルギー性喘息に及ぼす影響について、C3H/HeJ雄性マウスを用いて検討した(TBEPはTDI(Tolerable Daily Intake)である2 μg/kg/dayを高用量とし、0.02, 0.2, 2 μg/kg/day相当量となるよう飼料に混合)。その結果、TBEP 2 μg/kg/day曝露でアレルギー性肺炎症が増悪することを明らかにした。これより、次世代シークエンサーによる糞便中腸内細菌叢の網羅的解析を実施した結果、TBEP 0.02 μg/kg/day群においてBacteroidetes/Firmicutes比が顕著に増加した。回腸、および結腸の病理組織学的評価では、OVA群で回腸における炎症細胞浸潤、結腸の粘液細胞過形成を認めたが、TBEP 2 μg/kg/day曝露による有意な変化はなかった。
2) 室内ダスト中の化学物質曝露が不安・学習障害に及ぼす影響 昨年度に引き続き、TBEPと同じく室内ダスト中に含まれる化学物質の一つであるリン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)(TDCIPP)の生後3週間の強制経口曝露(TDIである2 μg/kg/dayおよび250 mg/kg/day)が社会性行動の一つである遊び行動に及ぼす影響について検討した。SD系LAA雄性ラットを用い、陰性対照としてOil投与群、陽性対照として雌性ラット群を設定し比較した結果、遊び行動は先行研究と同様、雄の方が雌より多かったが、TDCIPP曝露による影響はなかった。また、回腸、および結腸における病理組織学的な変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験に関して、不安・学習障害モデルについては、現在のところ化学物質曝露による明らかな影響は認められていないが、研究計画としては概ね予定通り遂行している。糞便中腸内細菌叢解析は、当初予定していたT-RFLP法ではなく次世代シークエンサーによる網羅的解析に変更し昨年度末より開始しているが、解析装置の稼働に制約があることから若干の遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1)については、引き続きTBEP曝露で認めたアレルギー性喘息病態増悪と腸内細菌叢および腸管免疫との関連について詳細な解析を行う。加えて、機能性食品であるグァーガム摂取によるアレルギー病態の予防・改善効果についても検討する予定である。さらに、TDCIPPの混餌経口曝露がアレルギー性喘息に及ぼす影響についても検討を開始する。影響が認められた場合は、腸内細菌叢解析を行うことにより、病態との関連について検討する。 課題2)については、Wistar系雌ラットを用い、離乳後から成獣期におけるTBEPの混餌経口曝露が不安・学習障害に及ぼす影響について検討する。評価方法は、不安様行動として高架式十字迷路試験、学習・記憶能力として新奇物体認知試験を実施する予定である。影響が認められた場合は、腸内細菌叢解析を行うことにより、病態との関連について検討する。
1)に関しては柳澤と連携研究者である小池が、2)に関しては川口が引き続き担当する。いずれの試験においても、化学物質の影響が検出された場合は、次世代シーケンサーによる糞便中腸内細菌叢解析を実施することにより病態との関連性について検討する。腸内細菌叢解析、および肝臓の胆汁酸代謝酵素、胆汁酸や短鎖脂肪酸のトランスポーターのタンパク・遺伝子発現解析は、嶋田が担当する。
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