2017 Fiscal Year Annual Research Report
残留性有機ハロゲン化合物の低温再合成機構の解明と排出量極小化原理の確立
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17H01891
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪内 直人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90333898)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境技術 / 環境対応 / 有害化学物質 / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、炭素質物質の熱分解・燃焼・ガス化といった高温プロセス由来の有機ハロゲン化合物の低温再合成機構の解明と排出量極小化原理の構築を最大の目的に掲げ、ハロゲン化水素の発生速度の定量化、炭素のミクロ構造に基づいたハロゲン化芳香族構造の生成機構の解明ならびに有機ハロゲン化合物の生成制御技術の確立に取り組む。 平成29年度は、多種類(約30種類)の石炭の昇温熱分解過程でのHCl生成速度の温度変化および塩素分布に及ぼす炭種と反応条件の影響を主に調べた結果、(1)HCl発生ピークの温度領域は260~360、470~510、580~630℃に大別され、低温域におけるHCl生成の例は少ないものの、中高温域でのHCl生成は殆んど全ての石炭で観測されること、(2)800℃におけるHClとchar-Clの収率は各々23~95と4~72%となり、一方、tar-Clは多くても7%に過ぎず、coal-Clの90%以上はHClとchar-Clに転換されること、(3)石炭中の(Naの物質量)+2×(Caの物質量)が増えると、HCl収率が増加するのに対して、char-Cl収率は減少する傾向が見られること、(4)HClの生成速度の温度変化曲線は、石炭の粒径や試料の層高により影響されるが、800℃でのHCl収率は加熱速度(2.5~400℃/min)には殆んど依存しないこと、(5)インドネシア産の亜瀝青炭の酸素吹き加圧ガス化では、チャー中の窒素は炭素と同程度にガス化されるが、硫黄や塩素はガス化されずに保持され、特に塩素はチャーに最も濃縮され易いことが明らかとなった。 このような塩素の濃縮が有機ハロゲン化合物の生成と密接に関連すると強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、主にハロゲン化水素の生成速度の定量化と発生源の解明に取り組み、石炭の熱分解時におけるHCl生成プロファイルをモデル塩素化合物の結果に基づいてピーク分離し、石炭中塩素のミクロ構造を形態別に定量化する手法を確立した。このように、本研究は順調に進展しており、平成29年度に掲げた目標を充分に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度の成果を更に発展させ、有機ハロゲン化合物の生成機構の解明に重点をおく。 試料には、結晶性の異なる活性炭と黒鉛を用い、これらに金属種(FeやCuなど)を添加して、状態の異なるモデル炭素質物質を調製する。また、実際的観点から微粉炭火力発電所の電気集塵機から回収したフライアッシュと鉄鉱石焼結機ウインドボックスから採取したダストも使用する。 炭素構造の解析では、ガス流通式石英製固定床反応器を用いて、試料の昇温脱離/昇温酸化を行い、生成するCOとCO2を高速GCでオンライン分析する。次いで、得られた速度プロファイルを波形分離解析して、炭素構造を形態別に定量化する。 また、炭素質物質とハロゲン化水素の反応では、固定床反応器を用い、温度・時間・HCl/HF濃度をパラメータとして変化させる。実験は、所定温度に保持した試料上にHClまたはHFを流通し、この過程における濃度変化・反応速度をHCl分析計とHF濃度計で連続分析する。次いで、反応後の試料を再加熱し、HCl/HFの発生速度・温度・量を測定する。生成する有機ハロゲン形態の同定・定量に関しては、上記の加熱実験前後の試料について、XPS分析を行い、形成されるハロゲン種を推定する。次いで、FT-IRを用いる形態分析で、ハロゲン化合物のミクロ構造を同定・定量し、これらの結果を総合して有機ハロゲン化合物の生成に寄与する炭素構造と金属の存在状態を解明する。 更に、反応に直接関与する炭素活性サイトにアルカリ/アルカリ土類金属をイオン交換担持することにより表面構造を制御し、エッジ炭素の活性を抑制し、有機ハロゲン化合物の生成量を低減できる活性サイトの「キラー物質」の探索を行なう。最終的には「キラー物質」を添加した実試料、例えば石炭やバイオマス等の燃焼実験を行い、その有用性を検証する。
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Research Products
(12 results)