2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of N2O production/consumption mechanisms in biofilms and development of a wastewater treatment technology mitigating N2O emission
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17H01893
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
寺田 昭彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30434327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 拓 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (10314981)
堀 知行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ付 (20509533)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 亜酸化窒素 / 対抗拡散型バイオフィルム / 硝化・脱窒 / ガス透過膜 / 微小電極 / 生成機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
排水中の効率的かつ省エネな窒素除去と、温室効果ガスである亜酸化窒素(N2O)の排出はトレードオフの関係がある。本研究は、N2Oの排出特性を明らかにし、ガス透過膜を用いた対抗拡散型バイオフィルムによるN2O排出抑制と、単一槽内における窒素除去の両立を目指した。 対抗拡散型と従来法の並行拡散型バイオフィルムを模倣したフローセルシステムを作製し、流入する人工排水中の有機物・窒素化合物の濃度比を変化させて硝化・脱窒性能、N2Oの排出量を比較した。適用した有機物・窒素化合物の濃度比において、窒素化合物の除去性能は提案する対抗拡散型のバイオフィルムの方が高くなった。一方、排出されるN2Oの生成量は、適用した有機物・窒素化合物の濃度比において、対抗拡散型バイオフィルムは1-2桁小さい値となった。対抗拡散型バイオフィルムが有機物と窒素を含んだ排水の処理において、高い窒素除去性能を達成し、N2O排出抑制も可能であることが示された。 次に、形成されたバイオフィルム内のN2O、脱窒反応におけるN2Oの前駆体である一酸化窒素(NO)の濃度プロファイルを微小電極により取得した。その結果、対抗拡散型バイオフィルム内において、NO→N2O、およびN2O→N2への還元反応が行われる部位は、酸素供給部位に近く、隣接していることが示された。さらに、対抗拡散型バイオフィルムで見られたN2O消費が起こる部位では、N2O還元細菌の存在量が高いことも示された。以上より、対抗拡散型バイオフィルムで生成したN2Oは、N2Oを還元する細菌により迅速にN2に変換されるため、対抗拡散型バイオフィルムはN2O削減に有利であることが示唆された。 さらに、実排水処理施設の汚泥処理プロセスにおけるN2O排出機構について検討を行った。低pHとH2Sの存在により、N2O還元反応が阻害される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者や協力者と密なコンタクトを取りながら、立案した実験計画を忠実に行えた。特に、対抗拡散型のバイオフィルムにおいて亜酸化窒素(N2O)の排出量が大幅に削減できることを、作製したリアクター運転による評価と、微小電極・次世代シーケンサーを利用したバイオフィルム内のN2O濃度と微生物叢プロファイルの獲得により明らかにした。リアクター内の物質収支に基づくマクロ的な視点と、バイオフィルム内の現象解明に基づくミクロ的な視点の双方からN2O排出抑制の機構を解明したことは、成果のハイライトと考える。また、生活排水処理施設内の汚泥処理プロセスにおけるデータを採取し、N2Oが蓄積する要因についても理解を深めることが出来た。以上の結果より、研究が概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた知見やノウハウをもとに、対抗拡散型バイオフィルムにおける省エネ・低コスト・低温室効果ガス排出型の窒素除去システムの構築に向けた、リアクター運転を行う。具体的には、生活排水を模擬した低濃度有機物・窒素含有排水へ対抗拡散型バイオフィルムを適用する。 これに付随して、模擬生活排水におけるN2O排出機構の解明を目指す。バイオフィルムの深さ方向におけるDNAおよびRNAレベルでの微生物群集構造のプロファイルと、微小電極を用いたN2O濃度プロファイルの獲得を試みる。さらに、15Nトレーサー法の適用を行い、検出されるN2Oの同位体比の追跡により、N2O生成経路の解明を目指す。 さらに、実排水処理施設の汚泥処理プロセスにおいて、N2O還元反応が抑制される主要な因子の特定と機構解明を行う。
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Research Products
(9 results)