2019 Fiscal Year Annual Research Report
A self-regenerable particulate matter sensor using active oxygen
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17H01895
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 環境浄化 / 環境分析 / センシング / 触媒プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
センサ感度の向上(性能):従来と同様にセンサ電解質としてSn0.9In0.1P2O7加圧成型体を用いて、昨年度開発した白金・イオノマコンポジット電極の性能評価を行った。電極全体が反応場になったことによって、センサ感度を研究開始時に比べて約2倍にさせることに成功した。さらに、下記に示したセラミックス電解質を使用したセンサ素子を試作して、そのセンサ感度と応答性も測定した。その結果、これまでの加圧成体電解質から構成されるセンサ素子と比較して、定性的に類似した性能を発揮したものの、セラミックス電解質の電気抵抗が10倍ほど大きいため、センサ信号値として約一桁小さいものであった。 機械的強度の改善(寿命):昨年度までのセンサ電解質は、Sn0.9In0.1P2O7加圧成型体であり、機械的強度に乏しい材料であった。そこで、電解質自体の高強度化を達成するため、多孔質SnO2焼結体を合成し、リン酸処理することで、より頑丈な電解質を作製した。また、この電解質の各種キャラクタリゼーションを行ったところ、ガス透過性の無い緻密体となっており、さらにプロトン導電率が250-600℃で10-2 S cm-1に達することを見出した。さらに、セラミックス電解質のプロトン導電率を高め、センサ信号を大きくする目的で、セラミックス内にいろいろな低原子価カチオンをドーピングした。現時点での最適ドーパントとして、サマリウムがプロトン導電率の増加に大きく寄与することが判明した。 センサ実用性の検討(ベンチ評価):ベンチ評価用センサとして、セラミックスアルミナヒーターに小型センサ素子を取り付け、評価装置内に装着可能な状態にした。これを用いて、試験的にSn0.9In0.1P2O7・PTFEコンポジット電解質に上記電極を取り付けたセンサ素子でベンチ評価を行ったところ、PM発生量に応じてセンサから電流信号が発生することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに開発したPMセンサのラボレベルのおける性能は、以下のようにまとめられる。 セラミックス電解質:導電率は想定される作動温度200℃で0.001S cm-1程度であり、電流式センサ用としては一桁小さい;機械的強度(マルテンス硬さ)は3 GPaであり、移動用途として求められる最低限の性能を満たしている。作動電極:イオノマの添加によって、感度と応答性が大幅に向上した。センサ素子:感度に相当する電流信号がセラミックス電解質の低導電率のため、実用時に要求されるレベルに達していない;応答性は電流信号の改善によって、仕様を満たすと判断される;共存ガスの影響は全くなく、現時点では問題とならない。 以上のようなPMセンサの現状を考えると、セラミックス電解質の導電率を高めることが第一の目標である。また昨年度までに行ったPMセンサに対する実用に近いベンチ評価では、Sn0.9In0.1P2O7-PTFEコンポジット電解質を用いた場合にPM発生量に応じたセンサ信号を出力したが、セラミックス電解質を用いる測定にはまだ着手していない。そこで、PMセンサのベンチ評価を今後も進めていき、センサの実用性を詳細に評価することが第二の目標である。この際、得られた評価結果を材料設計にフィードバックし、センサ性能のさらなる改善に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
「今年度の位置付け」PMセンサを実用化するにあたり、電流信号の増大が不可欠である。現状での低感度の主な原因はセラミックス電解質の作動温度200℃での低プロトン導電率である。そこで、今年度はセラミックス内部のプロトン濃度を高めることによって、200℃における高プロトン導電率の達成を重点的に行う。 「今年度の目標」セラミックス電解質の緻密性や機械的強度を維持しつつ、200℃でのプロトン導電率を0.01 S cm-1までに高め、センサ電流信号の増大に努める。 「研究の方法」SnP2O7-SnO2セラミックス電解質のプロトン導電率を向上させるには、セラミックス内部のプロトン濃度を高めることが最も有効である。この手段として、母体となる多孔質SnO2に予め低原子価カチオンをドーピングし、リン酸処理後に生成するSnP2O7のSnをドーパントで部分置換することが挙げられる。ただし、このセラミックスの調製工程がまだ確立されておらず、観察されたプロトン導電率に大きな幅があった(0.01-0.005 S cm-1@200℃)。このような再現性に乏しい理由として、セラミックスの緻密性がサマリウムのドーピングによって幾分低下すること、及びリン酸処理工程で不純物としてアルミニウムが混入し、セラミックス表面に絶縁相を形成することが要因であると判明した。セラミックスの緻密性改善については、多孔質SnO2へリン酸を十分に浸み込ませ、内部までリン酸との反応を進行させる予定である。また、絶縁相の除去については、リン酸処理工程で使用するアルミナるつぼの表面を金箔で囲むことによって、リン酸内へのアルミニウム流出を防ぐことを考えている。得られた緻密かつ純粋なセラミックスのプロトン導電率を評価するとともに、作製したセラミックス電解質センサをモデルPM評価ベンチ、エンジンベンチで評価し課題を抽出する。
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Research Products
(5 results)