2018 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオーム解析による有機ハロゲン呼吸細菌の網羅的機能タイピング
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17H01900
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 奈央子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10432220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
押木 守 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (90540865)
野中 里佐 獨協医科大学, 医学部, 講師 (70363265)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脱ハロゲン化呼吸細菌 / Geobacter / Dehalococcoides / 脱ハロゲン化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、大量培養が可能でRdhA抽出のための十分なバイオマスが可能なGeobacter sp. AY株を用いてRdhAの抽出・同定方法を確立した。具体的には租抽出後にNative-PAGE 電気泳動を行いin gel assayによるバンドの同定を行い同定可能であることを示した。しかし、Native-PAGEで検出されるバンドパターンは不明瞭であり、1株で十数ものRdhAを持つDehalococcoides属細菌ならびにDehalobacter細菌について、同様の実験により新規のRdhAを同定することは困難であると判断した。これより、本年度はRdhAが局在する膜画分を分離濃縮し精製することとした。得られた膜画分について、界面活性剤を用いて膜タンパクを抽出後、ゲルろ過クロマトグラフィー分取を行い特に有機ハロゲンの脱塩素化活性が高いフラクションを回収した。活性の高いフラクションについては疎抽出液の40倍の比活性が得られたとともに、SDS-PAGEでおよそ単一のバンドを得るに至った。 第2に、これまで維持してきたTEC脱塩素化コンソーシアよりTCEをエチレンまで脱塩素化するDehalococcoides mccartyi NIT01株を分離し、ゲノム配列を決定するとともに、本株が既報にない高濃度のTCE(4.0mM)をエチレンまで脱塩素化すること、さらに1,1,2-トリクロロエタンを塩化ビニルおよびエチレンに脱塩素化することを明らかにした(特許出願準備中)。本株のRdhAの基質同定を行うにあたり大量培養方法の確立に取り組んだ結果、ガラス製ファーメンターでは嫌気度を維持できず複数回培養を試みたが全て失敗した。一方で、ステンレス製コーネリアスケグ(いわゆるビア樽)を用いて8L容量の培養物の培養を試みた結果、小スケールと同様の脱塩素化ならびにバイオマス増殖を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目はRdhAを租抽出し、大量培養が可能でRdhA抽出のための十分なバイオマスが可能なGeobacter sp. AY株を用いてNative-PAGEから知り出したバンドで脱ハロゲン化活性を見るところまでで終了した。しかし、雑多なタンパクが多く脱ハロゲン化酵素を本法で新たに同定することは難しく、バイオマスを確保し精製し同定するほうがよいと判断した。一方で難培養性であるDehalococcoides属細菌の純粋培養物の大量培養は複数回試みたものの失敗に終わり十分なバイオマスを確保することはできなかった。2年目(2018年度)に、大きな課題であった難培養性の脱ハロゲン化呼吸細菌の大量培養方法が確立し、小スケール培養物と同様に安定して培養を行うことができるようになった。さらにRdhAがSDS-PAGEでシングルバンドで検出できるほど精製できるようになったことから、新規な脱ハロゲン化酵素の同定に大きく近づいたと考える。また、純粋培養に成功したNIT01株については、民間企業と共同で、土壌・地下水の浄化事業計画の「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」の適合確認を経済産業省および環境省より取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、大きな課題であったRdhAの抽出および難培養性の脱ハロゲン化呼吸細菌の大量培養の実験方法の確立に一定の目途が立った。第一にRdhAの精製方法については、より精製度を高めるため、前段に異音交換樹脂カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことを検討する。確立された方法でAY株のRdhAが精製できた場合、この精製RDhAを用いてDCA脱塩素化の動力学的解析を行いAY株の1細胞あたりのDCA脱塩素化活性が高い要因が酵素自体の活性にあるのかrdhA遺伝子の転写ならびにRdhAの発現が活発に行われるためか考察する。 NIT01株の大量培養方法はオーグメンテーションのためのバイマス確保の点からも重要であることから, 大量培養時の脱塩素化ならび増殖を数式で示せるよう、ミカエリスメンテン式ならびに増殖収率のパラメータ決定を行いモデル式通りのバイオマス増殖が得られるか、得られない場合は要因について考察する. さらに, AY株のバイオマスを用いて確立したRdhAの精製方法でNIT01株のRdhAの同定を試みる。特にこれまでRT-qPCR解析で観察された塩化ビニル特異的に誘導・発現されるRdhAが発現される条件で実験を行い、新たな塩化ビニル脱塩素化酵素が同定されるか試みる。得られたRdhAは、LC/MS/MS同定を行う。
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Research Products
(6 results)