2018 Fiscal Year Annual Research Report
Advanced fractionation of biomass by phenol coating and the following dilute acid hydrolysis
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17H01919
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
野中 寛 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90422881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 元子 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (10580954)
秀野 晃大 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 講師 (30535711)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 木材 / バイオマス / 成分分離 / リグニン / ヘミセルロース / セルロース / フェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
p-クレゾールを担持した木粉(針葉樹・広葉樹)を,110-180℃で60分間,1.1%硫酸処理したとき,ヘミセルロースの加水分解由来の単糖類収率が最大となるのは130-140℃程度で,150℃以降では過分解により収率が減少した。一方で,60分の反応ではリグニンへのクレゾール導入が不十分であることが示唆されたため,弱酸加水分解条件を,130℃,180分間と設定した。得られた加水分解残さを0.5 mol/L NaOH,150℃,90分処理を行いリグニンの抽出を行った。針葉樹木粉を原料としたとき,得られた粗製リグニン収率は,フェノール類非担持のとき2.4%に対し,p-クレゾール担持で17.8%,2,6キシレノールの担持で24.0%と飛躍的に増加し,モノフェノール類の担持が弱酸加水分解中でのリグニンの縮合抑制,リグニン収率の増加におおいに寄与することを明らかにした。加えてリグニンの大部分がテトラヒドロフランに可溶となり,熱可塑性を示すようになった。広葉樹木粉を原料としたときは,フェノール類非担持のときは13.5%に対し,p-クレゾール担持で20.2%,2,6キシレノールの担持で24.2%と,やはり同様の効果が認められた。リグニン抽出後のパルプ中のリグニン含有率は,針葉樹において,フェノール類非担持の際50%であったのが,フェノール類担持により31%(p-クレゾール),36%(2.6-キシレノール)に改善されたものの高純度セルロースとは言えない。フェノール化リグニンを含むセルロース―リグニン複合体としての利用が期待される。一方,広葉樹ではリグニン含有率が1.8%(p-クレゾール),1.1%(2.6-キシレノール)となり,セルロース原料としての利用が期待されるものが得られた。成果は,Biores. Technol. Rep.,5,178-184(2019)にて論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,木粉にフェノール類を担持し,弱酸加水分解を行う。ヘミセルロースは加水分解,セルロースは不動,リグニンには選択的にフェノールが結合する弱酸加水分解条件を探索することが最終目標である。本年度は,130℃,180min,1.1%硫酸という条件を見出し,ヘミセルロースは高収率で単糖として得られ,リグニンは収率が大幅に増加,有機溶媒への可溶性があがり熱可塑化するものが得られるようになったため,順調に進展しているといえる。一方で得られるセルロースについては,針葉樹はリグニン含有率が高く,広葉樹は高純度と呼べるものを得ることに成功したが,低収率であることが明らかになった。これは弱酸加水分解を受けたセルロースが低分子化され,アルカリ抽出されやすくなったことによる。よってより緩和なアルカリ抽出条件を検討するか,有機溶媒によりリグニンを抽出し,セルロースの高収率化が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の手法で成分分離したリグニン,セルロース,あるいは,セルロース―リグニン複合体の活用を検討するにおいて,実験スケールを大きくし,サンプル量を増やす必要がある。当初H30年度に購入を予定していたが価格面で購入できなかった4リットルのステンレス製反応容器を,H31年度に購入し,リグニンの樹脂化,セルロース(あるいはセルロース―リグニン複合体)のナノファイバー化の研究を加速する。
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Research Products
(8 results)