2018 Fiscal Year Annual Research Report
里海創出を目指した都市海の「小わざ」と「ふるさと化」に関する実証研究
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17H01921
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上月 康則 徳島大学, 環境防災研究センター, 教授 (60225373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 和之 阿南工業高等専門学校, 技術部, 技術職員 (40623260)
山中 亮一 徳島大学, 環境防災研究センター, 講師 (50361879)
大谷 壮介 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60554219)
田代 優秋 和歌山大学, COC+推進室, 特任助教 (90467829)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 過栄養 / ワカメ / 運河 / チチブ / ルイスハンミョウ / 海浜 / ヤマトオサガニ / 干潟 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.富栄養化した港湾での直立護岸を利用したワカメ藻場創出(尼崎港):護岸を活用してワカメを栽培する方法を見いだすことはできた.しかし,近年は,ワカメの種糸を設置し,幼葉から生育させることは困難であることがわかった.原因は,①温暖化による冬期の降雨量が増え,港内が低塩分化すること,②水温が低下しないために海藻食の魚類が港内に居つき,食害することであることがわかった.その影響を回避するためには,葉長30cmまでは概要で育て,それを港内に設置すると約3か月で1mほどに生長することがわかった. 2.全層貧酸素化する尼崎運河での魚類避難場所の創出(尼崎運河):慢性的に貧酸素化した運河で生物生息場の特性を見いだすことができた.尼崎運河で通年確認できる魚種チチブを対象に,貧酸素時,または底層から表層まで全層にわたって貧酸素化するときにも,空隙のある構造物を水面付近に設置すると避難場所としてチチブは利用することを見いだした. 3.絶滅危惧種ルイスハンミョウの生息する海浜の創出(沖洲人工海浜):生息場の代替手段として人工海浜を整備したが海浜の変動が大きく,ルイスハンミョウの生息場所として不適当であることがわかった.小さな技で海浜の変動を抑制しようとしたが困難であった.原因には,規模が小さいこと,砂の供給がないことなどやその対策を考案することができた. 4.公園内での泥干潟創出とその学習方法(あらい浜風公園):海の公園内でヤマトオサガニが生息する泥浜干潟を創出することができた.地盤高さが高いために高水温化し,カニの活性を低下させること,またその対策を考案することができた.また来園者に,同種の生態観察や干潟の魅力を感じさせるために,VRなどのIT機器を使った学習プログラムの開発を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由から,本研究は計画通り概ね順調に進んでいると評価できた. (1)ワカメの栽培では,都市の湾奥で栽培することの方法と課題を明らかにすることができた.また,協働で行っている地元中学生は,活動への誇り,地球環境問題の解決に向けた一助となっていることを理解し,市民のふるさと意識の醸成を育みつつある.例えば,地元中学校は,(一社)地球温暖化防止全国ネット主催の低炭素杯2019でワカメ堆肥を使った活動で,環境大臣賞金賞を受賞するように,高い社会的評価を受けている.成果は講演発表3件にまとめた. (2)尼崎運河での,避難場所の創出については,室内と現地実験によって具体的な構造の特徴を見いだすことに成功した.成果は査読付き論文1編,講演発表1件にまとめた. (3)ルイスハンミョウの生息地のための海浜の創出では,10年間のモニタリングをとりまとめ,同種の生物が定着できない原因を特定することができた.その知見を活かして,海浜の再造成の計画を立案し,事業主体である徳島県に提案することができた.また月1回,地元学童の児童に向けた人工海浜などでの同種の保護を目指した環境学習会を実施し,海浜へのふるさと意識を醸成させている.成果は査読付き論文2編,講演発表2件にまとめた. (4)公園内での泥干潟は,ヤマトオサガニが生息できる環境を整えることに成功した.また現在,ヤマトオサガニを観察し,ふるさと意識を醸成させるための新しい視覚教材の開発を行っている.成果は講演発表3件にまとめた.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ワカメの栽培では,富栄養化した港湾での栽培方法を見いだしたので,今年度からはそれらの知見を発展させて,貧栄養化した海域でのワカメ養殖を支援する方法を検討する.具体的には,徳島県小松島市和田島町でたい肥を使ったワカメ栽培に取り組む.実施にあたっては,和田島町漁業協同組合に協力いただく. (2)尼崎運河では,避難場所の構造特性を生かした実用可能な構造物を考案し,実証実験を行う.実施にあたっては,兵庫県に協力してもらい,五洋建設(株)と共同で実施する. (3)ルイスハンミョウの生息地のための海浜の創出では,徳島県と共同して,知見を活かして海浜を再設計,造成をし直すことを考えている.造成後はその効果をモニタリングする. (4)公園内での泥干潟の創出研究では,ふるさと意識を醸成させるための新しい視覚教材を兵庫県と共同開発する.
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] 干潟健全度指数を用いた大阪湾の干潟のサービスの定量化 -東京湾と大阪湾の比較による干潟のサービスの特徴の把握-2018
Author(s)
岡田 知也, 三戸 勇吾, 菅野 孝則, 高橋 俊之, 秋山 吉寛, 黒岩 寛, 遠藤 徹, 大谷 壮介, 矢持 進, 上月 康則, 日下部 敬之, 大塚 耕司, 山中 亮一, 重松 孝昌, 中野 和之, 宇城 真, 桑江 朝比呂
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Journal Title
土木学会論文集B2(海岸工学) 2018年 74 巻 2 号 I_1417-I_1422
Volume: 74
Pages: I_1417~I_1422
DOI
Peer Reviewed
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