2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study of behavioral economics analysis of environmental comunication by using construal level theory
Project/Area Number |
17H01928
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
山本 充 小樽商科大学, 商学研究科, 教授 (30271737)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 謙太郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (30344097)
高橋 義文 九州大学, 農学研究院, 准教授 (60392578)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 解釈レベル理論 / 二段階モデル / 心理的距離 / ベスト・ワースト・スケーリング / 行動経済学 / 次世代自動車 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度において広瀬の二段階モデルの行動意図形成段階では、心理的距離が小さい場合に行動に伴う費用や行動結果がもたらす損失面の評価が高まることが環境配慮行動としての環境配慮米の購買行動で見られた。この結果を受けて、Fujita et al.(2006)の方法により心理的距離を小さくする(解釈レベルを低レベル解釈に)操作する実験群と、無操作の対照群に被験者を分けたWEBアンケート調査を実施した。環境配慮行動としては、エコカーなどの次世代自動車の購入行動を取り上げた。 その結果、実験群の心理的距離を小さくする操作は有効に機能し、心理的距離の大きさを表す行動認識尺度(BIF)は実験群で有意に小さくなっていることが確認され、心理的距離を小さくする低レベル解釈操作が有効に機能した結果となった。調査結果では、低レベル解釈が環境に優しい自動車選択行動において価格と燃費というコスト面の重要度評価を増大させることとなり、行動の実行可能性評価において損失回避性が選択行動に強く作用することが検証された。一方、実験群ではCO2削減と最大走行距離という便益面の重要度は低下していることも確認された。このような損失と便益に対する評価の違いが最終的なエコカー選択行動に影響し、実験群では対照群よりもハイブリッド車や電気自動車などのエコカーの選択可能性がガソリン車よりも高くなることが明確となった。 こうした選択肢の損失面と便益面に対する評価の差がエコカー購入行動では環境配慮を損なわずに意思決定されることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エコカーの購入選択行動において心理的距離を小さくした低レベル解釈操作を施した実験群では、無操作の対照群よりも損失面を高く評価し、便益面を低く評価することが明らかとなった。この結果は、心理的距離が小さくなると損失評価のウエイトが増加することを裏付けるものとなった。また、自動車購入という選択行動は何年かに一度行うという頻度の意思決定であることと、その結果がもたらす損失の大きさも大きい。このため回答者は、慎重な判断を行ったと考えられ、その意味では現実的な選択行動としての結果が得られたと考えられる。しかしながら、食料品の購入のような日常的な選択では、環境配慮の態度は示すものの、小さな損失に対して過大な反応を示すというプロスペクト理論の感応度逓減性を裏付ける行動ととり、環境配慮行動の実行に躊躇する行動が見られることも事実であるため、こうした選択対象の違いによる解釈レベルの影響度の差を確認しなければならないことも課題となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
エコカーの選択行動については二段階モデルは適用せずに低レベル解釈の選択行動への影響を確認した結果、エコカー選択行動では結果的に環境配慮行動を大きく阻害することは確認されなかった。一方、日常的な選択行動であるお米の購入行動では心理的距離が小さい低レベル解釈が環境配慮行動による損失評価のウエイトを増大させて行動意図の形成を阻害していることから、行動評価においても行動の望ましさ評価を低下させること無く行動選択させることが重要となる。そこで、チャルディーニの法則を援用した説得文を提示するコミュニケーションを行うことで、環境配慮行動の選択における解釈レベルが低レベルであっても行動の望ましさに対する評価を保持できることを検証する。
|