2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Virtual Draping System in Which Users can Operate as in the Real World
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17H01955
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
乾 滋 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10356496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀場 洋輔 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (00345761)
高寺 政行 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10163221)
召田 優子 長野工業高等専門学校, 電子制御工学科, 助教 (20757893)
金 キョンオク 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (30724885)
宮武 恵子 共立女子大学, 家政学部, 教授 (40390124)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 立体裁断 / 仮想化 / 衣服 / 型紙 / AR / 着装シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は立体裁断の仮想化を目指している.衣服の製造工程は,デザイン画の描画,デザイン画に基づいた型紙の作成,生地の裁断によるパーツ作成,パーツの縫製による組み立て,などから構成されている.この中で本研究では主に型紙設計の部分を扱う. 立体裁断では適当な大きさに切った四角い布片を人台などに当て,必要に応じて切れ目を入れて立体形状である人台表面に沿わせる.型紙部分のマーキングを行い平面に展開することで型紙形状が得られる. 立体裁断を仮想空間内で行うためには,立体裁断の要素をモデル化することが必要である.これまでに布,手,人台などシステムの構成要素をモデル化した.布は質点とばねとでモデル化され,力学的な数値計算によって形状が計算される.布モデルの操作については,現実世界での手指の動きをセンサによって捉え,その動きを仮想空間の手のモデルの動きに反映することで実現している.人台モデルは布モデルを当てる土台であり,実物の形状計測データより作成する. 2018年度は基本的な仮想立体裁断システムをARシステムとして構築した.これまではディスプレイ上に画像を表示するシステムであり,布モデルを手のモデルで操作することだけができるシステムであった.このシステムでは,人台モデルに布モデルを沿わせ,ダーツを入れて型紙を製作する機能は備えていなかった.今回はディスプレイ表示のシステムをAR環境に移植した.また,上記の機能を追加することで,システム内で型紙作成の手順を完結できるシステムとした.さらに,このシステムで作成した型紙に基づいて現実の衣服を作成し,人台に着装することによってシステムの検証を行った.その結果,妥当な形状の衣服を作成できることが確認された.また同時に,ダーツや型紙の輪郭線の形状など,改良が必要な事項を認識することができた.今後は,これらの改良点についてシステムの更新を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 “研究実績の概要”の項で述べたように,これまでに布,手,人台などシステムの構成要素が個々にモデル化されている.システムはAR(バーチャルリアリティ )環境の中に構成されるので,これらの要素を組み込む作業を進めており,ほぼ計画に沿って推移している. 仮想立体裁断の基本的な拡張現実システム(ARシステム)を構成した.このシステムのユーザはヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し,仮想空間内で矩形の布モデルからペンシルスカートの型紙を作成することができる.はじめに矩形の布モデルを人台のモデル表面に写像する.さらに、写像された布モデルのダーツ部分は,ベジエ曲面を用い布モデル本来の長さとなるように浮き上がらせる.布モデルのこの浮き上がった部分を,手のモデルによって操作してダーツを取る.布モデルの不要な部分を切り取り,布モデルを平面に展開することによって型紙の形状を得ることができる. このシステムでは現実世界の手指の動きを捉えるインターフェースとして,手指専用のモーションキャプチャシステムを用いている.このシステムには赤外線カメラも備えられているため,これをHMD内に投影することで簡易的なARを実現している.しかし,仮想空間内に人台のモデルが表示されていても、システムの操作時に手指の動きに制約がないと,操作中に手指のモデルはいくらでも人台モデルを突き抜けて動くことができる.そのため,昨年度から現実の人台を設置し,手指の動きを制限する事を検討してきた.現システムの手指専用のセンサは赤外線を用いているため,前方に人台が存在すると赤外線の反射の影響で,手指の動きの検出に支障をきたすことが判明した.そのため,グローブ式のセンサを用意し,これを用いて操作性の向上したシステムの構築を試みている.以上より2018年度は全体的にほぼ計画に沿って研究が進められている.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように2018年度には立体裁断の基本的なシステムの構築を行った.しかし,現状では特定の服種(ペンシルスカート)の作成しか行うことができない.本システムで様々な服種の作成を可能とするために,システムの拡張が種々必要である. 第一に,布モデルの操作性の問題がある.これにはいくつかの要因が関係している.ひとつには,布の特性の問題である.布モデルは現実の布と比較すると柔らかく感じられる.この解決のためには,力学計算の高速化が必要であり,計算法やアクセラレータの利用などの検討が必要である.他の問題は,ダーツなどの操作時の精度である.本システムの操作精度は布モデルのメッシュの細かさに依存する.操作の状況に応じたメッシュサイズの動的な変更の検討が必要である.さらに他の問題として,上記の現実と仮想の人台の重ね合わせがあり,これを実現することによって操作性の向上が期待される. また,現システムではダーツの設定は特定の場所の特定の方向に限定されている.衣服設計においては,服種によって様々な位置や方向にダーツを設定できることが必要である.本システムにおいてもこれを一般化する必要がある.そのためには,人台の基準線の設定や,布モデルの配置を一般化する必要がある.さらに任意の位置や方向にダーツを設定するためのインターフェースも必要となる. さらに型紙の外形の輪郭線を決定する方法を定める必要がある.上衣の場合には襟周りや袖周り,下衣の場合には股部分で型紙を切り取る必要があるが,現システムではこれらに対応していない.そのためには,人体基準点,袖ぐり・襟ぐりなどの線の決定方法,型紙の切り取りと展開方法などの決定と実現が必要となる.そのためには先ず,人台に肩先点などの人体上の特徴点の位置を決定し,襟ぐりなどの線を定義する方法を定め,それらに沿った機構をシステムに組み込むことが必要となる.
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