2018 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル対応型STEM高等教育の国際比較を通した頭脳循環プログラム開発研究
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17H01986
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山田 礼子 同志社大学, 社会学部, 教授 (90288986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 拓也 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (40452304)
杉谷 祐美子 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (70308154)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | STEM / グローバル・コンピテンシー / 日米中3か国調査 / 科学技術政策 / 国際比較 / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年は、アメリカへの訪問調査を実施した。2年間の訪問調査結果を参照しながら、2018年度は日米中の3か国を対象にウェブ調査を実施した。具体的には、知識基盤社会においては、STEM人材は、イノベーションとの関連性からもグローバル労働市場での移動もより流動化すると予想し、STEM人材に求められるグローバル・コンピテンス(以下GC)を多様な人々と議論、協働して問題を発見し、解決していくスキルと定義した。その上で、(1)STEM分野の21世紀型教養を含む学習成果とは何か?(2)イノベーションと国際移動(循環)を前提としたグローバル労働市場で求められるスキルと学習成果の関係性は?という2つの問題設定をベースに、大学等研究機関を除く企業等で現在働いている日米中の社会人を対象に、大学・大学院で学んだ学習と現在の職業とのレリバンス、学生時代の海外経験と現在の職務内容とのレリバンス、職業を通じてのGCの醸成等の共通性、差異について比較検討することを企図した。その際、日米中の大学・院の属性をワールドクラス研究大学、研究大学、総合大学群に分類した分析軸の統制により3ヵ国の国際比較を実施することを想定し、分析軸を作成した。具体的な調査は、日米中のSTEM関連の学位(学士・修士・博士)取得者でかつ高等教育機関以外の企業や研究所等で現在就業状況にある30~40代(各年代50%)を対象にした。2019年1月下旬にウェブ調査(インターネット調査会社経由モニター調査)を実施した。日本と米国は全国規模で実施し、中国は北京と上海の在住者を対象にした。日米中で2472名(日本:1030名、米国:721名、中国:721名:男性1966名、女性506名)が回答した。現在、分析中でその内容については2019年5月の日本高等教育学会と6月大学教育学会での発表が採択されたため、公表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに進展している。初年度は主に各国のSTEM高等教育政策と科学技術政策の関連性を探るため、シンガポール、台湾、オーストラリアに訪問調査を行った。2年目は、引き続きアメリカの訪問調査を行い、STEM高等教育プログラムの実際と教師育成プログラムについての知見を得ることができた。並行して、リーディング大学院プログラムの文理融合プログラム等の訪問調査も行った。こうした知見を基に日米中の3か国のSTEM分野の大学・院卒の企業等で働く30~40代を対象に、大学時代のSTEM教育とグローバルコンピテンスの関係、現在の仕事への効果、現在の仕事に関して求められるグローバル・コンピテンス等を把握するべく、調査を実施した。現在、データを分析中であるが、このデータをもとに、STEM分野のグローバルコンピテンスの取得を可能にするような教育プログラムモデルの開発を計画している。その基礎となるようなデータが得られており、今後の開発研究へとつながると予想している。また、研究会へのゲストスピーカーの招聘により、日本の工学教育が抱えている課題等についても把握することができ、こうした知見も今後の開発研究へとつながるという認識を持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に実施したSTEM3か国調査の詳細なデータは現在分析中ではあるが、暫定的な分析結果として、以下のような知見が得られている。「STEM分野においては比較的3か国の共通性が担保されている。それを前提に結果を見ると、中国の高等教育の90年代以降の急速な国際化やグローバル化に対応するべく改革の現状が結果にも反映されていること、米国では大学分類による収入・学位取得の差があるものの、大学・大学院の教育内容は、大学のレベルによらず、ある程度共通した学修経験を積ませ、それが成果として表れていることが読みとれる。一方、日本においては専門分野の知識等の役立ち感は高いが、GCの経験と習得においては高くない現状が浮き彫りになっている。米国との差異としては、特にGCに関連して大学分類間に差がみられることである。30代・40代という世代の回答をベースにしているが、STEM高等教育分野でのグローバル化に関する機能分化が既に進んでいたとも解釈できよう。」このように、3か国調査では、日本のSTEM教育のグローバル・コンピテンスの習得が30代・40代の場合、米中よりも低い結果が出されている。大学改革が進捗する以前でもあり、今後の開発研究において、更に検証していく必要があるが、グローバル化対応型の大学教育に必ずしも相当していないのは、STEM分野だけの問題なのかという新しい課題が浮上しており、日本の人文社会科学の場合を検証する必要性という議論が研究会の中で浮上している。そこで、当初の研究計画には入れてはいないが、2019年度は対象群として、人文・社会分野のグローバルコンピテンスの習得状況についての調査の付加を視野に入れることを模索している。それらを踏まえて、グローバルコンピテンスに効果のある頭脳循環プログラムモデルの開発へと進む予定である。
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Research Products
(12 results)