2018 Fiscal Year Annual Research Report
「科学の有用性」を実感し科学的能力と科学的態度の育成を目指す学習モデル研究
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17H01988
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 顕一 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50549368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 克治 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10284449)
二井 正浩 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (20353378)
高橋 三男 東京工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (40197182)
生尾 光 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50159589)
松尾 知明 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (80320993)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学の有用性 / 相互評価 / 新学習指導要領 / 表現力育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は順調に進められている。成果の発信,公表としては,これまでの取組を基に日本理科教育学会全国大会岩手大会課題研究「資質・能力の育成を目指した学習活動と評価―相互評価表を活用した学習活動を通して―」を開催した。ここでは,資質・能力の育成を目指し,科学の有用性における評価場面の価値と可能性について研究成果及び進捗状況を報告するとともに議論を深めた。報告では,一層,段階性,系統性を意識しながら,これまでの実践の検証を基にしたさらなる研究成果と進捗状況,課題等を報告した。また,各発表者が属するそれぞれの学校段階,特性に合わせた実践と成果とにより,共通性と固有性の双方の視点から議論を深め,成果と課題を明らかにするとともに,今後の研究の方向性についての確認ができた。 成果報告では,後藤から趣旨を説明した後,目的に沿った議論を展開した。続いて,中学校の事例として,熊田憲明氏から,中学校理科第一分野での事例を基に,探究の過程に相互評価を導入することによる表現力の育成についての報告があった。高等学校の事例として,北川輝洋氏から,相互評価表を活用した思考力・表現力の育成についての報告があった。また,生田依子・真井克子両氏より,SSH校の事例として,学習意欲を高めるSSH「探究科学」の評価について報告がなされ,SSH校における科学の有用性を伸ばす方略についての報告があった。さらに,伊藤克治氏から小学校教員養成課程における科学の有用性に資する評価活動の大学生の事例が紹介された。また,上村礼子,飯田寛志両氏より資質・能力の育成を目指した科学の有用性の測定法,検証法の提案がなされた。その後,総合的な議論を展開し深めることができた。 教材内容,学習活動との依存性が高いので,さらに教材開発や授業PDCAの確立と科学の有用性の関係を明らかにする必要性があることを示すことが出来,さらなる本研究の進展に繋げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は,段階性,系統性を意識しながら,これまでの実践の検証に重点を置いたが,各学校種段階(小学校・中学校・高等学校・大学)において,当初計画で提示し,検証し続けている相互評価表を用いた学習活動を行うことが科学の有用性に寄与していることが明らかになってきている。また,SSH校などこれからの我が国の科学技術を支える意欲の高い生徒にもさらなる成果が検証できている。 科学の有用性のうち,特に育成すべき資質・能力の柱の一つである表現力の育成とその評価に焦点を当てて研究を推進している。表現力の育成に向けては,表現力と関わりが深い自己効力感を高めていく必要があり,自己形成における信頼できる自己評価観の確立が不可欠である。自己評価観の確立に向けては,学校教育における学習活動と評価の変革と,それを通じた評価観の変革が求められる。新学習指導要領が目指す方向性を実現していくためには,伝統的といわれてきた従来の教授主義的な学習活動を超えていく必要があるのは変わりのないことである。そのため,さらに「探究」と本活動を結びつけながら成果を模索し続ける必要性を感じており,研究はさらに発展していく機運に満ちている。 そこで,本研究では,「学習としての評価」の理論に基づいて,段階性,系統性を意識しながら,表現力の育成を目指し,学習過程に評価活動,特に「相互評価」の学習活動を内包した学びを構想し,授業実践を行い,実証的な検証や検討を進めていく。さらに,中学校,高等学校,大学の教員養成課程の対象者における理科(化学分野)を中心に、「学習としての評価」を具体化する実践を行い,分析と考察を通じて、実証的な成果と課題を明らかにし,さらなる改善を加え,具体的かつ実効性のある評価法のモデルについての議論を深めることを目的とする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めるためには,継続的な視点での検証を試みるとともに,新学習指導要領での「社会に開かれた教育課程の実現」を目指し,さらに具体的な育成すべき資質・能力を段階的,系統的に明確にするとともに,その具体的な育成に向けた学習活動,さらには評価を明確に示すことが必要である。中学校学習指導要領(平成29年告示)解説理科編には,中央教育審議会答申の資料を基にした「資質・能力を育むために重視すべき学習過程のイメージ(高等学校基礎科目の例)」が掲載されており,「対話的な学びの例」として,「相互評価」が示されている。このように「高等学校基礎科目の例」が「中学校」の学習指導要領解説に示されていることは,学びの系統性への表れであるといえよう。しかし,「相互評価」を学習活動に結び付けていく具体的かつ有効な取組についてはさらなる具体的な研究の推進が必要であり,継続的に検証を続ける。また,学校での負担感軽減を含めて取組活動を軽減しつつ,成果を上げるためにどのような工夫が必要かをさらに検証し続ける必要がある。最終年度は報告書にまとめ,さらに継続的,発展的な研究につなげていく所存である。
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Research Products
(20 results)