2017 Fiscal Year Annual Research Report
多様な障害のある受験者への合理的配慮を実現する試験出題システムの開発
Project/Area Number |
17H02005
|
Research Institution | The National Center for University Entrance Examinations |
Principal Investigator |
南谷 和範 独立行政法人大学入試センター, 独立行政法人大学入試センター, 准教授 (90551474)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 哲也 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10342958)
永井 伸幸 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (50369310)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 入試研究 / 障害者支援 / 支援技術 / 合理的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に当たる今年度は、前半半年間に研究全体の方針構築―多様な障害のある受験者への合理的配慮を実現する試験出題システムの機能及びUI用件の総合的定式化―を行った後、後半に開発・評価サイクルの第1期に当たる「実用レベル試験閲覧アプリ」の初期開発の前半部半年を実施することを計画した。おおむね当初の計画通りに推進することができた。 今年度の中心課題であった試験閲覧アプリの初期開発に至る諸課題を、大きな欠落なく推進できた。当初検討点として想定した要件それぞれへの対応は以下のようになった。 (1)国内の大学入試で多用される大問形式長文問題の効率的な閲覧を重視することから、文字の大きさや書体、配色の柔軟な変更に対応した。リフロー表示(多段階倍率拡大)に対応した。 (2)コンテンツ(試験問題)の読み間違いのない日本語音声読み上げを実現した。 (3)表示された試験問題の任意の箇所をタップすると即座にその部分を読み上げる機能を実現した。 (4)縦書きに対応した。漢文等で用いられる変則的レイアウトについては、漢文問題の出題の可否というより基礎的な問いが浮上し今回は実装を見送った。 (5)マークシート形式問題、短文記述式問題いずれの試験にも対応した。 (6)試験問題中の任意の箇所へのメモ書き、ボイスメモの付与機能については、開発・評価サイクルの第2期での対応を検討することとした。 他方で、当初検討点として想定しなかった重要課題も浮上した。大問形式長文問題の効率的な閲覧には、長文中の下線部とそれを取り上げる質問の間などを直接的に行き来できる閲覧環境の実現が求められる。今回、ウェブにおけるハイパーリンクに相当する記法を用いてこうした2点間の行き来を実現した。こうした記法を取り入れたコンテンツ制作の作業負担が重大であることが判明した。これを解消すべく編集ソフトウェアの開発を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、開発・評価サイクルの第1期前半を終えるところまでを目標として設定したが、これはおおむね達成された。部分的には第1期後半の課題への着手、第2期課題の先取りもできた。 中心課題であった試験閲覧アプリの初期開発は、関連する所内研究から得た好影響もあり、想定以上の進展を示した。加えて、試験問題電子データ編集ソフトウェアの改修を行った。この改修作業は当初計画したものではなかったが、年度内で問題の定式化とそれに応じるプログラム開発を完了することができた。概して、開発に関わる課題は期待以上の進捗を示している。この進捗により今後の使用評価(モニター調査、フィールドテスト)実施の効率化が期待できる。 他方で、今年度予定した進捗が必ずしも確保できなかった課題や、当初想定しなかった課題も浮上した。以下3点について述べる。 (1)漢文等、読みを伏した形での漢字表示を大前提とした出題では、本文に音声を付与することで問題が成立しないことが往々にしてある。このような場合には、出題形態の変更に踏み込んだ検討が必要となる。 (2)先行して着手した個別モニター調査から、障害のある受験者による使用評価(モニター調査、フィールドテスト)を当初の計画以上に充実させるべきであることが確認された。 (3)今年度計画していた欧米における組織化された障害受験者配慮の実施状況の調査が、研究参加者間での日程調整不調のために実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下、上記自己点検の理由中に示した課題の番号を付して、それぞれの推進方策を述べる。 (1)本文に音声を付与することで問題が成立しない場合、出題形態の変更に踏み込んだ検討を行う。この場合、問われる内容の同等性の保持や、問題としての同難易度の維持が課題となる。日本語点字はカナ分かち書きを採用しており、表現メディアの特性としては音声に近い。そこで、過去の各種試験問題の日本語点字出題における代替問題の利用例を調査し、これらを参考に検討を進める。 (2)障害のある受験者による使用評価を以下の2系統の携帯で行う。 a.モニター調査: 教育や就労の場におけるタブレットデバイスの使用経験が豊富な障害者を対象として、個別に試験問題閲覧環境の評価を行う。 b.フィールドテスト: 障害のある学生・生徒が在籍する実際の教育現場で、当該学生・生徒や試験・テストを担当する職員の協力を得て実践的な検証を行う。 これら2系統の使用評価を十全と実施できる体制構築のために、研究分担者2名を増員する。両名はa.b.それぞれを主担するものとする。 (3)対象と担当者を精選することで実施可能性を確保する。スコットランドの全国統一テストにおける拡大表示・音声読み上げ機能をサポートした試験出題システムの視察・調査に焦点を合わせ実施する。調査課題の主担当者を決め、彼らの都合を優先して日程調整を行う。
|
Research Products
(8 results)