2017 Fiscal Year Annual Research Report
雁皮紙および三椏紙の超長寿命化のためのヘミセルロースの役割の解明
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17H02012
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
稲葉 政満 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (50135183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 啓子 (貴田啓子) 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 助手 (20634918)
勝亦 京子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (70313319)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 和紙 / 耐久性 / ヘミセルロース / 柔細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
保存性の観点からは無視されてきたヘミセルロースが紙の保存性にどのように寄与し、あるいはしないのかを、雁皮および三椏を例として取り上げた。 雁皮を炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムの2種により煮熟した。同時に煮熟した試料の半分はフラットスクリーンを用いて、柔細胞をできるだけ除去した試料も作成し、除去していないものと併せ計4種の雁皮紙を作製した。製造した4種の雁皮紙の酸性劣化および酸化劣化挙動を検討する目的で、雁皮紙を硫酸鉄溶液(低濃度、高濃度)あるいは硫酸溶液(硫酸鉄溶液のpHに合わせる)にそれぞれ浸漬後乾燥させる。これを湿熱劣化(80℃、65%rh、4週間)処理する。前者の硫酸鉄溶液は酸化と酸加水分解を、後者の硫酸溶液は酸加水分解のみの影響を評価するためである。 強いアルカリである苛性ソーダで煮熟した雁皮紙は、硫酸鉄処理により鉄イオンの影響を大きく受け、酸化度は増加し、諸物性値も大きく変化した。また同じ初期pH条件下で、硫酸処理を行った雁皮紙では、酸化度は小さく、諸物性値の変化も小さかったことから、鉄イオンが酸化反応を触媒し、雁皮紙の劣化を引き起こすことが確認された。また、スクリーン処理を行った試料では、柔細胞が減少し劣化が促進されると思われたが、今回試験した範囲では、その変化が顕著には見られなかった。しかし、分子量分布や中性糖など、一部の測定結果ではスクリーン処理による劣化の促進が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雁皮紙に関する酸化劣化試験は順調に終了している。しかし、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)でのセルロースの酸化部位の分析に関しては、蛍光検出器を導入したが、蛍光ラベル化剤の選定が長引いており、予備実験が終了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の雁皮紙に対する評価に続いて、三椏紙についても同様の検討を行う。すなわち、三椏を炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムの2種により煮熟した。同時に煮熟した試料の半分はフラットスクリーンを用いて、柔細胞をできるだけ除去した試料も作成し、除去していないものと併せ計4種の三椏紙を作製した。製造した4種の三椏紙の酸性劣化および酸化劣化挙動を検討する目的で、三椏紙を硫酸鉄溶液(低濃度、高濃度)あるいは硫酸溶液(硫酸鉄溶液のpHに合わせる)にそれぞれ浸漬後乾燥させる。これを湿熱劣化(80℃、65%rh、4週間)処理する。前者の硫酸鉄溶液は酸化と酸加水分解を、後者の硫酸溶液は酸加水分解のみの影響を評価するためである。 繊維細胞からの柔細胞の分離に関しては篩分器を導入し、柔細胞分離に用いる篩の目の大きさについて予備的な検討を実施する。 ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)については、蛍光ラベル化剤を用いたカルボニル基およびカルボキシル基の多糖中での分布について検討を行うために、市販の蛍光ラベル化剤を用いて予備的な検討を行う。
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Research Products
(1 results)