2017 Fiscal Year Annual Research Report
予防安全に向けたシステムの強靭性分析手法に関する実践的研究
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17H02045
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
狩川 大輔 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40436100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 信 東北大学, 工学研究科, 教授 (00243098)
大橋 智樹 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (00347915)
青山 久枝 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 主幹研究員 (40392790)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 認知モデリング / 認知タスク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
FRAM(Functional Resonance Analysis Method)を用いた飛行場管制業務の記述手法の開発に向けて、(1)管制官の認知・判断プロセスに関するインタビュー調査、ならびに(2)インタビュー結果のFRAMモデル化と記述手法の検討を行った。 (1)に関しては、調査対象の空港における飛行場管制業務を担当する管制官の各役割(飛行場管制席、地上管制席、管制承認伝達席、調整席、統括席)のうち、インタビュー調査を未実施だった統括席の業務に関する聞き取りを行った。統括席は、他4席の業務状況を客観的な立場からモニタリングし、適宜支援を行うなど、チームパフォーマンスの信頼性を維持する上で重要な役割を果たしていることが確認された。また、平成30年度に実施する予定のFRAMモデルの妥当性検証におけるモデルケースとして使用するために、空港周辺における交通状況とそれに対応する管制官チームの行動を管制現場において記録するための手法の検討ならびに試行的なデータ収集を行った。 (2)に関しては、まず、各席の業務に関するインタビューデータに基づいて、管制業務に共通する特徴であるマルチタスクを成功裏に行う上で必要とされる7つの認知的能力を指標として抽出し、その妥当性に関して管制官による予備的なレビューを受けた。次に、それらの7つの能力が発揮されるために必要な認知的機能とその関係性を検討し、FRAMを用いたモデルとして記述した。当該FRAMモデルは「マルチタスクの実行」という観点に絞ってモデル化を行ったものであるが、複雑なフィードバック構造を有しており、ある機能のパフォーマンスの揺らぎが他の機能に再帰的に伝搬していく可能性を示唆していると考えられる。次年度以降、具体的なモデルケースにおけるタスク処理プロセスとその変動をFRAMモデルを用いて分析することを通じて、モデルの妥当性検証と改良を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の目標は、(1)FRAMを用いた飛行場管制業務の記述手法の開発、(2)FRAMモデル可視化・分析支援ツールの開発の2点である。 (1)に関しては、動的状況下で複数の航空機を同時に扱うためにタスクの実行プロセス(実行の順序やタイミング)が状況に応じて変化する航空管制業務をどのようにして一般的なモデルとして記述するかという点が困難であり試行錯誤したが、管制業務に共通する特徴であるマルチタスクを可能にしている認知的機能とその関係に着目してモデル化を行うことによりFRAMモデルとして記述することができた。従って、(1)に関しては、概ね計画通りに進捗しているものと考える。 (2)のFRAMモデル可視化・分析支援ツールの開発については、既存のFRAMモデル作成・可視化ツールの機能が相当程度改善されていることが確認されたため、効率的・効果的に研究を進める上で、以下のような対応を行った。 - 平成29年度実施項目であるFRAMモデルの作成は既存ツールを用いて行った。 - 本研究で新たに開発するツールは、今後実施するFRAMモデルの管制官との共同レビューやシステムの強靭性分析の計画・実行結果を踏まえて既存ツールでは機能的に不足する部分を特定した上で、それらの点の補完に特化したツールとして平成30年度に構築を行う。 以上のことから、(1)については概ね計画通りに進捗しているが、(2)を当初計画よりも遅れて実施することとしたため、表記のような判定を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
飛行場管制業務のFRAMモデルの評価・改良については、空港を訪問しての現地調査やインタビューを通じた評価の実施はその頻度に関して制約があるため、別途、元・管制官等の協力を得ての予備評価などを実施し、効率的に進める。 また、FRAMモデルの妥当性・有効性を詳細に評価する上では、現実的なモデルケースを用いた分析の試行が必要となる。その基礎データとして用いるために、空港周辺における交通状況とそれに対応する管制官チームの行動を観察・記録するための手法の検討ならびに記録の試行を行ったが、十分なデータの収集は困難であった(航空保安上の理由から、管制現場におけるビデオカメラや録音機材の使用は不可である)。そこで、平成30年度は、航空機の位置測位システムのデータと管制現場における行動記録等をもとにモデルケースを作成できるよう準備を進めている。 FRAMモデル可視化・分析支援ツールの開発については、上述のとおり、既存のFRAMモデル作成・可視化ツールの機能が相当程度改善されていることが確認されたため、今後実施するFRAMモデルの管制官との共同レビューやシステムの強靭性分析の計画・実行結果を踏まえて既存ツールでは機能的に不足する部分を特定した上で、それらの点の補完に特化し、効率的に開発を行うこととした。
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