2017 Fiscal Year Annual Research Report
実フィールドでの構造物劣化診断に向けたバイブロレーダ鉄筋腐食評価システムの創出
Project/Area Number |
17H02047
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
三輪 空司 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (30313414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 伸幸 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (60435493)
小澤 満津雄 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80313906)
迫井 裕樹 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30453294)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄筋腐食 / 非破壊検査 / 電磁波レーダ法 / 維持管理 / 加振 |
Outline of Annual Research Achievements |
RC 構造物の維持管理ではコンクリートのひび割れ、剥離の主要因となる鉄筋腐食の評価、進行予測が重要となる。しかし、現状では鉄筋の腐食を簡易かつ迅速に非破壊判別可能な検査法は提案されていない。そこで、鉄筋探査法として有力な電磁波レーダ法に着目し、UWB レーダイメージングによる鉄筋腐食評価法(研究A)、及び励磁コイル加振を援用したドップラレーダ法を用いた鉄筋微小振動変位計測による鉄筋腐食評価法(研究B)という新規な二つの研究を融合した『加振レーダイメージング技術』を創出する。本研究により、鉄筋腐食進展期から劣化期までの腐食ステージを判別可能な評価システムを構築し、実フィールドでの実証実験を通じて本手法の有効性を明らかにすることが目的である。本年度は、実フィールド計測に向けた4 cm 程度までの鉄筋かぶりでの加振レーダ計測が可能なシステムを構築し、RC供試体レベルでそれぞれの要素技術の課題を解決するための基礎実験の検討を行った。 研究Aでは腐食により鉄筋反射波の振幅が低下する傾向も見られたが,コンクリートの水分分布による減衰との区別は困難であり,レーダ測定のみの単純な手法では腐食の定量評価は困難であることがわかった. 一方,研究Bでは通常のレーダ波形に加え振動物体のみのレーダ波形を選択的に得ることができ,それらの反射波の比により得られる振動変位は水分による減衰の影響を受けないことがわかった.また,コイル形状を数値シミュレーションにより最適化し,アンテナの再設計を行うことにより,かぶり6 cmでの鉄筋コンクリート供試体において鉄筋振動変位を計測可能なシステムを開発した.その結果,健全な鉄筋に比べ10%程度腐食した鉄筋の振動変位が4~6倍増加することがわかった.既存の手法でこのような分別度の高い手法は存在せず,非破壊的な鉄筋腐食評価において極めて画期的な成果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究Aについては鉄筋に平行にスキャンした際に、孤立した周期イメージが発生するメカニズムを解明し、鉄筋腐食との関連について検討する予定であったが,節のない丸鋼や節ピッチを変えたRC供試体を作成し、イメージングを試みた結果,節間隔と周期イメージの間隔に相関は認められなかった.腐食による鉄筋反射の振幅低下は確認されたが,コンクリートの水分分布による局所的な反射波の振幅低下との区別は困難であり,単純なイメージングのみで,定量的な腐食評価は困難であると判断した. また,研究Bではパルス波形に特化した変位推定法について定式化し、より広帯域な周波数帯において,変位推定が可能なアルゴリズムを構築できた.また,電磁界数値シミュレーションにより,コア形状の最適化を行い,コアの足間隔や,厚み等のコイルを巻く形状について,かぶり4 cmの鉄筋への引っ張り力を最大にするような最適化を行い,500巻の励磁コイルを試作した.また,加振周波数が単一周波数であることから,コイルにコンデンサを直列に接続した共振系を構築し,交流定電流源により10Aの電流を印加可能な加振システムを構築できた.これは従来の印加電流に比べ2倍程度の向上であり,コアの改良とも合わせて2倍以上の加振力を実現できた.これにより,開発した加振レーダシステムは4 cmのかぶり鉄筋のドップラを応答を極めて明瞭に取得でき,健全鉄筋で約5umの鉄筋振動変位が得られることを明らかにした.さらに,電食実験により鉄筋を10%程度腐食させた供試体では,20~30umの振動変位となり,極めて分別度の高い腐食評価結果が得られた. したがって,研究Aの有効性は見られなかったものの,研究Bでは予想以上の成果が得られたと考える.既に,開発したシステムにより屋外で鉄筋振動変位を測定する予備試験も行っており,これらの点から当初計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究Aで当初予定していた手法は行わず,全てを研究Bの加振レーダ法に一本化していく予定である.加振レーダ法は現在1点での計測に2分程度を要するため,さらなる計測の高速化をはかり,コイルやアンテナを移動させながら加振レーダ計測を行うことが可能である.これにより映像化も可能となるため,最終的なバイブロドップライメージングの目的に変更はなく,より信頼性の高い手法になるものと考えられる. 30年度は,数値磁界シミュレーションによるコア形状や加振システムの改良により更なる高SN化,高速化を検討する予定である.さらに,磁界シミュレーションにより得られる鉄筋の加振力分布を入力とし,弾性振動シミュレーションを用いて振動変位の数値シミュレーションを行い,鉄筋腐食による振動変位増加のメカニズムについて数値解析により検討していく.また,これまで,1点での波形ベースで振動変位を推定していたため,実フィールドで問題となる注目鉄筋以外からの不要な反射波が波形に重畳することにより振動変位の推定を困難にすることが予想される.そのため,レーダを移動させながら加振計測を行い,通常レーダ波形によるイメージング画像と振動成分波形によるイメージング画像を得ることにより,よりSN比の高い画像ベースで空間分解能を高めた鉄筋振動変位推定法も検討する.また,電食実験を行いながら同時に振動変位をモニタリングすることにより,腐食量と振動変位の関係をRC供試体レベルで明らかにしていく.また,最後に劣化したコンクリート試験体を用いて,屋外フィールドでの振動変位計測の予備実験を行い,屋外フィールドでの測定の問題点を明らかにしていく予定である.
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Research Products
(8 results)