2017 Fiscal Year Annual Research Report
地形起因の大気乱流が風車の構造強度・疲労寿命に与える影響の実機検証研究
Project/Area Number |
17H02053
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 孝紀 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90325481)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 風力発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
【空間解像度10m以下の詳細地形構築技術の新規開発(航空測量データの有効活用)】 現在主流の国土地理院の10m標高データでは,風車近傍のわずかな地形起伏が発生起源となる地形性乱流の影響は十分に評価できない.本研究では,航空レーザー測量データに注目し,これを数値風況シミュレーションの入力データに自動変換する技術を開発した.これに伴い,風車立地点近傍の土地造成の影響などを考慮した詳細な数値風況予測が可能になった.一連の前処理作業は,数時間以内に完了することに成功した.
【種々の気象GPVデータ,メソ気象モデルの有効活用法の開発】 気象GPV(Grid Point Value)データは,データフォーマットの複雑さ,データ転送の遅延問題から,一部の研究者しか利用できない状況にある.一方で,GPVデータは地球全体を網羅するものから,局所的な地域を密にカバーするものまで多岐にわたり,これを有効活用できれば,世界規模で風力発電の普及に大いに貢献できると確信する.本研究では,GPVデータの取り扱いに関して最大のボトルネックであるデータデコード(バイナリ形式からテキスト形式への変換)システムを開発し,数値風況予測への活用法を検討した.同時に,メソ気象モデルWRF-ARWの出力結果を本研究のコア技術であるRIAM-COMPACT(リアムコンパクト)の初期条件および境界条件に取り込む手法も検討した.一連の開発を行い,より現実的な状況を模擬した数値風況シミュレーション手法の実施が可能になった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,3年目において,電力会社や風車メーカー,風力発電事業者の協力を得て,本研究で指摘する地形性乱流に伴うトラブルに遭遇した風車情報を入手し,その状況をコンピュータで忠実に再現することを目的としていた.具体的には,1年目および2年目で開発した技術に基づき,風車がいかに過酷な状況にさらされているかを定量的に明らかにし,発電量低下や風車故障の原因となるウィンドリスクを特定する.さらに,それらのウィンドリスクの状況を,最新のコンピュータグラフィックス技術を用いて3次元構造として立体的に視覚化する予定であった. 本研究では,(株)九電工新エネルギーが所有する鹿児島県の串木野れいめい風力発電所(下記の左図)を対象に交渉を行い,内諾を得て,実証試験の一部を開始することに成功している.さらに本研究の遂行には,風車メーカーである(株)日立製作所の協力が不可欠であったが,こちらについても既に事前交渉を行い,実証試験の一部を開始することに成功している.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究のコア技術であるRIAM-COMPACTに対して,種々の大気安定度へ適用可能な計算モデルの改良,汎用性とロバスト性に優れた最新の乱流モデルの開発と導入,流入気流条件などの精緻化を行う.さらに,GPU技術の導入によりスパコン並み,あるいはそれ以上の高速化を実現する. Google Earth上に,数値風況シミュレーション(CFD)から出力される各計算値に緯度・経度などの位置情報を付加させ,一義的に決まる場所に即座に重ね合わせることができれば,流体シミュレーション結果の説明やプロジェクトの合意形成に極めて有効である.現在では,この重ね合わせの作業に数時間を要している.今回の研究開発において作業時間の大幅な短縮化を図るとともに,一連の作業の自動化を実現する. 一般に複数の風車が平坦地に配置された場合,それらが直線的に並ぶ際には,風車ウエイクの相互干渉(前方に位置する風車ブレードの回転により発生した乱気流が後方の風車に影響を及ぼし,風車の故障や発電量の低下を引き起こす現象)の問題が懸念される.そこで本研究では,風車ブレードが回転する効果を表現するモデルを,複雑地形を対象にした気流場計算へ組み込み,地形の凹凸により発生する地形性乱流と,風車ブレードが回転することに伴い発生する乱気流の両者を区別することなく再現する手法を試みる.
|