2017 Fiscal Year Annual Research Report
核の力学場に立脚した細胞の放射線耐性調整機構の解明
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17H02077
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
長山 和亮 茨城大学, 工学部, 教授 (10359763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂元 尚哉 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (20361115)
菅原 路子 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30323041)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞バイオメカニクス / メカノバイオロジー / 細胞骨格 / 細胞核 / 細胞計測・操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,核内外の力学的な「場」の変化が,DNAにどのように作用し,細胞の放射線耐性を生み出しているのか,そのメカニズムの解明を目指している.今年度は,「(1)力学刺激による細胞骨格と細胞核の結合の操作」と「(2)細胞核への直接的変形負荷」により,DNAの凝集状態を操る手法の確立を目指した.(1)として,まず,シリコーンゴムのシート上で維芽細胞を培養して人工的に組織化させた後,伸展率10%,周期数0.5Hzの繰返引張刺激を12時間負荷した.すると,細胞内のアクチン細胞骨格が一様に再配列して発達し,細長い形態の細胞組織を構築することができた.これらの細胞組織内の張力(収縮力)を計測したところ,静置培養群に比べて細胞内の張力が有意に増加していることが分かった.さらに,これらに紫外線を照射した後に,核内のDNAの損傷部分をリン酸化ヒストンH2AX抗体を用いた免疫蛍光染色にて評価した.その結果,繰返引張刺激を加えて配列組織化させた細胞では,有意にDNA損傷が抑制されることが分かった.一方で,細胞の張力を緩ませる試薬を投与したまま同様の繰返引張刺激を負荷しても紫外線によるDNA損傷を抑制できないことが分かった.以上のことから,紫外線によるDNA損傷を効果的に抑制するためには,細胞内のアクチン細胞骨格の張力増強が必須であり,その張力によって細胞核が物理的に圧縮されることがDNA損傷を防ぐための主要因であることが判明した. さらに(2)として,微細円柱(マイクロピラー)を配列させた特殊な細胞培養基板を用いて,細胞組織を培養し,細胞内の核を大きく変形させる手法を用いた.マイクロピラー基板上で細胞を培養すると,核の側面が顕著に圧縮され,核内のDNAを始めとする分子の移動・拡散が制限されるといった知見が得られた.そしてこのような細胞組織では紫外線由来のDNA損傷を著しく抑制できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり,「(1)力学刺激による細胞骨格と細胞核の結合の操作」と「(2)細胞核への直接的変形負荷」両側面での実験系を構築した.そして,これらを用いて細胞核に力刺激を加えることで核内のDNA凝集を促進さえ,紫外線によるダメージを効果的に抑制することを見出した.また,顕微鏡下で長時間安定してタイムラプス観察できる系も構築しており,次年度以降の研究に効率良く展開できる準備が整った.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度構築した実験系に加えて,核内の特定タンパク質のダイナミクスを長時間連続観察できるように,自動蛍光切り換えシステムを導入する.そして,現有するUVレーザシステムを使って核の局所のみに紫外線を照射しながら,そのダメージの発生あるいは抑制効果をその場で観察・評価できる実験系への改良を目指す.また,核への力学刺激によって紫外線由来のDNA損傷を抑制できる効果がどのぐらい持続するのか,経時的な変化を捉えていく.
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