2017 Fiscal Year Annual Research Report
Advanced 3D tissue engineering with microfluidic technology
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17H02083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀井 謙一郎 京都大学, 高等研究院, 准教授 (00588262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 修 京都大学, 工学研究科, 教授 (20288624)
平井 義和 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40452271)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幹細胞 / マイクロ流体デバイス / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、機能的な「立体組織構造体(オルガノイド)」を高効率に再現性良く作製できる方法を開発し、かつ再生医療や創薬に有用な組織形成のメカニズムを解明することである。従来のマクロなオルガノイド作製法は細胞の自発的な凝集に依存し、再現性が低いことが問題であった。これは組織形成に適した化学的・物理的な環境が厳密かつ任意に創出できないためである。そこで本研究では、これらの化学的・物理的な環境因子を時・空間的に制御可能なマイクロ流体3次元細胞培養デバイスを開発し、再現性の高いオルガノイド作製法を提案する。Proof-of-Conceptとして、従来のオルガノイド作製法では機能発現が困難であり再現性も低かった肝臓に着目し、本研究で提唱する新規作製法で、これらの問題点を解決し、肝臓の発生機構を解明する。 当該年度では、オルガノイドを作製するために、 1. 物理的刺激を可能にするマイクロ流体デバイスの開発を行った。その結果、幹細胞由来の肝臓細胞に物理的刺激を印加し、機能的に向上していることが観察できた。現在そのメカニズムについて検証しているところである。 2. iPS細胞から肝臓細胞への分化誘導・オルガノイド形成を行う最適化条件を試験しているところである。これまでのオルガノイドは血管網がないことが欠点とされており、それが機能不全にも結びついていた。本研究ではiPS細胞だけでなく血管内皮細胞や他の細胞を混入することによって、血管網を装備したオルガノイド形成を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、生体内の肝臓における細胞配置を再現するために、マイクロメートルスケールでの3次元細胞配置法をマイクロFD技術を応用して確立する。 肝機能を発揮する組織単位として肝小葉構造に着目し、細胞培養チャンバはそれを模する構造で設計する。また、そのチャンバに必要に応じた細胞を個別に導入できるように、細胞ごとに対応したマイクロ流路と内臓バルブを設置する。細胞には、肝組織に必要な肝実質細胞・血管内皮細胞・間葉系幹細胞・胆管細胞・クッパー細胞などを用いる。 本研究で作製するFDは、共同研究者(田畑、平井)が開発した3次元ソフトリソグラフィを用いる。この方法はソフトリソグラフィという加工技術に数値解析技術を組み合わせた全く新しい概念の加工技術を構築することで、従来のリフローなどの微細加工技術では不可能であった複雑な3次元構造を容易に精度良く作製できる。デバイス材料としては、生体適合性・ガス透過性・光透過性が非常に高いpolydimethylsiloxane (PDMS)を使用する。 肝臓組織を再現するために、その構造を模倣した細胞培養チャンバと内臓バルブを搭載するFDを開発する。まず3種類の細胞(肝実質細胞(HepG2など)、間葉系幹細胞、血管内皮細胞)をパターニングし、肝小葉構造を持つ肝臓オルガノイドを作製する。組織構造を確認するために、Whole mount stainingなどによる非破砕実験法を用いてタンパク質発現やmRNA発現などをin situで検出し、並行してフローサイトメトリーによる組織内における細胞種の組成比を定量解析する。また組織機能は、タンパク質生産能(免疫染色+ELISA法)、薬物取り込み・放出能(Indocyanine greenを用いた薬剤取り込み可視化)、薬物代謝能(質量分析法)などより多角的に評価する。本年度では、この組織評価法の確立も行い、以降の年度でも本研究で確立した評価法を用いる。
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Strategy for Future Research Activity |
3種類の細胞を用いてオルガノイド作製を行ったが、本年度では更に肝臓組織の高度な再現を目指す。近年、組織形成における免疫反応の重要性が着目されている。そこで肝臓内の免疫細胞であるクッパー細胞を新しく加えてパターニングし、前年度で得られたオルガノイドと比較し、より高機能なオルガノイドを作製できる条件を同定する。 また、肝臓オルガノイド形成における物理的・化学的な環境因子の作用機構について明らかにする。特に複数の環境因子を印加した場合、それらの因子が活性化するシグナル伝達のクロストークによって、組織形成におけるシナジー効果の有無を明らかにする。特に本年度では、個別の環境因子とその組織形成メカニズム解明に重点を置く。また、前年度で確立した組織評価法に加え、各環境因子による細胞内シグナル伝達や遺伝子発現機構を解明するために、各シグナル阻害剤・活性剤、siRNAなどをオルガノイド形成中に添加しオルガノイド形成における変化を観察、組織形成に最も重要なシグナル伝達や遺伝子発現経路を同定する。
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Research Products
(11 results)