2018 Fiscal Year Annual Research Report
異常ミトコンドリアを認識する遺伝子治療用ナノカプセルの構築
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17H02094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 勇磨 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (60451431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 篤志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (80631150)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬物送達システム / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアのゲノム変異と種々の疾患との関連が報告されており、本オルガネラを標的とした遺伝子治療が期待されている。本申請研究では、ミトコンドリア標的型ナノカプセル (MITO-Porter)を用いて標的ミトコンドリアへ遺伝子発現制御装置を運搬し、ミトコンドリア機能を遺伝子レベルで治療する事を目的とする。具体的には、疾患細胞の異常ミトコンドリアを認識するナノカプセルを構築し、その内部に治療用核酸を有する制御装置を搭載する。さらに、ナノカプセル投与後の疾患細胞のミトコンドリア機能を評価しその治療効果を検証する。H30年度は、下記の項目を中心に研究を遂行した。
①異常ミトコンドリアを認識する環境応答性ナノ粒子の構築 異常ミトコンドリアと正常ミトコンドリアでは、ミトコンドリア内部の環境が多く異なる。本研究では、異常ミトコンドリア内部でナノ粒子から核酸が放出する環境応答性を付与する。H30年度は、人工カチオニックポリマーを用いてナノ粒子を形成し、異なるミトコンドリア環境を再現する緩衝液中におけるナノ粒子崩壊を評価した。環境応答性を有するナノ粒子候補を見出すことに成功した。 ②疾患細胞での遺伝子発現の検証 RNA変異細胞が有する変異型RNAに対応する複数種の正常型RNAを設計した。RNAを含有させた粒子を搭載したMITO-Porterを構築し、疾患細胞へ投与しミトコンドリアに到達することを確認した。さらに、正常型および異常型のRNAの比率を測定し、異常型RNAの比率を有意に減少させることに成功した。本効果は数日にわたり持続していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工カチオニックポリマーを用いて環境応答性を有するナノ粒子候補を見出すことに成功した。また、正常型RNAを含有させた粒子を搭載したMITO-Porterを構築し、疾患細胞へ投与しミトコンドリアに到達することを確認した。さらに、正常型および異常型のRNAの比率を測定し、異常型RNAの比率を有意に減少させることに成功した。一方で、環境応答性ナノ粒子を含有したMITO-Porterの機能評価が行えていないが、ここまでに示した内容はH30年度に計画した全ての研究内容が網羅されており、研究の目的を達成する多くの成果を得ることができた。 以上より、現在までの達成度は『おおむね順調に進展している』と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、『疾患細胞ミトコンドリアにおける遺伝子治療戦略の検証』を中心に下記に記載した計画で研究を進める予定である。 ①疾患細胞ミトコンドリアの変異率評価 2018年度に引き続き、RNA変異細胞が有する変異型RNAに対応する正常型RNAをMITO-Porterに搭載し、疾患細胞への導入を試みる。その後、Amplification refractory mutation system (ARMS)-qPCR法を利用してミトコンドリア内部の正常型RNAおよび異常型RNAを定量しRNA変異率を算出する。 ②疾患細胞を用いた治療効果の検証 治療効果の指標としてミトコンドリア機能(ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア呼吸活性、など)の評価を実施する予定である。膜電位の測定にはミトコンドリア内の膜電位を検出可能な蛍光色素を利用して疾患細胞ミトコンドリアの膜電位を計測する。また、酸素消費量を指標としたミトコンドリア呼吸活性を測定する予定である。
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Remarks |
本研究で得られた成果を基盤技術に据えたバイオベンチャーであるルカ・サインエス社が設立され、自身も科学顧問に就任し、創薬開発に向けた研究を計画・推進中である。
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Research Products
(24 results)