2018 Fiscal Year Annual Research Report
生体吸収性マグネシウム合金の分解に伴う空孔形成挙動の評価手法開発
Project/Area Number |
17H02116
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山本 玲子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 上席研究員 (20343882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 良央 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30302152)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レギュラトリーサイエンス / 生体吸収性金属材料 / 水素発生 / 空孔形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグネシウム(Mg)合金は、生体内で分解し吸収される金属材料として、ステント・骨接合材等の医療応用が期待されている。しかし、体内での分解に伴う水素発生により埋入部周辺組織中に空孔が形成されること、それにより周辺組織の正常な修復・治癒過程が妨げられた臨床例が報告されている。従来の生体吸収性高分子・セラミック材料には分解に伴い水素発生するものはなく、組織中の空孔形成リスクの適切な評価法は存在しない。Mg合金製医療デバイスの成功のためには、組織中の空孔形成挙動の解明と、臨床前の適切な空孔形成リスク評価が必要である。そこで、本研究ではモデル生体組織中の空孔形成挙動の解明を行い、in vivoでの結果と比較することにより、空孔形成リスク評価法の確立を目指す。 本年度は、昨年度開発した空孔形成挙動観察手法を用い、1)モデル組織の増粘剤濃度、2)Mg合金試料の分解速度を変化させて試験を実施し、空孔形成挙動制御因子について検討した。さらに、一部の合金試料については、in vivo埋植試験により空孔形成ならびに分解量を測定し、in vitro試験結果と比較した。その結果、モデル組織中の増粘剤濃度が高い(すなわち拡散速度が低い)ほど形成される空孔体積が大きくなること、純Mgについてはモデル組織中の拡散速度が低いほど分解量が大きくなることを確認した。また、試料の分解速度が大きいほど空孔形成量が大きくなることが確認された。in vivoでは血流量の小さい組織(すなわち拡散速度が低い)ほど、試料の分解量ならびに空孔形成量が大きく、in vitroと傾向が一致することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発したin vitro空孔形成挙動観察手法を用い、気体・イオンの拡散速度が空孔形成量に影響することを明らかにした。さらに、純Mgについては拡散速度の低下に伴い、空孔形成量が増加するだけでなく腐食速度も増加することが判明した。また、分解・空孔形成量の傾向(拡散速度の低い組織の方が分解量・空孔形成量が大きくなる)はin vitro、in vivo間で一致することが確認された。以上から順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した手法を評価法として汎用化するためには、モデル組織の性質が空孔形成量に及ぼす影響について詳細な検討が必要であると考えている。具体的には、pH(試料が分解するとpHが上昇するため)や温度(CT観察時にはインキュベータから取り出すため)の影響、さらに空孔形成率(全ガス発生量に占める滞留量)とモデル組織体積の関係等である。 将来の課題としては、開発手法が形成された空孔の吸収挙動観察に適用可能性がある。生体内では埋植期間の増加に伴い試料の分解速度は低下、ガス発生量が低下するため、次第に形成された空孔が消失することが報告されている。実際のデバイス埋植治療においては、空孔が全く形成されないことが最も望ましいが、形成された空孔が速やかに消失すれば、組織修復への影響を抑えられる(最小限にできる)可能性がある。本手法を発展させ、形成された空孔の吸収挙動観察ならびに制御因子が解明できれば、リスク評価法として、より望ましい手法となると考える。
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Research Products
(4 results)