2018 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中リハビリテーションにおける薬理的シナプス伝達制御を伴う新たな運動療法の開発
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17H02117
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前島 洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60314746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真先 敏弘 帝京科学大学, 医学教育センター, 教授 (00585028)
榊間 春利 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10325780)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 脳卒中 / 神経栄養因子 / シナプス / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
GABAA受容体の軽度阻害による皮質の「易興奮性」を薬理的に導入し、運動療法にけるニューロモジュレーションが大脳皮質運動野BDNFの発現とそれに伴うシナプス可塑性を増強し、運動機能回復を促進する可能性について検証を行った。中大脳動脈閉塞(MCAO)術による脳梗塞片麻痺モデルラットを作成し、GABAA受容体アンタゴニスト投与と運動の介入の2要因により4群に分類し、更にSham術を施行したSham群の5群を設けた。術後3日目よりGABAA受容体アンタゴニストbicuculline (0.25mg/kg)の腹腔内投与とトレッドミル運動(11m/min, 30分)を2週間実施した。介入後、神経学的機能障害の評価としてZea onga Score, Motor Behavior Inde, Adhensive removal test, cylinder test, Rotarod testを実施した。その後、大脳を採取し、TTC染色による損傷域の確認、両側大脳皮質運動領野を対象とする生化学的分析を行った。はじめに、Sham群との比較においてMCAO術による運動麻痺と中大脳動脈支配領域における虚血損傷の確認を通してモデルとしての再現性を確認した。脳梗塞マウス4群間の比較において損傷領域の大きさに有意な差異は認められなかった。一方、運動機能評価においてAdhensive removal test, cylinder test, Rotarod testの何れにおいてもbicuculline投与と運動の両介入を行った群のみが他群よりも運動機能指標が有意に高く、両介入の機能回復への相乗効果が確認された。更に損傷側運動領野における蛋白BDNFレベルは虚血損傷により有意に低下していたが、bicuculline投与と運動を共に行った群のみ他の虚血損傷群に比べて有意に蛋白BDNFは増強していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、bicuculline腹腔内投与と運動の相互作用による機能回復とその要因を検証するため、以下の実験を計画した。1.運動機能評価として、Motor behavior test、Neurological Score、rotarod test、Wire hang test、Adhensive removal test、Foot fault test、Cylinder test、sticky tape-removal test等を実施し、機能回復レベルを定量評価する。2.全脳を採取し、前額断切片を作成し、TTCにより脳切片を染色し、損傷領域の広がりについて検証を行う。3.同領域を対象にmRNA発現の定量解析により、神経栄養因子BDNFとその受容体、とその受容体等のmRNAおよび蛋白レベルを定量する。4.Live/Death viability Cytotocxity Assay kitを用いた蛍光染色により、大脳皮質損傷領域、ペナンブラ領域の神経細胞の細胞死について検証を行う。5.BDNFに関する細胞内シグナル系であるMAPキナーゼカスケード修飾について解析を行う。以上の所見を統合解釈し、脳卒中後の軽度のGABA作動性シナプスの抑制による運動療法に対する効果について検証することを目的とした。このうち、研究のコアとなる1、2、3は達成し、本研究における仮説である軽度のGABAA阻害が運動療法効果を促進する可能性を示唆所見を得た。更に5、6、についても着手しつつある。このため研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果として、脳梗塞モデルラットを対象にGABAA受容体アンタゴニストであるbicucullineの腹腔内投与と運動は相乗的に運動機能の回復を促進し、損傷側運動野におけるBDNF発現を増強することを確認した。これらの所見に基づき、本年度はGABAA受容体阻害と運動の相互作用がRAF, MEK, ERK, JNK等の皮質細胞内シグナルMAPキナーゼカスケード活性に与える影響について生化学的分析を進める。更に組織化学的分析として、Live/Death viability Cytotocxity Assay kitを用いた蛍光染色による大脳皮質損傷領域、ペナンブラ領域の神経細胞の細胞死、シナプスマーカーであるシナプトフィジン、PSD95を用いたシナプス数の定量による可塑的なシナプス修飾について組織化学的分析を進める。一方、脳卒中モデルとして脳梗塞に加えて線条体内包域へのコラゲナーゼ注入による脳出血モデルラットを対象に、GABAA受容体阻害と運動が本度同様の運動機能回復の促進とBDNF発現に対して相乗的に効果を有するかを検証し、脳卒中における運動療法に対するGABAA受容体阻害の薬理的ニューロモジュレーションとしての有効性を広く検討する。即ち、脳出血モデルラットを対象にbicuculline腹腔内投与とトレッドミルを用いた運動介入の2要因より1)コントロール群、2)bicuculline投与群、3)運動群、4)bicuculline投与+運動群の4群に群分けし、本年度同様に運動機能の回復とそれを促進する液性因子の発現とシナプスの可塑的修飾について生化学的、組織化学的分析を通して検証を進める。
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