2017 Fiscal Year Annual Research Report
Revealing development of motor functions during golden ages
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17H02143
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
内藤 栄一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究マネージャー (10283293)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己(固有)受容感覚 / 運動錯覚 / 自己顔認知 / 右半球 / 上縦束第3ブランチ / 半球間抑制 / 身体認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体認知や運動機能は人の生存にとって必要不可欠であるが、これらの脳機能がどのように発達するかについてはほとんど知られていない。2017年度は、特に身体認知機能に着目し、この機能を司る脳内神経基盤が、ゴールデンエイジと呼ばれる小学生の時期から、中学生、成人に至る過程でどのように形成されていくかを調査した。 筋肉からの自己(固有)受容感覚入力で惹起される運動錯覚という身体認知は、成人では、上縦束第3ブランチという脳内神経線維で結合される下前頭-頭頂ネットワークを右半球優位に動員する。本研究により、小学生の身体認知では、このネットワークを両側性に使用しており、中学生の時期に左半球ネットワークの活動を抑制することで、成人でみられるような右半球の優位性が出現することを突き止めた。この成果は、Naito et al. (2017) Cerebral Cortex 27: 5385-5397で報告した。 この右半球ネットワークは、成人においては、自己顔認知でも使用される(Morita et al. Neuroscience 348: 288-301)。そこで、自己顔認知におけるこのネットワークの発達過程を調査すると、小学生では自己顔認知においてこのネットワークを左右半球とも使用しておらず、中学生の時期になって、初めて右半球優位にこのネットワークを使用し始めることを明らかにした。この成果は、Morita et al. (2018) Cerebral Cortex 28: 1532-1548で報告した。 以上の結果は、発達の過程で、まず筋肉からの自己(固有)受容感覚が身体認知の神経基盤を作り上げ、この神経基盤は、自己認知の基盤にもなりうることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、主に運動機能の発達過程の調査を目的としていたが、運動機能に深く関係する、筋肉に由来する自己(固有)受容感覚に基づいた身体認知機能や自己顔認知という自己認知機能に関する脳内神経基盤の発達過程に関しても明らかにすることができた。これらの知見は世界で初めて実証され、その成果は国際的一流雑誌で評価された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主目標である、ヒトの運動機能の発達過程の調査を行う。特に手の運動機能に着目し、機能的MRIを用いて、運動野の体部位間抑制や活動部位の限局化に関する発達的変化を明らかにする。また、運動制御において本質的な役割を果たす大脳と小脳の連関に着目し、拡散強調MRIを用いて大脳ー小脳ネットワークを形成する脳内神経線維の解剖学的成熟過程を調査し、機能的MRIを用いて大脳ー小脳ネットワークの機能的連携における成熟過程を明らかにし、これらの研究成果の国際的一流雑誌への掲載を目指す。
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