2018 Fiscal Year Annual Research Report
The research on maintenance of intestinal function and role of commensal bacteria by physical stress such as exercise under heat / hypoxic environment
Project/Area Number |
17H02147
|
Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
松生 香里 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (60513570)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 一成 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (60508258)
岡崎 和伸 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 教授 (70447754)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 腸内細菌叢 / 暑熱順化 / 低酸素適応 / コンディション / トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
低酸素環境を用いたトレーニングが腸内細菌叢変化について、動物実験をモデルとして明らかにした(実験1)。また、暑熱環境への適応・順化が腸内細菌叢変化におよぼす影響について、ヒト対象試験の予備実験を実施し、暑熱順化トレーニングによって腸内環境が変化する現象を明らかにした(実験2)。 実験1:マウスを用いた動物実験により、アスリートの高所・低酸素トレーニングで実施されているLiving High-Training Low(LH-TL)による腸内細菌叢変化を調べた。低酸素環境下で滞在しているマウス生体の適応状態を把握するため、ヘマトクリット値の増加を確認し、採取したマウス糞便から腸内細菌叢変化を調べた結果、低酸素環境への暴露により、腸内細菌叢が変化することを明らかにした。さらに、詳細を調べるべく、次世代シーケンス法にて低酸素適応に関連する腸内細菌の種類を同定し、引き続き、低酸素トレーニングにおける生体の適応状態や腸管上皮から全身へと影響する代謝関連因子の解明に着手している。 実験2:ヒト対象試験では、環境制御室を利用した暑熱環境下での運動・トレーニング実施による急激な暑熱順化により、腸内細菌叢変化が起こる事象を予備実験によって明確化した。暑熱環境への適応・順化に伴う腸内細菌が存在する可能性があり、引き続き腸管上皮の適応状態から全身の適応状態について血中メディエータを通じて、暑熱順化によって生じる発汗状態、鉄代謝を含む生体内の代謝応答を明らかにすべく実験を遂行している。 加えて、暑熱下のトレーニング実施に伴う全身のストレス状態が腸管上皮の透過性亢進と腸内細菌に及ぼす関連性を調べ、外環境変化が腸内細菌叢の変化に繋がるメカニズム解明とループの全体像を明確化に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験1(動物実験):低酸素環境下における腸内細菌叢が変化する現象を明確にし、腸管機能と腸内細菌の関連メカニズムを調べるため、動物実験を中心に実施した。初年度に購入した動物用の低酸素チャンバーを活用し、アスリートの高所・低酸素トレーニングを動物モデルに置き換えて実験を遂行している。低酸素環境での長期滞在により、血中の酸素運搬能力を変化させることから、生理学的な指標変化と併せて腸内細菌叢変化があることを明らかにした。さらに、有酸素トレーニングを加えることによって、骨格筋肥大と有酸素能力の向上に関連する腸内細菌の同定を試みている。また、同定された腸内細菌の機能・役割について解析中であり、引き続き実験を遂行している。 実験2(ヒト対象試験):暑熱環境下における適応・順化によって腸内細菌叢が変化することをヒトを対象とした暑熱順化トレーニングの予備実験の実施によって確認しており、研究分担者の後藤一成氏(立命館大学)、岡崎和伸氏(大阪市立大学)と連携しながら滞りなく実験を遂行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
アスリートが環境変化に伴うパフォーマンス低下を抑制するコンディション対策を明確化することを目標として、暑熱環境下や低酸素環境下での運動・トレーニングの実施と腸内細菌叢変化と内部臓器との関連性を調べている。マウスを用いた動物実験では、外環境変化による生理学的指標の変化、腸内細菌叢が変化することを見出した。この結果に基づき、外環境変化に伴う腸内細菌と腸管上皮の相互の関連・適応から全身へ至る経路について血中メディエータを介し、骨格筋における影響を明らかにして行く。 また、ヒト対象試験では、急激な暑熱順化によって生じる、発汗状態や鉄代謝を含む生体内の代謝応答を明らかにする。暑熱下のトレーニング実施に伴う全身のストレス状態が腸管上皮の透過性亢進と腸内細菌に及ぼす関連性を調べ、外環境変化が腸内細菌叢の変化に繋がるメカニズム解明とループの全体像を明確化する。 以上の研究を、研究分担者の後藤一成氏(立命館大学)、岡崎和伸氏(大阪市立大学)と連携しながら遂行して行く。低酸素・暑熱下で実施される運動・トレーニングが腸内細菌叢変化を通じて全身へ及ぼす影響を明らかにし、腸内環境悪化時の対処策を現場に還元できる基礎資料としての公表を目指す。 具体的には、1)暑熱・低酸素などの外環境変化に起因する腸内細菌の同定、2)外環境変化に関わる腸内細菌の役割の解明、3)腸管コンディション悪化時の対処策を明確化する。 これら3つの課題達成によって、外環境変化に伴う腸内細菌の変化と内部臓器の関係性を明らかにし、アスリートのトレーニングやパフォーマンス低下の抑制、さらには一般成人の生活習慣病予防など、腸内環境改善を中心とした新規のコンディショニング策として現場へ活用できる情報として提供する。最終年度にはセミナーを開催し、研究者だけでなく、運動・スポーツ現場の指導者への公表を視野に入れながら研究を遂行して行く。
|
Research Products
(11 results)