2017 Fiscal Year Annual Research Report
運動と遺伝子が高温下での運動パフォーマンスに関係する汗イオン濃度調節に及ぼす影響
Project/Area Number |
17H02153
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
西保 岳 筑波大学, 体育系, 教授 (90237751)
天野 達郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60734522)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発汗能力 / 運動 / 汗腺 / 汗イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
高温下での運動パフォーマンス低下や運動時の熱中症発症の予防には,発汗の量の調節だけでなく,効率よく汗を蒸発させるには汗イオン濃度(本研究では塩分濃度)をも重要となる.本研究では運動に関わる要因と遺伝子の違いが汗イオン濃度の調節にどのように影響するのかを明らかにし,高温下運動時に起こる課題の予防に新しい情報を提供することを目的とした.その中で,H29では汗イオン濃度の調節能力を様々な視点から評価した. 1)発汗量と汗ナトリウム濃度および皮膚電気コンダクタンスとの関係 被験者に対して下肢温浴あるいは自転車運動を負荷し,皮膚温を一定にするために水循環スーツを用いた.この温熱負荷中,心拍数,血圧,体温,皮膚温,発汗量・皮膚電気コンダクタンス,皮膚血流量,汗ナトリウム濃度などを測定した.また,皮膚で汗が蒸発した場合,汗に含まれるイオンが皮膚に残るため,その影響を従来申請者が報告した汗コンダクタンスを測定する方法(純粋な水を皮膚に流し,汗コンダクタンスを直接測定する方法)とも比較した.この結果,本研究で用いた発汗量-皮膚電気コンダクタンスの関係は汗ナトリウム濃度の変化と関連性が認められた.また,従来との比較ではいずれもコンダクタンスが急増する発汗閾値には大きな差はないが,発汗量-皮膚電気コンダクタンス関係の勾配が汗コンダクタンスのそれより大きくなった.これは前述の汗蒸発により皮膚に残った汗イオンが影響している可能性が指摘された. 2)様々な部位,年齢,運動等による汗イオン濃度の調節能力の違い 発汗量-皮膚電気コンダクタンス関係からみた汗イオン調節能力は前腕より胸部で大きく,年齢とともに低下していくことが示された.また,運動によりこの能力は促進され,無酸素性作業閾値より高い負荷の運動でのみ,それがみられた.H30年度予定であった研究の一部を実施することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度では,発汗量と汗ナトリウム濃度および皮膚電気コンダクタンスとの関係を明らかにし,発汗量-皮膚電気コンダクタンス関係から評価する汗腺でのイオン再吸収能力の指標の妥当性を検討することが主の目的であった.汗ナトリウムの測定からこの評価方法の妥当性がある程度評価できた.
また,この方法の妥当性を,体の部位での違い,年齢あるいは運動で評価できた.特に,部位と年齢の違いの影響はこれまでの報告と一致するもので,今回の方法の妥当性を示す大きな結果となった.さらに,H30年度で実施する実験の一部を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
汗ナトリウムの連続測定により発汗量-皮膚電気コンダクタンス関係から評価する汗腺でのイオン再吸収能力の妥当性は十分に検討出来なかった.現段階では,汗ナトリウム濃度の連続測定は難しく,測定間隔を出来るだけ短くし,さらに本研究の方法の妥当性を検討していきたい.
H29年度にH30年度の研究の一部が実施できたため,H30で実施予定の内容を実施するとともに,H31年度実施の遺伝子の研究に関わり,被験者確保の準備を並行して行っていきたい.この遺伝子を持っていない日本人の割合が約25%と低く,汗腺に関わる遺伝子の影響をみるためには被験者の同定と確保が欠かせないと考えられる.
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