2018 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮進行におけるプロスタノイドの質量分析イメージング解析と治療標的分子の同定
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17H02157
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 筋萎縮 / プロスタノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、不動性筋萎縮モデルとして尾部懸垂を用い、筋萎縮におけるプロスタノイドの産生動態をLC-MS 質量分析による定量、質量分析顕微鏡を用いた質量分析イメージングによる組織動態観察を融合し、どのプロスタノイドが筋萎縮の主因となっているかを明らかにすることである。さらに、質量分析イメージングで同定した標的プロスタノイドの合成酵素の阻害剤を用い、不動性筋萎縮モデルにおける筋萎縮の改善の有無を調べ、これらプロスタノイドの検出から、その産生阻害剤の効果検証を段階的に進め、演繹的な実験計画によりに分子標的の同定を試みる。 H30年度は、筋萎縮のIn vivoマウスモデルを用いた解析を行った。尾部懸垂マウスから1~4 週後に後肢の筋肉(大腿四頭筋、下腿三頭筋)を採取し、X線密度測定装置(DEXA法)、マイクロCTによる筋の形態計測と三次元体積解析を実施した。尾部懸垂マウスは著しい筋萎縮を示し、同一サンプルにおけるプロスタグランジンの測定解析に供した。また、プロスタノイドの標準標品の結果をもとに、プロスタノイドのLC-MS質量分析の定量的基盤構築を行った。特に固相抽出カラムを用い、不純物の排除、洗浄および濃縮、カラム操作の後に、筋組織中のプロスタノイドを内部標準法により分析を可能とした。 これら研究結果より、尾部懸垂により萎縮する筋組織における定量的なプロスタノイド測定法の基盤確立に成功した。さらに、筋組織におけるプロスタノイドの発現同定解析では、尾部懸垂により萎縮する筋組織におけるプロスタノイドの産生細胞の動態解析を行った。既存法であるIn vivo 発光イメージャー、3次元マイクロCT 解析を併せて行った結果、筋萎縮におけるプロスタノイド産生細胞の数種を同定した。これらは炎症性疾患に関わるいくつかの免疫細胞などで構成されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H30年度の計画において、尾部懸垂マウスを用いた解析系では著しい筋萎縮を示し、同一サンプルにおけるプロスタグランジンの測定解析を可能とした。これら標準標品を用いたプロスタノイドのLC-MS質量分析の定量的基盤構築は固相抽出カラム操作の改善を中心に行ったところ、尾部懸垂により萎縮する筋組織における定量的なプロスタノイド測定法の基盤確立に成功した。 さらに、筋組織におけるプロスタノイドの発現同定解析では、尾部懸垂により萎縮する筋組織におけるプロスタノイドの産生細胞の動態解析を併せて行った。既存の解析技術である、In vivo 発光イメージャー、3次元マイクロCT を活用し、筋萎縮の表現型と質量分析イメージングによる表現型とプロスタグランジン発現との相関解析を行った結果、特に細胞表面抗原解析の実施により、炎症性免疫細胞によるプロスタノイド産生が確認された。 H30年度の計画であった、In vivo モデル動物の解析、質量分析を用いたエイコサノイドの定量解析、質量分析イメージングを用いた筋組織におけるプロスタノイド解析、プロスタノイド産生細胞の同定と機能相関の解析は、当初計画を達成した。また、筋萎縮におけるプロスタノイド産生細胞の数種がIn vivo 発光イメージャーとの併用解析により同定され、これらは炎症性疾患に関わる免疫細胞などで構成されていることが明らかとなった。これら結果は、次年度の計画である尾部懸垂マウスにおけるプロスタノイド阻害剤の投与効果の検討において、標的となるプロスタノイド候補の産生阻害剤をマウスに投与する上での、方針決定に大変重要な知見である。 これらの成果は次年度の平成31年度の本課題を円滑に進める基盤として必須であり、今年度の研究進展は前倒しの課題実施を可能とする。これら理由により、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は尾部懸垂マウスにおけるプロスタノイド阻害剤の投与効果の検討を進める。H30年度までに得られた筋萎縮におけるプロスタノイド解析の結果をもとに、標的プロスタノイド候補の産生阻害剤をマウスに投与し、筋萎縮の抑制効果を判定する。プロスタノイド産生阻害剤で筋萎縮の改善効果が認められ、かつ、質量分析イメージングにより標的として選択したプロスタノイドの産生阻害が認められるか、否かを判定する。さらに、炎症性プロスタノイドの産生細胞である免疫系細胞、特に白血球系細胞である好中球やマクロファージに焦点を当て、標的プロスタノイドの産生細胞をコンフォーカル顕微鏡やライブイメージング解析を用いた細胞表面抗原解析により同定する。これら標的プロスタノイドの産生阻害と筋萎縮の抑制効果が相関する場合に、標的プロスタノイドの同定が達成されたと判定する。これら実験データは将来の廃用性筋萎縮やサルコペニア、広くはロコモーティブシンドロームの治療につながる分子標的として活用し、プロスタノイドの産生阻害剤のみならず、SiRNA 導入、受容体拮抗阻害薬、天然由来機能性因子を活用し、不動性筋萎縮の新規な治療薬や治療因子の開発につなげたい。本研究課題の目的は筋萎縮に関わるプロスタノイドの同定であるが、候補因子の絞り込みが難しい場合には動物試験と細胞試験を交互に組み合わせたサイクルの早いスクリーニング系に切り替え、相互の反復検証を重ねて標的プロスタノイドとその産生細胞の同定を確実に進める。
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Research Products
(35 results)
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[Journal Article] Beta-cryptoxanthin inhibits lipopolysaccharide-induced osteoclast differentiation and bone resorption via the suppression of inhibitor of NF-κB kinase activity.2019
Author(s)
Hirata N , Ichimaru R , Tominari T , Matsumoto C, Watanabe K ,Taniguchi K , Hirata M , Ma S, Suzuki K , Grundler FM , Miyaura C, Inada M
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Journal Title
Nutrients
Volume: 11
Pages: 368
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Structure-activity relationship of anthocyanidins as an inhibitory effect on osteoclast differentiation.2018
Author(s)
Hirata N, Tominari T, Ichimaru R, Taniguchi K, Matsumoto C, Watanabe K, Hirata M, Ma S, Suzuki K, Grundler FM, Miyaura C, Inada M
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Journal Title
BPB_Reports
Volume: 2
Pages: 1-6
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Raloxifene reduces the risk of local alveolar bone destruction in a mouse model of periodontitis combined with systemic postmenopausal osteoporosis.2018
Author(s)
Ichimaru R, Tominari T, Yoshinouchi S, Matsumoto C, Watanabe K, Hirata M, Numabe Y, Murphy G, Nagase H,Miyaura C, Inada M
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Journal Title
Arch. Oral Biol
Volume: 85
Pages: 98-103
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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