2018 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋細胞の張力測定系の構築と筋萎縮をもたらす分子機構の解明
Project/Area Number |
17H02159
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
眞鍋 康子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (60467412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出口 真次 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30379713)
古市 泰郎 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (40733035)
松井 翼 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (50638707)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、培養骨格筋細胞または単一筋線維をシリコン製の基板上で培養し、収縮させた際に基板表面に生じるシワの数や深さを定量することで、筋細胞の張力を測定する系を構築することを目的としている。昨年度までにシリコン製基板上で細胞を培養し収縮させるための基礎条件を設定した。2018年度は決定したシリコン基板をもちいて、骨格筋細胞を収縮させたときの映像を取得し、映像から収縮によって発生したシワのみを抽出し、シワの総延長を自動的に計測するアルゴリズムの開発を行った。アルゴリズムは画像処理ソフトウェアImageJ-Fijiを用いた。各映像をフレームに分割し、それぞれの画像から細胞以外の領域を除いた画像を取得した。取得した時系列画像から、収縮時のシワがある画像を弛緩時のシワがない画像で減算することによって、抽出された部分を収縮で生じたシワとして抽出した。抽出されたシワは、線形化処理することにより、長さをピクセル数で算出した。培養細胞の収縮力は時系列画像における3回分の収縮で生じたシワの総和算長(force index)として評価した。この方法により、0mAから50mAまで様々な強さの刺激を与え、シワの解析を行った。その結果、電気刺激の強さに応じてforce indexも増加したことから、本研究で使用したアルゴリズムにより算出された指標が細胞の収縮の力の指標になることが示された。さらに、筋萎縮モデル細胞を作成し、萎縮した細胞でforce indexの低下が観察され、本手法が筋細胞の収縮力を測定するのに有効な系であることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度は、H29年度までに立ち上げたシリコン製基板上に蒔いた細胞を分化させて電気刺激を与え画像を取得し、収縮によって生じたシワを解析するため、Image-J fijiを用いて解析アルゴリズムを作製した。まず収縮した映像を各コマにわけ、弛緩時の細胞と収縮時の画像から、シワの輝度変化(白黒)を利用して、シワのみを抽出した。抽出されたシワの画像上の長さを合算し総延長を計算し、これを収縮の力の指標であるforce indexとした。刺激時の電圧を弱いものから強いものに変化させるとforce indexもそれに伴い、大きくなったことから、この指標が細胞の張力の指標として使えるのではないかと考えられた。さらに、この系の妥当性を確かめるために、筋萎縮の細胞モデルを用いて検証した。作製した萎縮骨格筋の細胞モデルは、長期培養細胞モデル(最大15日まで)、ガンカヘキシアモデル(肺がん細胞の培養上清を骨格筋細胞に添加)、デキサメタゾン処理モデル(デキサメタゾン100uMを2日間添加)である。これらの萎縮モデル細胞で、一般に用いられる萎縮の指標である細胞径を測定したところ15~20%の径の減少が観察され、萎縮が起きていることが確認された。また、萎縮骨格筋細胞を基板上で生育させ、電気刺激を与え、収縮時のシワの画像を取得し、作製したアルゴリズムを用いてforce indexを算出したところ、萎縮させていないコントロールに比べて有意な force indexの減少が観察された。さらに、筋合成を促すIGF-1の投与により有意なforce indexの増加も観察された。Force indexと細胞径の結果を比較すると、force indexで評価する方が検出感度が高く、本研究で構築した系が細胞の張力の指標として有用であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度までに確立した系をさらに多検体で検証できる系に昇華させる。これまでシワを解析する系は2ウェルチャンバーを用いており、一度に2検体しか評価することができなかった。萎縮を予防する薬等を評価するためには多検体が評価できる系が必須となるため、ハイスループット化したシステムを作る。理想的には96ウェルプレートで実施できることが望ましいが、これまでの予備実験で96ウェルにシリコンを均一に接着させた基板を作製するのが技術的に難しいため、まずは24ウェルのプレートにシリコンを均一に接着させたプレートを作製し、このプレートを用いて、細胞の接着を確認する。円形プレートになると細胞が周囲に接着して中心部に接着できない可能性もあるため、細胞の数や培養の方法を検討する。さらに、24ウェルに培養した細胞を収縮させるための電気刺激装置を作製する。原型は内田電子株式会社がすでに作製済みであるが、顕微鏡上で長時間設置しての収縮・画像取得が必要となるため、ステージヒーター、電気刺激、画像取得を一体とした系を作製する必要がある。システムができたら、24ウェルプレート上に2018年度の使用した萎縮細胞と同様な細胞を作製し、収縮させ2ウェルチャンバーで得られた結果と同じ結果が得られることを確認する。 骨格筋細胞の張力測定系が構築できたら、収縮力に影響を与える分子メカニズムとして骨格筋における非筋ミオシンの役割について検証する。骨格筋にも、形態維持のために非筋ミオシンによる静止状態の張力があるはずであるが、これまで全く注目されていなかった。筋張力は収縮時に発揮されるものだけが研究対象であったが、静止時に非筋ミオシンにより発揮される張力も考慮する必要がある。静止時の非筋ミオシンによる張力が、筋萎縮や収縮時張力と連関している可能性もあるため、これについて検証する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] 新規遺伝子R3hdmlは筋衛星細胞の増殖能を制御し、骨格筋の分化再生を促進する2018
Author(s)
坂本 憲一, 竹本 稔, 古市 泰郎, 高橋 恵, 秋元 義弘, 山本 雅, 石川 崇広, 前澤 善朗, 清水 孝彦, 眞鍋 康子, 藤井 宣晴, 横手 幸太郎
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Journal Title
日本内分泌学会雑誌
Volume: 94
Pages: 292
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[Presentation] 新規筋衛星細胞発現遺伝子R3hdmlは筋衛星細胞の増殖能を制御し、骨格筋の分化再生を促進する2018
Author(s)
坂本憲一, 竹本稔, 古市泰郎, 高橋恵, 秋元義弘, 山本雅, 石川崇広, 前澤善朗, 清水孝彦, 眞鍋康子, 藤井宣晴, 横手幸太郎
Organizer
第61回日本糖尿病学会
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