2017 Fiscal Year Annual Research Report
運動時の汗に含まれる糖・乳酸・電解質の自己駆動リアルタイムモニタリングシステム
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17H02162
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
四反田 功 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 講師 (70434024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻村 清也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30362429)
柳田 信也 東京理科大学, 理工学部教養, 講師 (80461755)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオセンサ / バイオ燃料電池 / ウェアラブル / ヘルスケア / 無線伝送 / イオンセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
アスリートの国際競技力向上のために,これまでのスポーツ科学に先端的工学・情報科学をより積極的に連携させる取り組みが活発になっている.スポーツにおけるパフォーマンス評価をインターネット技術によりリアルタイムに測定することで,トレーニング効果のフィードバックや,オーバートレーニングの予防,効果的なリカバリー方法の提案が可能になると期待されている.このため,心拍や汗などのバイタルサインを非侵襲でモニタリングするためのウェアラブルセンサが求められている.アスリートの血中もしくは汗中の成分(乳酸値やグルコース値)はアスリートのコンディションの重要な指標となるため,試合期やトレーニング期におけるトレーニングと休息のバランスを決定し、適切なトレーニングプログラムの選定に役立つ非常に重要な要素である.一方で,従来の血液の採取による成分測定は負荷が大きく,また測定結果が出るまでに時間を要する.そこで本研究では,運動時の汗に含まれる成分で発電しながら,その成分濃度をリアルタイムにモニタリングし,無線伝送するためのバイオ燃料電池を搭載した非侵襲・自己駆動型センシングデバイスを開発する. 2017年度は,(1)多孔質炭素を用いたバイオ燃料電池用印刷型電極の設計と作製と,(2)ウェアラブルバイオ燃料電池のデザインと転写印刷による紙・布への電池形成技術の確立を目的として研究を行った.酵素に適した細孔サイズが制御された多孔性炭素に酵素(グルコース脱水素酵素や乳酸オキシダーゼなど)を固定した電極を開発し,酵素電極の耐久性をこれまでの検討結果の5倍以上に向上させることに成功した.また,イオンセンサおよびグルコースバイオセンサを転写印刷によって不織布上に形成する手法を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのバイオ燃料電池用電極の課題として,糖など燃料の遅い物質輸送がバイオ燃料電池の出力を制限していた.これに対して,物質輸送経路となる直径およそ100 nm~10 um程度の大きなマクロ孔を形成することで物質輸送が律速にならないようにすることが可能となると考えた.一方で,マクロ孔を有する多孔質炭素を用いた場合には,触媒となる酵素を安定に固定化可能な手法が必要となる.そこで,電子線照射によるMgO鋳型炭素(MgOC)表面へのラジカルの導入により,メディエータおよび酵素の修飾固定化方法について検討した.メタクリル酸グリシジン(GMA)を用いて,メディエータであるアズールAを修飾した電極において,グルコース脱水素酵素(GDH)とのメディエーションが観測されて目的通りの大きな触媒酸化電流を得ることができた.また,GDHを修飾固定化することで安定性も当初目的通りの5倍以上向上することに成功した. 転写印刷によるナトリウムイオン・アンモニウムイオンセンサの形成に成功し,模擬汗を用いたウェアラブルセンシングにも成功している.さらに,グルコースオキシダーゼの熱転写印刷によるグルコースバイオセンサの形成も可能となった.これらは当該年度の目的をすべて満たす結果となっており,研究の進捗に支障はない.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,ウェアラブルバイオ燃料電池の開発を継続すると共に以下の項目について研究を行う.また以下の項目についても検討する.キャパシタとバイオ燃料電池を組み合わせた糖および乳酸のセンシングシステム開発を行う.キャパシタおよび回路を作製し,前年度に開発したバイオ燃料電池と接合する.次に,バイオ燃料電池を一定電圧に保持したときに流れる電流が印刷によって形成したキャパシタにチャージしされる挙動を電気化学評価する.この場合,一定電気量がチャージされるまでの時間との相関が直線関係であれば,燃料濃度を評価できる.電気二重層キャパシタに蓄えられたエネルギーを用いて,出力情報を無線伝送する. 山形大学の時任教授,松井准教授と連携して,印刷型薄膜有機トランジスタもしくは印刷型制御回路を用いた乳酸および糖のセンシング方法について検証する.図6は有機トランジスタの断面図である.酵素電極反応などでゲート電圧が変化すると,ソース・ドレイン電極に大電流が増幅されて流れることで,運動初期の糖や乳酸濃度(低濃度)も測定可能になると期待される.薄膜有機トランジスタは現在電源をどのように供給するかが課題となっているが,本研究で開発するバイオ燃料電池を利用して,印刷型回路と組み合わせることで,フレキシブルかつウェアラブルなバイオセンシングシステムが確立できると期待される.本研究では,ゲート膜への酵素や分子認識膜の形成手法の確立を行い,乳酸や糖に対する濃度依存性,温度・pH依存性,妨害物質の影響の排除法の検討,保存安定性評価を行う.
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Research Products
(39 results)