2018 Fiscal Year Annual Research Report
EPHX2 phosphatase as a novel target of drug discovery: searches for a physiologically relevant substrate and a specific inhibitor
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17H02201
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
蓮見 惠司 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20208474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 絵里子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00468513)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Epoxide hydrolase / Inhibitor / Substrate / Lipid mediator |
Outline of Annual Research Achievements |
Ephx2によりコードされる二機能性酵素EPHX2(soluble epoxide hydrolase; sEH)は、N末端領域に脂質リン酸エステルホスファターゼ(Nterm-phos)、C末端領域に脂質エポキシドハイドロラーゼ(Cterm-EH)活性を有する。従来、sEHによる炎症制御はCterm-EHに依存すると考えられてきたが、最近我々はNterm-phosが血管内皮の炎症制御に決定的な役割を果たすことを明らかにした。一方、Nterm-phosの生理的基質や炎症制御の機序は不明である。本研究では、Nterm-phosの生理的基質および阻害剤の同定を通じて、Nterm-phosを介した炎症制御機序の解明と阻害剤の薬理作用の検証を目的として以下の研究を行った。 (1)Nterm-phosの生理的基質の探索:本課題で開発した、LC-MS/MSによるNterm-phosの基質候補分子の網羅的解析法を用いて、Nterm-phos阻害剤投与マウスの肝臓から精製した高極性脂質画分の解析を行い、基質候補分子(分子量421.3、反応生成物のダンシル誘導体 m/z (M + H)+ 575.4)を同定した。 (2)Nterm-phos選択的阻害剤の探索:これまでに得た各種N修飾アミノ酸の構造活性相関をベースとして、活性の強い阻害剤を同定し、その阻害様式の解析ならびにヒト微小血管内皮細胞の活性化(ICAM-1、VCAM-1、E-selectin発現)の阻害を確認し、Nterm-phosが血管炎症の制御に関与する証拠を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)sEH Nterm-phosの生理的基質の探索 1)Nterm-phosの基質候補分子、反応産物候補分子の解析対象として、Nterm-phos阻害剤投与(基質候補分子を蓄積させるため)マウスの肝臓(sEHを高発現する)から極性脂質画分、極性リン脂質画分を調製し、sEH(あるいは緩衝液)で処理した後にダンシル誘導体化した。2)LC-MSによる網羅的一斉解析で、sEH処理特異的に増加する化合物をスクリーニングした結果、m/z (M + H)+ 575.4の化合物(オリジナルの基質としての構造は、ダンシル基の代わりにリン酸エステルを有し、分子量421.3)が有望な基質候補分子として同定された。その他、m/z (M + H)+ 797.4および825.4も候補として同定されたが、これらのオリジナル構造は、既知の基質であるホスファチジン酸(16:0および18:0)と決定された。 (2)Nterm-phos選択的阻害剤の探索 1)探索の結果得られた候補化合物の生化学的解析を行い、多くのN修飾アミノ酸がヒトおよびマウスのNterm-phosを大きく異なる強さで阻害することを明らかにした。すなわち、Nterm-phosの活性中心の構造を構成するアミノ酸のいくつかは、ヒトとマウスで異なり、基質認識パターンが相違し、そのため、阻害剤感受性に大きな相違が生ずる。ヒト特異的阻害剤、マウス特異的阻害剤の全ては基質に対して拮抗的に作用した。 2)選抜した阻害剤は、ヒト血管内皮細胞の活性化(細胞接着因子発現)を有意に抑制し、マウス肝臓での急性期レスポンスタンパク質の発現を誘導したことから、Nterm-phosの炎症制御における役割を解析する有力な手段となることが示唆された。 3)項目1)の内容をまとめた論文が受理された(2019年5月12日)
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の検討を行う。 (1)sEH Nterm-phosの生理的基質の同定:1)基質候補分子のsEH消化、ダンシル誘導体化後に生ずるm/z (M + H)+ 575.4の化合物のスケールアップ精製、高分解能LC-MS/MSにより部分構造ならびに全体構造の推定を行う。2)基質候補分子の生物活性を、ヒト微小血管内皮細胞の活性化(ICAM-1、VCAM-1、E-selectin発現)の抑制を指標として評価する。また、基質候補分子のsEH処理によりその活性が消失することも確認する。 (2)Nterm-phos選択的阻害剤の薬効評価:ob/obマウスはレプチン遺伝子に変異をもち、過食のため肥満、インスリン抵抗性、高血糖、脂肪肝などを発症する。いわゆる肥満も血管炎症が関与する疾患であり、炎症の抑制により病態が改善する。Nterm-phos選択的阻害剤による病態改善を以下項目を指標として検討する。1)血漿グルコース、コレステロール、有利脂肪酸、TG、AST、ALTレベル、2)肝臓脂質、肝臓および脂肪組織の組織化学解析、3)Lcn2、Saa1など、sEH-KOで顕著に上昇する遺伝子の発現レベル。
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Research Products
(2 results)