2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development and application of novel in-vivo-RNA restoration method by using enzyme-RNA complexes.
Project/Area Number |
17H02204
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塚原 俊文 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60207339)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | RNA editing / 人工酵素複合体 / 遺伝コード修復 / APOBEC1 / 脱アミノ化 / Cas13a / 標的RNA分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遺伝子の点変異を原因とする疾患に対する治療法として、発現している変異したRNAの変異を人工酵素複合体の導入によって部位特異的に脱アミノ化/アミノ基付加を行うことで遺伝コードを修復し、疾患を治療する方法の確立を目的としている。これまでにRNA editingを触媒するADARファミリーのADAR1及びAPOBECファミリーのAPOBEC1の活性部位をMS2システムを介してguide RNAと結合させる事で任意の標的RNAのAまたはCを脱アミノ化し、A⇒I (G)あるいはC⇒Uの変換を触媒する人工の酵素-RNA複合体を創成した。さらに、guide RNAとゲノム編集に用いられるCRISPR-CasファミリーのCas13aを利用した標的遺伝子の分解にも成功した。 前年度に成功したADAR1を用いたのと同様の方法で、人工C⇒U変換酵素複合体を創成した。触媒部位にAPOBEC1の活性中心を用い、MS2システムを介して標的RNAに相補的なguide RNAと結合させるることでC⇒U変換誘導に成功した。GFP遺伝子のT⇒C変異がBFPとなることを利用して調製したBFPmRNAを標的として用いることで、C⇒U変換を簡便に観察することができた。 一方、癌やトリプレットリピート病など、有害な遺伝子を原因とする疾患への治療法としてRNA分解酵素を同様にguide RNAと結合させることで標的RNAを特異的に切断・分解することにも成功した。酵素としてはCRISPR-Casシステムの関連タンパク質であるCas13aを、標的にはLuciferase遺伝子を用いた。Cas13bとguide RNAの共発現によって化学発光は完全に消失し、Luciferase RNAがほぼ完全に分解されたことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADAR1およびAPOBEC1のdeaminase活性部位とguide RNAをMS2システムを介して結合させて人工酵素複合体を構成させることで、塩基配列特異的に細胞内RNAのA⇒I(G)およびC⇒U変換を誘導することに成功した。A⇒I変換ではEGFP遺伝子にナンセンス変異を導入したプラスミドを構築し、ターゲットとした。ADAR1-人工酵素複合体用プラスミドと共にHEK293細胞に導入したところEGFPの変異が細胞内で修復され、緑色蛍光を発する細胞が散見された。試料よりRNAを単離し、逆転写後にPCR-RFLP及びsequencingを実施してEGFP mRNAの変異がA⇒Gに修復されていることを確認した。さらにUGA終止コドンだけでなくUAA終止コドンを導入した変異EGFPをターゲットとした場合でもUGGに修復され、GFPタンパク質が発現することも確認した。一方、C⇒U変換の研究ターゲットにはGFPの199位のTがCに変異すると蛍光波長が変化し青色となることを利用して調製したBFP mRNAを用いた。同様にAPOBEC1-人工酵素複合体プラスミドの導入によってBFP蛍光が減弱し、緑色蛍光を発する様になることを確認すると共に、RT-PCR-RFLP及びSequencingによってC⇒U変換を確認した。現在までのところ、A⇒Iは10%程度の変換効率であるが、C⇒Uでは20%を超える変換が確認できた。現在、試料の全RNA sequencingによるオフターゲット効果についての検証を進めている。 アミノ基付加反応触媒活性の実現に向けてはシロイヌナズナ播種後12日の苗でU⇒C RNA editingが顕在化することから当該苗からのU⇒C変換酵素の同定を目指している。これまでにアミノ基付加反応のin vitroでの活性測定系を確立すると共に当該試料の全RNA解析を委託している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、生体内のRNA editing機構を利用して細胞内での変異RNAの人為的かつ部位特異的な修復の実現を目指している。本目的を遂行するため、今年度は以下の小テーマを重点的に実施する。 「C⇒U変換の高効率化」これまでに開発したAPOBEC1-MS2の人工酵素-RNA複合体を改良して遺伝コード修復の高効率化する。MS2-loop RNAの数やlinker配列の最適化、さらにはMS2に代えてCas13bを利用する等の改良により変換効率の高い人工酵素複合体システムを創成する。さらに動物実験を目的として、Lentiウイルスベクターを利用した人工酵素複合体システムの調製も行う。 「Macularマウスを対象とした遺伝コード修復」MaculaマウスはP-type ATPase遺伝子にT⇒C変異を有する疾患モデル動物である。当該マウスを対象に動物個体を用いた遺伝コード修復の検証を試みる。まず当該マウス由来細胞の初代培養系を用いた遺伝コード修復の検証を行い、次に動物個体を対象とした研究を行う。遺伝コード修復の可否については、RT-PCR-RFLPさらにはsequencingで検証する。動物個体を対象とした研究では、疾患症状についても観察する。Macularマウスは強いけいれん症状を呈することが知られており、観察によって病状の改善の有無が判断できると考えている。 「アミノ基付加酵素を用いた人工酵素複合体の創成」これまでの研究を進展させ、シロイヌナズナのU⇒C変換酵素遺伝子を同定する。一方、APOBEC/AIDの活性中心の配列を元に、アミノ基を余分に有するアミノ酸であるAsn、Gln、Lys或いはArgの導入によるアミノ基付加酵素の創成にも挑戦する。U⇒C触媒酵素遺伝子が単離できたら先の研究と同様に人工酵素複合体システムを構築して人為的な塩基配列特異的U⇒C変換を実現する。
|
Research Products
(9 results)